非日常は人を少しだけ変える


「なあ、サクラちゃんこのあと暇~?」

「えっ、このあとは……ごめん。いのとお祭り行く約束したの。何か用事?」

「あっ、いや大した用じゃないからいいってばよ! じゃあなー」

「あっ、そう。うん、またねナルト!」


木ノ葉の里では今年の夏最後の祭りが今夜、開催される。

ナルトは班員のサクラを誘ったが、生憎親友のいのと行くことが決まっておりナルトは一人、町をトボトボと歩いていた。

夕方の活気付く木ノ葉の里。
行き交う人の中には浴衣姿の人もおり皆今年最後の祭りに行くのだろう。
そこに前方に目立つオカッパゲジマユ、長髪の男と、お団子頭が見えた。

ガイ班の面々だ。

ところどころ服や体に汚れがあるのをみると任務帰りだろう。
仲良さ気な声が近づいて聞こえてきた。



「あっ、ナルトくん!」

「えっ、ああナルトじゃない。一人なの?」

リーがナルトに気づくとすぐさま名前を呼んで、それにテンテンも気づいた。
ネジはナルトの姿を確認すると無言でこっちをちらりと見たあと、特に言葉を発するわけでもなく。

「うん、サクラちゃんとさっきまで一緒で、祭りに誘ったんだけどいのと行くらしくて断られちまった……ははっ」

ナルトは腕を頭の後ろで組みながらから笑いを浮かべた。

「あら、そうだったの。残念だったのね~。よかったら私たちと行かない? ねっ、いいでしょリー、ネジ!」

「もちろんです! ナルトくん、サクラさんに振られたショックで辛いと思いますがボクたちが慰めてあげますよ!!」

「……いや、別に振られてはねえってばよ……」

「ネジもいいよねっ!」

「……オレは別に構わないが」

「よし、決まり! じゃ、早くお祭り会場へ急そごう!」


四人は人混みをかき分けお祭り会場へと向かった。
しばらく歩いていると、屋台の独特の匂いが漂ってきた。
綿菓子の甘い匂いや、かき氷のシロップの匂い、たこ焼きや、焼きそばのソースの匂いとそれを焼く煙の匂い。

お祭りにやってきたという実感が湧き上がりナルトは心が弾んできた。
それはガイ班の皆も同じだったようで普段、感情を顔にあまり出さないようなネジも心なしかワクワクしてるように見えた。


「オレってば!! たこ焼き食べたい!」

「ボクは、焼きそばを買ってきます!」

「私はかき氷と、りんご飴買ってくるわ!」

「では、オレはフランクフルトでも買おうか」

「……みんなバラバラね。別行動する~?」

「せっかく皆で来ておいて別行動は寂しいじゃありませんか!」

「でもこんなに人並んでるのに皆で並んでたら買いたい物買えないわよ」

「……そうだな。待ち合わせ場所でも決めておいて一旦バラバラになって後から集合すればいいだろう」

「んじゃ、それでいいってばよ。ゲジマユもそれでいいか?」

「皆がそう言うのならボクはいいですよ」

「じゃ、集合場所はあそこの大きな木のすぐ側のベンチね! 解散っ!」

「了解だってばよ!」
「ラジャーです!」
「……ああ」

四人は其々の買い物を済ませるため別々の方向へ足を進めた。



◇◇◇


「案外早く買えたってばよ! 食べながら皆を待っとくか」

ナルトは早々と買い終え、買ったばかりの熱々のたこ焼きを口に放り込んだ。

「ナルト、早かったんだな」

さほど時間もたたない頃ネジも来た。

「ん、ああ! たこ焼き焼いてるおっちゃんが凄ェ手捌きでしゅばばばっって早くてよォ! 早く買えたってばよ!」

「ふふっ、そうか。隣座ってもいいか」

「いいってばよ。今、物どけるってばよ」

ナルトは急いでベンチに置いていた物を自分の方へ寄せ、スペースを作った。

「悪いな」

「いいってばよ。なあ、ガイ班は今日どんな任務してきたんだ?」

「……どんなと言われてもなあ、普通のDランクの雑用みたいな物だな」

「ふーん……。やっぱりガイ班みたいに強くてもそんな任務ばっかなんだなあ。あー! 綱手のばあちゃんのケチ!」

「……下忍なんだから当たり前だろう。でも今は人手も足りないみたいだからやはりBランク任務に駆り出されることもあるにはあるな。もちろんガイ先生も付いてだが」

「そっかー。オレってばもっとスッゲー任務やりたいってのに!」

「……だったら早く中忍になってからだな。オレも人のことは言えんが」

「シカマルが中忍っての最初は凄ェ意外すぎてちょっと納得行かなかった事もあったけどよォ、やっぱあん時のシカマルは隊長って感じしたよなァ……」

「ああ、シカマルが隊長だったからオレたちは生きて戻れたのかもしれないな」

「なあ、ネジちょっと他ンとこ、ブラブラしようぜ」

「……いや、だがリーとテンテンがまだ来てないだろう」

「あいつらも同じように行きたいところブラブラするってばよ」

「……はぁ、全く。まあ少しならいいぞ」

「よっしゃ!」

ナルトとネジはベンチに置いていたゴミを持ち、近場にあったゴミ箱にそれを入れ、その場を後にした。



────


「なあ、お前ってさ、いつから丸くなったんだ?」

「……何故それを聞く?」

「いや、なんか初めてお前と会った頃よりあまりにも態度が違うから、気になって」

「……お前には言ったことなかったかな。木ノ葉崩しの最中、少し色々あってな。ヒナタ様が雲忍に攫われたんだ」

「……っえ!?」

ナルトは目を見開いて驚きの声をあげたが、ネジは構わず淡々と話を続けた。

「ヒナタ様を救出する任務にオレとテンテンとキバが任命されて……そのあたりかな。試験後ヒナタ様と面と向かって話せたのもその時だったな」

「オレってば、知らなかった……」

「大問題にはならなかったから大丈夫だ」

「……そっか」

「……ナルトには本当に、感謝している。こうやって二人で話す機会もそうそうないだろう。この際だからちゃんと礼を言いたい」

「いや、そんなんいいってばよ!」

ナルトはなんか普段より言葉数が多く素直なネジに自分のペースを乱された。
ネジは、真っ直ぐとこちらを見て静かに口を開いた。

「……言わせてくれ。 ナルト、本当にありがとう。お前のお陰で今のオレがある」

────少しの間、その場を静寂が支配した。



「……へへっ……そっか。 なんか照れるってば……」

ネジがあまりにも真っ直ぐとこちらの目を見て、微笑みながら告げられた言葉に返す言葉が思いつかず、ナルトはただ照れるしかなかった。



to be continued…


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