平和な日常~春~

「来てくれるだけでいいのです」

「しかし危ないって話じゃなかったか? 自慢じゃないが荒事は苦手だぞ」

「大丈夫です。 私が全部責任持ちますから!」

渋る横島に夕映は熱い視線で説得を続け、横島が頷くまで話を止めなかった

結局夕映の粘り勝ちで、横島は図書館探検部に参加する事を頷くしかなかったのである


(うむ……からかったのが裏目に出たな)

実は横島は始めから夕映がデートの誘いで来てない事を理解して、ちょっとからかっていただけなのだ

おかげで夕映は当初あった遠慮が全く無くなり、熱心に横島に図書館探検の楽しさを語り横島は嫌だと言えなかったのである


(まあ、着いていくだけなら問題ないか)

少し考え込む横島だったが、余計な事をしなければ問題にならないだろうと考えるしかなかった

何十年も図書館探検をしているサークルだし、魔法協会も対応は十分に出来てるだろうと考えている

と言うか本心は断って、熱心な夕映を悲しませる事が出来なかっただけなのだが……



そして土曜日の夜になり、横島は久しぶりにジーンズを着てバンダナを巻いていた

特に用意は要らないと夕映に言われた為に横島は普通に待っていたのだが、到着した彼女達の姿には本当に驚いてしまう

全員学校のジャージを上下に着込んでおり、大きめのリュックを背負っているのだから


(本当に探検なんだな…… 樹海にでも行けそうな雰囲気だわ)

夕映とのどかの普段は大人しい二人も、この日ばかりはやる気に満ちた表情をしている

ハルナと木乃香は普段とあまり変わらないが、楽しそうなのは同じであった


「ごめんな~、無理に頼んで。 でもウチらだけだと発表出来んのよ」

あまり変わらない表情だが瞳を輝かせる夕映と違い、木乃香は僅かに申し訳なさそうに謝ってくる

横島が居ないと困るのは変わらないが、悪いと思っているようだ


「いいよ。 しかし凄い荷物だな。 重いやつは俺が持つから少し整理してくれ」

流石に木乃香達だけに荷物を持たせる気はないようで、横島は慌てて二階に行きかつて除霊に使っていた小さめのリュックを異空間アジトから取り寄せる

そのまま横島はリュックに重い荷物を中心に移すのだが、流石に夕映も申し訳なさそうにしてしまう


「本当に大丈夫ですか? 地下に行けば結構体力が必要ですよ。 私達は自分で荷物を持てますし……」

「体力だけはあるんだわ。 一緒に行く以上俺だけ手ぶらって訳にもいかんしな」

来てくれるだけでいいと頼んだだけに、夕映は荷物を持たなくていいと言うのだが横島はそこは譲れなかった


「頼んじゃえばいいじゃん。 ダメなら後でまた荷物整理すればいいだけだしさ」

心配そうな夕映・木乃香・のどかと対照的に、ハルナは割と軽く考えてるようで横島に次々と重い荷物を渡していく

結局横島は四人が持っていた重い荷物を背負い出発するのだが、木乃香達三人は若干不安そうであった

何はともあれ横島の図書館探検部の初めての活動が始まる事になる



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