足取り軽く夜の街を散歩する。
昼間はずっと店番で暇な私の退屈しのぎだ。もちろん御国さんから許可は貰っている。
御国さんが用意してくれているアベルとお揃いの少々幼女趣味なワンピースで出掛けるのも、最初は抵抗があったが今では気にならなくなった。

『御国さん、このワンピースは……』
『うん、アベルとお揃いだよ。似合ってる似合ってる。』
『でもなんて言うか……』
『え？なんか不満だった？アベルとお揃いで嫌なはず無いよね？』
『え？』
『無いよね？((殺気』
『もちろんです！』


あの時の御国さんは、凄かった。この人形偏執狂め！
でもそれよりもハッキリ記憶に残るのはその後のこと。

『………』
『ジェジェさん？どうかしましたか？』
『……服』
『あ、これですか？私の着てた服は事故でだいぶ汚れちゃってたんで御国さんが用意してくださったんです。』
『…………ている』
『え？すみません、よく聞こえなくて』
『似合って、いる……』

地の底から響くようなその予想外の言葉に惚けていると、ジェジェさんは慌てた様子でどこかへ行ってしまった。
思い返せば、このワンピースを着ないなんて選択肢は、その時点で無くなっていたのだろう。

「あれは驚いたけど、嬉しかった、かも。」

考え事をしながら目的もなく歩き回るとどうなるか、答えは簡単。

「迷った......」

気づけば人通りの少ない見慣れない道を歩いていたのだ。(と言ってもそもそもお店の周りの道自体あまり詳しくないのだが)

とりあえずせめて人通りの多い道に出られないものかと歩き出すがそこである事に気づく。

足音が、ついてきている。

気のせいかと私が足を止めると、足音も止まる。振り返っても人は見当たらない。きっと物陰に隠れているのだろうが、それを確認するような勇気もない。私は深呼吸した後、心の中で３つ数えて一気に走り出した。