愛は霞まない

 仕事中は、ほぼずっとパソコン画面と睨めっこのせいで、常に目が疲れている。ドライアイに眼精疲労に結膜炎に近視に乱視と、常に何かしらの目のトラブルを抱えている。
 そんなだから、目薬は欠かせない。ブルーライトカットの眼鏡を外して、ポーチから小さな容器を取り出す。とにかくビタミンがたくさん入っているらしいそれを、仰向いた顔の上に掲げる。彼女が昨日、選んで買ってくれた目薬を滴下する。
 あれ、おかしいな、と思った。
 いつもなら、目に入れたらスッキリするはずなのに。スッキリするどころか、余計に視界がぼんやりしている気がする。
 変なの。かすみ目まで追加されちゃったのかな。
 そう思ったとき、ある連想が働いて、鼓動が早まった。
 これで、彼女にもっと甘えられる、なんて。
 彼女は、弱っているときの私に、めっぽう優しい。言葉で、行為で甘やかして、普段してくれない色んなことをしてくれる。美味しい料理を作ってくれたり、マッサージをしてくれたり、褒めてくれたり。
 そう言えば、前に不思議なことを言ってたっけ。
『君は弱ると私を頼ってくれるから、私は弱ってる君が好きだよ』
 二滴目を使って更に白く霞んでゆく視界に、彼女の満面の笑みが浮かんだ。
1/1ページ
スキ