SSS

お弁当 1

2023/05/24 20:51
2人旅
ヨミエルの綺麗な指が、半球状のプラスチック容器からフィルムを剥がしていく。ペリペリと音を立てて破れないように最後まで取りきると、中から現れたのはシセルの好物であるマグロとカツオをすり潰したウェットフードだった。平然としているように見えて、耳を動かしどことなくソワソワしているシセルに「もう少し待っていてくれよ」とマジメに伝え、ヨミエルは弁当と一緒に渡されていた小さな紙皿にプラスチック容器の中身を押し出し盛り付ける。それをそっと両足を揃えて座っているシセルの前に差し出すと、シセルはスンとニオイを嗅ぎ、ヨミエルのカオを見上げた。
「どうした?食べないのか?」
「ヨミエルの分の準備がまだだろう?こういうモノは一緒に食べるのが美味しいのではないだろうか」
そう言われるとヨミエルは、なるほどと笑みを浮かべた。
「たしかに。せっかくのイイ景色だし、久しぶりのキミとの食事だったな」
目の前にそびえ立つのは、白亜の建物…博物館だ。その中に展示されているモノを予感させる豪華な造りとなっている。手前に広がるよく手入れされた芝生には、それぞれ思い思いのくつろぎ方をする人々が集まっていた。木陰に設置されたベンチに座っていたヨミエルは、邪魔にならないよう折りたたむことが出来る弁当箱を取り出すと、シセルに注目されながらフタを開いた。

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