恋と自覚したらどうなる


こんなに運命運命ってウジウジしていてそれなのに強えーし偉そうな奴は初めてみた。
サスケと同じタイプかと思ったけどやっぱちょっと違う。

オレはネジから中忍試験で辛い過去を聞く前は只々ヒナタとオレを馬鹿にするいけすかねえヤローにしか思えなかった。

それが、過去を聞いたらなんだか……
あんなに強いはずのネジが小さく弱く見えて虚勢を張っていたんだと気付いた。


意地張んなよ。



『かっこつけんなってばよ……。お前だって、運命に逆らおうと必死だったんだろ……』

『お前はオレと違って落ちこぼれなんかじゃねえんだから』

オレは弱々しく見えるそんなネジを、何となく認めたくなくて、お前は落ちこぼれなんかじゃないと言った。
あいつなら、自分で運命ってやつを変えられるんじゃないかって何となくそう思った。

その後しばらくして、ネジのオレに対する態度が変わった気がした。
そんなに頻繁に会うわけじゃないから確証はないけど、態度は丸くなったし。

それに、自意識過剰ってのかもしれねえけど……、ネジのオレを見る眼が何となく、サクラちゃんがサスケを見る眼と似ている気がして、仕方なかった。
オレってばこれでも人一倍、人の感情に敏感だからすぐ分かっちまった。


でも、オレはネジのそんな感情に応える気は無く相変わらずサクラちゃんが好きだった。
サスケが里を抜けちまってシカマルたちと任務したとき、ネジの言葉に励まされた。


あんなに強えー白眼よりも良いオレの眼って……?

ネジの言いたいことはよく分かんなかったけど、オレはあの言葉を信じてみた。
きっとこんなオレでもサスケを救い出せるんだと信じた。



オレの中でネジが特別になったのは、ネジがオレの腕の中で逝っちまいやがった時だ。

なんでオレなんか庇ってるのか分かんなかった。
だけど、あのときやっと、初めてオレに対するネジの感情の大きさに気づいてしまった。

ネジの体が冷たくなってきたのが怖かった。
なぁあのときお前はもしかして笑っていたのか?


里が平和になって、オレが夢だった火影になっていて、妻も子供もいて、サスケもいて、サクラちゃんも幸せそうで、そんな日常を手に入れてもふと思い出すのは若くして命を絶ったあいつ。

たった……十八歳だったんだよな。

今思えば。

ずっと歳上で、十八歳って大人な感じがしていた。
まだ、あいつだって子供だったのに……

そして、お前はこんなにもオレのこと思っていたなんてせめて生きているときに気付いて、思いに応えてやれば……と後悔ばかりが溢れる。

オレが言った言葉が、お前をそうさせたのかと知ってこんなことになるなら……と何度も思った。
人は死ぬときこんなにもアッサリと死ぬんだなって思った。
オレだって三代目のじいちゃんやエロ仙人が死んじまったりして死については色々考えてきた。
オレの中でネジはずっと強くて天才で頼りになる仲間だった。

だけどよ、死なれてやっとあいつの弱さや大き過ぎた思いに気付くなんて……。


これから、オレが年老いて死ぬまでネジのことを忘れる日なんて一度もないだろう。

しばらくして向こうにオレが行くことになったら……、あいつと、いっぱい語りたいなあ。

あいつが望むこと全てやってやりたいし、お前が守ってくれたオレたちの未来楽しかったんだ、だからありがとうって言いたい。

ネジは、なんかなあ……。
綺麗でなんとなく儚い雰囲気のやつだったなあ……。


死んじまった奴に、恋焦がれるなんてな。



NARUTO SIDE THE END


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