なぜ?


ネジはずっと、死に方を模索していた。
籠の中の鳥のままで死ぬのだけは嫌だと思っていた。

中忍試験の試合でナルトにより、自身の手本となる生き方を示してもらった気がしていたネジだが、それでも尚、彼は死に方についてはずっと模索しつづけていた。



◇◇◇


『いつ帰ってくるの?』

『なぜ、置いていったの……?』

小さな子供は泣いていた。


『ネジ、お前は生きろ』

幼い時に父のヒザシがネジに言った言葉は、成長するにつれ次第に彼を生き地獄とも言える心境へと突き落とした。

自分を置いていって早々に殺された父は、こんな憎しみしかない世界に独り、取り残された子供に、そこで生きろと言いつけたのだ。


己もいつか、父のように同じ死を辿るのだろうか。

なぜ、どうして。
考えても考えても、行き着く答えは理不尽。
“運命” なのだと決めつけることで、避けようがない死だったのだとネジは無理矢理その答えを呑み込んだ。


行き場の無い感情から、抗えば頭を痛めつけられるであろう。

誰もネジの気持ちに近くで本当の意味で寄り添うことはなかった。

晴れて下忍になり先生とチームメイトができても、それは同じだった。
班員はネジの心の内の核心に触れることなく当たり障りなく、接するのみ。
ネジもネジで、それでいいとも思っていた。
思っていた、が、本当にそうだったのか?


悪いのは一体、誰だったのだろうか。



◇◇◇


────オレは、惨めな存在ではないのか?
可哀想な存在ではないか?
父を殺された上に、自らの命をも握られているオレは、どうして周りの連中から批難される?
どうして、世の中こう理不尽なんだ……?
オレは何か間違ったことを言っているか?
もういい……。
どうせ、誰も……解りなどしないのだから。



◇◇◇

ネジの冷酷な言動の内側、悲痛なまでの心の叫び、嘆き諦め、それでも救いを求めていた声に気づいていた者はいても、手を差し伸べる人はいなかった。

しかし、ナルトだけは違った。
ナルトは、暗闇で独り泣くネジを見つけ出して手を伸ばすと底から引きずり出した。

本当の意味で、初めて彼に正面からぶつかってきてくれた人がナルトだった。

ナルトは決して見て見ぬふりなどしなかった。
ナルトも本当の孤独を知っていたからなのか。
──化け狐としてしか見られず、本当のナルトを見てくれる人がいなかった過去があったからなのか。


ナルトはネジに手を差し伸べて闇から救い出し、さらには彼に明るい将来みらいを約束してくれたのだ。

ネジは生きる目的が決まったのと同時に、理想の死に方も、未だぼんやりとではあるが浮かんだ気がしたのだった。




────なぜ、ネジが死ななければならなかったか?

他の誰より、己の命よりも、ナルトが大切になってしまったからなのかもしれない。
ネジの死はナルトへの恩返しであり、ナルトの危機に体が咄嗟に動いてしまったのは、彼の理屈抜きの愛情表現だったのかもしれない。




THE END





やさぐれ期のネジ視点で話が進むから、父上とか宗家とかガイ班がちょっと悪く書かれがちにも思えるかもですが理由があって……。

ヒザシ、ヒアシ様、ヒナタ、ガイ班を少し批判的に書いてるので、一個人の考え方として割り切れる方のみ下記のリンク先をお読みください。

▷▶︎▷あとがき






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