また会う日まで
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「おばさん、今夜はご馳走様でした。
本当にありがとうございました。」
玄関先、カニ鍋を食べ終えたガクちゃんが猫かぶりモードで礼を言うと、
「いいえ、こちらこそ。
この子の荷物持ちやら、子守りやらさせちゃって、本当に悪かったわね~」
いつもより超御機嫌の母が缶ビール片手にお見送り。
「あ、いつものことなんでお気遣いなく。
俺、全然 気にしてませんから!」
何だ、この雰囲気……
鍋料理って、人をこんなにも打ち解けさせるのだろうか。
いや、曲者同士……波長が合って、意気投合したってことか。
私はその光景を遠巻きに眺める。
あれから、泣き腫らした顔でアパートに戻ったがカニ鍋どころではなかった。
母とガクちゃんの即席コンビに散々 弄り倒され、精神的に打ちのめされていた。
今日の教訓……
この二人を敵に回すまい。
「つばさ、ボヤッとしないで、ガクちゃんを下までお送りして。」
「あ、はいはい……」
母に促されるようにして、熱気の籠った部屋から廊下に出る。
その瞬間、冷たい風が廊下を吹き抜け、全身 鳥肌が立つ。
上着を羽織ってくれば よかった……
身震いしながら、後悔していると、
「つばさ、コート着ていきなさい。
風邪ひくわよ。」
ガクちゃんと話していた母が、壁のフックに掛けていたコートを私に手渡してきた。
この人は相変わらず、目敏い。
「じゃ、遅くまでお邪魔しました。
失礼します。」
「はいはい。
じゃ、ガクちゃん 頑張って。
おばさん、応援してるわよ~」
「「ははははっ……」」
背後で互いに猫かぶったまま、曲者達が挨拶を交わす。
恐ろしい光景から目を反らし、コートを羽織ると廊下を歩き始める。
「あー、カニ 美味かった。」
挨拶を終えたガクちゃんが満足そうに呟き、後ろから追い付いてきた。
「そりゃ良うございました。
あれだけ食べりゃ満足でしょうよ。」
おまけに母と二人で私のことを思う存分 からかって……
食欲とストレス解消を同時に満たせば、楽しめただろう。
そんなことを考えながら、私は階段を下りていく。
「まだ、怒ってんのか?」
私の言動が腑に落ちなかったのか、ガクちゃんは後ろから探りを入れる。
気にするくらいなら、調子に乗らなきゃいいのに……
「怒ってないよ。
逆に助かったくらい。
私だけじゃ、あの状況……耐えられなかったから。」
そう。
きっと 私と母だけじゃ、あんなに賑やかな夕飯にはならない。
少なくとも彼がいてくれたお陰で、余計なことを考えずに済んだのだから。
「そうか。
それなら、良かった。」
アパートの敷地から路地へ出ると、二人で大通りに向かう。
ガクちゃんの家は、ここからバスに乗って10分程度離れた高級住宅街の一軒家。
次のバスが立ち寄るまで、あと15分後。
彼を一人で待たすのは悪くて、それまで一緒に待つことにした。
「今日は遅くまで付き合わせてごめん。
稽古もサボらせちゃったし……」
バス停のベンチに二人で腰掛け、通りを行き交う車を眺めながら呟いた。
本当にありがとうございました。」
玄関先、カニ鍋を食べ終えたガクちゃんが猫かぶりモードで礼を言うと、
「いいえ、こちらこそ。
この子の荷物持ちやら、子守りやらさせちゃって、本当に悪かったわね~」
いつもより超御機嫌の母が缶ビール片手にお見送り。
「あ、いつものことなんでお気遣いなく。
俺、全然 気にしてませんから!」
何だ、この雰囲気……
鍋料理って、人をこんなにも打ち解けさせるのだろうか。
いや、曲者同士……波長が合って、意気投合したってことか。
私はその光景を遠巻きに眺める。
あれから、泣き腫らした顔でアパートに戻ったがカニ鍋どころではなかった。
母とガクちゃんの即席コンビに散々 弄り倒され、精神的に打ちのめされていた。
今日の教訓……
この二人を敵に回すまい。
「つばさ、ボヤッとしないで、ガクちゃんを下までお送りして。」
「あ、はいはい……」
母に促されるようにして、熱気の籠った部屋から廊下に出る。
その瞬間、冷たい風が廊下を吹き抜け、全身 鳥肌が立つ。
上着を羽織ってくれば よかった……
身震いしながら、後悔していると、
「つばさ、コート着ていきなさい。
風邪ひくわよ。」
ガクちゃんと話していた母が、壁のフックに掛けていたコートを私に手渡してきた。
この人は相変わらず、目敏い。
「じゃ、遅くまでお邪魔しました。
失礼します。」
「はいはい。
じゃ、ガクちゃん 頑張って。
おばさん、応援してるわよ~」
「「ははははっ……」」
背後で互いに猫かぶったまま、曲者達が挨拶を交わす。
恐ろしい光景から目を反らし、コートを羽織ると廊下を歩き始める。
「あー、カニ 美味かった。」
挨拶を終えたガクちゃんが満足そうに呟き、後ろから追い付いてきた。
「そりゃ良うございました。
あれだけ食べりゃ満足でしょうよ。」
おまけに母と二人で私のことを思う存分 からかって……
食欲とストレス解消を同時に満たせば、楽しめただろう。
そんなことを考えながら、私は階段を下りていく。
「まだ、怒ってんのか?」
私の言動が腑に落ちなかったのか、ガクちゃんは後ろから探りを入れる。
気にするくらいなら、調子に乗らなきゃいいのに……
「怒ってないよ。
逆に助かったくらい。
私だけじゃ、あの状況……耐えられなかったから。」
そう。
きっと 私と母だけじゃ、あんなに賑やかな夕飯にはならない。
少なくとも彼がいてくれたお陰で、余計なことを考えずに済んだのだから。
「そうか。
それなら、良かった。」
アパートの敷地から路地へ出ると、二人で大通りに向かう。
ガクちゃんの家は、ここからバスに乗って10分程度離れた高級住宅街の一軒家。
次のバスが立ち寄るまで、あと15分後。
彼を一人で待たすのは悪くて、それまで一緒に待つことにした。
「今日は遅くまで付き合わせてごめん。
稽古もサボらせちゃったし……」
バス停のベンチに二人で腰掛け、通りを行き交う車を眺めながら呟いた。