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平和な日常~春~

「横島さんは始めてなので基本的な説明から始めますね。 図書館島は地下深くなればなるほど迷路のように複雑さが増して行きますし、危険な罠も多くなります。 貴重な本や珍しい本を見つけてもすぐに近付かないで下さいね」

図書館島の裏手にある探検部が使っている秘密の入口から地下に入る一同だったが、暗い図書館はどこか不気味である

それでも至る所に明かりがあるために本当に真っ暗ではないのだが、図書館独特の雰囲気は不気味としか言いようがない


「なんか昔やったゲームを思い出すな」

「流石にモンスターとかは出ないので大丈夫です」

薄暗い図書館を歩く横島は、ふと昔やったRPGゲームを思い出し苦笑いを浮かべてしまう

そんな横島に夕映は流石にゲームと違いモンスターは出ないと告げるが……

実は地下にドラゴンがいるなど夕映は知るはずもなかった


(正直オカルトはお腹いっぱいだったんだけど、まだまだ世界には不思議な事が溢れてるんだな)

おそらく自分ほどオカルトを体験をした人間はいないと思う横島だったが、世界が違えばまだまだ不思議な事がたくさんある事実に少し複雑な気持ちになる



「やはり見た目以上にこういう事に慣れてますね。 十分うちの部員としてやって行けますよ」

夕映は丁寧に罠の位置などを教えながら進むが、横島が頼りになりそうだった事を予想していたようである


「あちこち旅はしたからな~ その辺の同年代よりは多少な」

夕映に微妙に見抜かれていた事実に横島は再び苦笑いを浮かべるが、ふとある事実に気づいていた


(ここの罠って危険に見せてるけど、殺傷能力はないな。 盗掘阻止ってよりは探検部員を楽しませてるだけな気が……)

侵入者による盗掘阻止の為の罠だと夕映は説明していたが、実は殺傷能力を無くした罠ばかりである

刃物の罠も見せてもらったが、刃を潰しているため軽い怪我はしても殺傷能力がある物ではない

まあそれでも中学生には十分危険だし怪我ならする可能性はあるが、侵入盗掘阻止が目的ならばこれほど甘い罠はないと横島は思うのだ


(なんか筋書が読めて来たな)

魔法協会の管轄である図書館地下を探検するサークルが公式にある以上、魔法協会も探検されるのを知っているのだ

魔法に関わらない優秀な人材を魔法を隠したまま発掘育てる為の計画かただの愉快犯か、どちらかが理由で図書館探検を黙認しているのだろうと考えていた


(あのじいさんだしな。 どっちかと言えば両方が理由にある気も……)

元々は人材の発掘と育成だったのだろうが、近右衛門が愉快犯的に楽しんでる気がしてならない

かつての斉天大聖老師もそうだったが、真剣な目的にもどこか遊びを入れたがる愉快犯的な性格な気がしていた


(考えてみれば孫娘が入るサークルだしな。 本当に危険なら絶対阻止するよな)

来るまで本当に危険があるのかと多少緊張感があった横島だったが、裏側の筋書が読めると一気に緊張感が解けてしまう

本当にちょっと危険な部活動でしかない現実に、横島は思わず渇いた笑いを浮かべていた



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