恋と自覚したらどうなる


いつも気がつくとナルトを目で追っていたことに気がついた。

ナルトの髪の色は凄く目立つからそれで目に付くんだ、と最初は自分の中で何に対しての言い訳か分からないが繰り返しそう唱えてきた。
だが目立つ髪色だけなら他にもいるだろう。
色だけならいのだってナルトそっくりだ。
第一、頭の色が目立つぐらいでそうそう目で追う物か。

好きなんだよ、ナルトが。


こんな感情今迄知らなかったし、何よりこんな感情持っていること自体が何故だか、いけない気がした。故にオレは最初からこの思いをナルトに告げる気などさらさらなかった。
でもどこかで吐き出さないと、胸は苦しくなるばかりなのだ。
恋愛感情を告げるのが良くなくても、好意を告げることは悪いことではないだろう。
自分の中でそう答えが出た。

それからは、少しだけスッと胸のつかえが取れた。
素直にナルトを真っ直ぐ見ることも許され、ナルトを思ったまま褒めることも許された気がした。
実際は己が自分に枷をつけてたに過ぎなかっただけなのに。

オレの中で、ナルトの存在がどれだけ大きいかを実感したのが、あの蜘蛛の男との戦闘て窮地に陥った際、ナルトならどうするかって考えに至ったとき。

自分で決めるべき決断なのに、ナルトならこう考えるであろう、こうするであろうという思考を推測していたんだ。

ナルトがそうするであろうと推測した決断は、イコール自分の決断となった。

あのときは必死でそんなこと思っていなかったが、あとから思い返してナルトに己の決断や意思までも染められていたんだと気付いたら、ナルトに近づけたような気がして嬉しくなった。

ナルトがしばらくの間、修行に出るといって木ノ葉の里を離れていた時期、自分の中で、ナルトが頑張っているから負けられないという闘争心の片隅で、ナルトを見かけられなくなった日常に寂しさを感じて仕方なかった。

自分の中のナルトが薄まっていくどころか、それは前にも増してきらきらしていた。

ナルトを見かけない数年の間に
オレの中のナルトは仲間や里抜けしたサスケに向ける顔じゃなくオレに向けられる顔に変わった。
笑顔だったり、時には……
欲情して余裕のないような顔を見たこともあった。


恋に恋をしているのかと疑った。
なぜなら、あまりにもオレの中のナルトが本当のナルトからかけ離れていって不安になったからだ。


二年半してナルトが帰ってきた。

再会は風影奪還任務だったな。

背が伸びて、少し凛々しくなった顔に目が釘付けにされた。


オレはある時期から、オレの未来と日向の未来とヒナタ様の未来と、そしてナルトの未来について考えていた。
オレを取り囲む全てのものに、
良い方向に向かってもらうには、今がその時、これしかないと。
もちろんそれはオレにとっても良いことだ。

ナルトの命の一部になれる。
今まで仲間の一人だったであろうオレの立ち位置がナルトの中でどれだけ変わるのだろうか。それを考えたら、心が高揚した。


大事な二人が結ばれて、日向の未来が変わって、
ナルトの中のオレの存在が永遠のものになって……。

まだ見ぬ未来のことなのにそれを想像すると何故だか満たされた気になって、そしてオレは眼を閉じた。
今までオレを苦しめてきた額の呪印が消えていくのが分かった。
色素を持たない眼が無意味なものに変わって行く感覚。


眼が見えづらい。

ナルトの肩の温かさだけが今、辛うじて生きている実感だ。


────全ては、あの言葉からだったな。


「お前が無理だっつーんならもう何もしなくていい!オレが火影になってから日向を、変えてやるよォ!!」

「お前はオレと違って落ちこぼれなんかじゃねえんだから」

「お前に天才だと言われたからだ」


脳が完全に思考回路を絶つ前に、かつてナルトに言われた言葉が鮮明に駆け巡った。



NEJI SIDE THE END


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