暴露


「最初の被害は1週間前。公園で大量の鳩の死骸が見付かった事件」

 スクリーンに映した画像の説明をする菱人の声は、落ち着きは見えたものの、何処か苛立っているように感じられた。
 しかしその事を指摘出来る者は、今室内にはいない。
 否、発言が認められるような空気ではなかった。

「同日、10kmほど離れた養豚場で、飼育されている豚の半数が死骸で発見された」

 ピ、と手元のコントローラーで画像を変更させ、菱人は続ける。
 同様の被害が、ここ10日間で多発していることが判明したのだ。

 被害を受けているのは、野生・家畜問わず動物だ。
 養鶏場、養豚場のみならず、野良犬やイノシシ、サルなどの被害も報告されている。

 その死骸は「何かに噛み付かれた」、もしくは「食い千切られた」痕跡が確認されている。

「家畜小屋に至っては、自動車で突っ込んだような壊され方をしている」

 そう言いながら菱人が映した写真には、華倉と魅耶がニュースで見た、あの鶏舎があった。
 外から力任せに、壁を突き破って侵入した。
 そうして中にいた鶏や豚の生肉を、手当たり次第食らう。

 スクリーンの明かりを落とすと同時に、部屋の電気が点けられた。
 菱人がコントローラーをテーブルに置く。
 その表情は勿論浮かないものだ。

「……真鬼。これらの被害に、見覚えは?」

 真鬼の方を向くことなく、菱人が訊ねる。
 それは質問というよりは、確認、のような聞き方だった。

 真鬼も本当なら答えたくなかった。
 見覚えがあるだなんて、易しい話ではなかったのだから。

「……鬼の、暴れ方そのものだ」

 しかも、一番厄介な相手――最鬼の。

 そこまで真鬼が発すると共に、華倉が小さな声で「やっぱり」と呟く。
 まるでその呟きに反応するかのように、菱人がテーブルを叩いた。

 初めて見る兄の粗暴に、華倉は驚きのあまり思わず声が漏れた。

「どういうことだ真鬼!!」

 テーブルを叩いたその手で、菱人は強く握り拳を作った。

 菱人にそう問われ、真鬼は一瞬視線を上げる。
 菱人はまだこちらを見ていなかった。
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