SSS
名前を呼ぶ時
2024/04/24 20:44「“シセル”って名前ってフィアンセさんと同じなんですよね。混乱しないんですか?」
「コイツと出会った当初は呼ぶのに少しばかり抵抗があったな。なんせ大切な名前だ。カノジョを想って呼んだら返事をされて困ったコトがよくあった」
「拾われる前ノラネコだった私には“名前”というのがよくわからなかったのだ。とにかく、ヨミエルが必要としている。それだけで側に寄った覚えがあるな」
「へえ。最初から通じ合ってたワケじゃないんですね」
「そうだ。だが、側に寄られたら構わずにはいられないだろう?そんな調子で過ごしていくうちに少しずつコイツを呼ぶのに慣れていったんだ」
「『シセル』と呼ばれてカオをあげるとヨミエルと目が合う。それがとても幸せに感じていたのだ。今は、フィアンセ氏にその役目は譲っているのだがな」
「え。じゃあフィアンセさんの前では『シセル』って呼んでないんですか?」
「いや。ちゃんと呼んでるぜ。カノジョもそれをわかっている。もちろんコイツもな」
「わずかな差だが、わかるのだ。コエの調子や視線。長い間暮らしてきたからこそ、感じられるようになったのだろう。今のところ、ハズしたことはない」
「さすが10年の重みはちがうわね…。あたしもそういうビシッと合う相手を見つけたいな」
「コイツと出会った当初は呼ぶのに少しばかり抵抗があったな。なんせ大切な名前だ。カノジョを想って呼んだら返事をされて困ったコトがよくあった」
「拾われる前ノラネコだった私には“名前”というのがよくわからなかったのだ。とにかく、ヨミエルが必要としている。それだけで側に寄った覚えがあるな」
「へえ。最初から通じ合ってたワケじゃないんですね」
「そうだ。だが、側に寄られたら構わずにはいられないだろう?そんな調子で過ごしていくうちに少しずつコイツを呼ぶのに慣れていったんだ」
「『シセル』と呼ばれてカオをあげるとヨミエルと目が合う。それがとても幸せに感じていたのだ。今は、フィアンセ氏にその役目は譲っているのだがな」
「え。じゃあフィアンセさんの前では『シセル』って呼んでないんですか?」
「いや。ちゃんと呼んでるぜ。カノジョもそれをわかっている。もちろんコイツもな」
「わずかな差だが、わかるのだ。コエの調子や視線。長い間暮らしてきたからこそ、感じられるようになったのだろう。今のところ、ハズしたことはない」
「さすが10年の重みはちがうわね…。あたしもそういうビシッと合う相手を見つけたいな」