SSS

もふもふ

2023/04/03 21:21
通路にもふもふした物体が落ちている。モップのようだが、明らかにシセルだ。
「…………」
パソコン作業をして、ノドが乾いたなと席を立ち、そういえばひとり遊びしていた音が聞こえなくなったなと思っていたのだが。
暖かい陽射しを黒い毛皮に浴びてお腹を見せ、幸せそうな寝顔をしている相棒を眺めていると、コチラまで幸せになってくる。オレは思わず頬を緩ませ、持っていたコーヒーカップを近くのテーブルに置いた。相変わらず無防備なシセルの側にしゃがみ込むと、ふさふさな毛の中へそっと手を埋める。
「………あったかいな」
適度に暖まった黒い毛は、アシタールが埋め込まれて冷たいカラダになったオレに、温度を伝えてくれる。優しくなでてふさふさ具合を堪能してると、パチリと目を覚ましたシセルがノドを鳴らし始めた。一定のリズムを奏でる振動が、手に伝わってくる。
「そうか。オマエは生きているんだな、シセル」
手を腹の中心部分に移動させて、更になでる。すると、しっかりとオレの手をつかんだシセルがお返しとばかりに舐めてきた。

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