必然性仮定形

 そっと伸ばされたその手は、躊躇いがちに互いに触れ合う。
 相手の体温を確認するかのように、指先同士を滑らせ、それからようやく絡ませ合った。

 相手が存在していることは姿形を見て、目の前で喋っていて、分かっているのに。
 それでも何故か不安で、こうして回りくどく確かめてしまう。

 2人の少女はお互いが同じ気持ちであることに気付き、見つめ合って笑った。
 夢ではないことを、ようやく信用出来た。

 控え目に繋いでいた2人の手は、やがてしっかりと、固く握り合われる。
 そして相手の頬に触れる。
 微笑み合って、吐息を感じた。

 少女たちは、幸福に包み込まれていた。
 そんなくすぐったい温もりの中、思う。

 私は、私で良かった。
(私……――)
 わたし、は、



「――み、浅海」

 意識が揺さぶられる感覚に、次第に光が差し込んで来た。
 聞き慣れた声だ。
 浅海は朦朧とした空間の中、その声の主を思い出す。

 気持ちが悪い、のは、アルコールの所為か。
 ゆっくりと瞳を開くと、自分の顔を心配そうに覗き込む恋人の姿が確認出来た。

「……ん~」

 眩しい、と掌で両目を覆う。
 そんな浅海の頬に、ひんやりとした刺激が不意に訪れた。

「冷たっ!」

 びくっと肩を震わせ、そう小さく叫ぶ浅海。
 気付くと、当たっていたのは裕の掌である。

「いつまで寝ぼけてんだ」

 裕の手が、そのまま浅海の頬を軽く摘み、むにむにと数回押す。
 えー、と唸りながら、浅海は記憶を辿った。

「……此処、家?」
「そうだよ」

 昨晩、の、記憶が曖昧であった。
 浅海は静かに上体を起こし、辺りを見回す。
 見慣れたインテリア、裕と暮らしている部屋の寝室だ。

 しかしどうやってベッドまで来たのか、浅海には全く思い出せない。
 そもそも自分はどうやって自宅まで帰って来たのだろう。
 うーん、と両手で顔を覆いながら俯いて考えるが、さっぱりだった。

「お前昨日、帰宅したまでは良かったんだけど、玄関でそのまま寝ちゃったんだよ」

 浅海が寝ていたベッドに腰掛けて、裕がそう切り出す。
 予想外の出来事に浅海は、わぁ、と真顔で驚いてしまった。
 何してんの俺、と心の中で自分にツッコミ。

「取り敢えず起こしてみたんだけど、何かもう全く正気じゃなさそうで。むにゃむにゃ愚痴零してたけど自分で歩く気はなさそうだったから、適当に運んでベッドにぶん投げといた」

 ふう、と頬杖を付き、裕が事の顛末を教えてくれた。
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