また君ともう一度【鬼道有人】
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『ないてるだけじゃなにもはじまらないぞ』
そう言われ振り返ると、2人の少年少女がいた。
少年の方はドレッドヘアに凛とした赤い瞳が特徴的で、少女の方は少年の後ろに付き顔を覗かしていた。
あぁ、そういえば先生が言ってた。
この孤児院に新しくお友達が増えるって。
確か、この2人は兄妹だ。
『うるさい、あっちいってよ』
私は唯一の家族だった母を病気で亡くし、この孤児院に引き取られた。
母がいなくなり孤独になった私は心を閉ざし、施設で共に暮らすお友達とも仲良くなれず、いつも端っこで泣いてる私を引き取ってくれる大人も勿論いなかった。
そして、まもなくこの施設に来て私は一年が経とうとしてる。
そんな私の元に、この2人は現れた。
そしてこの日、私はもう一つ出会うものがある。
『いっしょにやらないか?』
そういって少年は、私の元にあるものが転がってきた。
『さっかーぼうる?』
少年が私の隣に座りある物を見せてくれた。
それはサッカー雑誌だった。
『じこでしんだおとさんがおれたちにのこしてくれただいじなざっしだ。さいきんはじめたけど、おれとはるなもにきたばかりだからいっしょにいるあいてがいないんだ。』
『ふーん…』
私は一瞬迷ったが、閉ざした心はすぐに開く訳もなく、2人からの誘いを私は断った。
『また、さそうよ』
大体の子たちはそう言って2度と私を遊びに誘ってくることはなかった。
しかし、次の日、また次の日と2人は毎日私をサッカーに誘った。
『いっかいだけだよ…』
遂に一ヶ月経った頃に私は観念し、兄妹とサッカーする事になった。
『おにいちゃん、とってもつよいんだよ!』
妹の春奈ちゃんはが私に言うと、少し誇らしげにする兄の姿。
いつも離れる事なくいる2人は、本当に仲が良いのだろう。
用意されてたゲームは、私と兄の1対1の勝負。
相手をドリブルで抜いたら勝ちというシンプルなもの。
春奈ちゃんは審判と応援係
『よーい、すたーと!』
掛け声で始まったと思えば、私は兄にあっさりと抜かされてしまった。
『おにいちゃんのかち!』
兄妹はハイタッチをして喜び合い、私はあまりの速さに驚きを隠せなかった。
『い、いま!ぜったいズルしたでしょ!』
『ずるなんかするもんか。ならもういっかいやるか?』
『やる、まけるもんか。』
あんなにあっさりやられたのが悔しくって、次は自ら勝負に挑んだ。
『よーい、すたーと!』
しかし、何度やっても結果は変わらず私は惨敗した。
『きーっ、くやしい!』
息切れの私に対して、涼しい顔をした兄は得意げにリフティングを披露していた。
『ぜったいいつかかってやる!』
この日から私は朝から晩までサッカーを練習し、何度も兄に勝負を挑んだ。
日が経つにつれ、施設の子供も大人も私たちの勝負を観戦しに来ていた。
そして、遂にこの日がきた。
『きょうこそ、わたしはおまえにかつ!』
『ふん、やってみろ。』
『よーい、すたーと!』
兄は癖で右にフェイントする。そして私が引っかかった所を抜けていくというのがお決まりパターンだ。
その技にはすぐに気付いたが技術面が足りず、いつも抜かされてしまっていた。
けど、今なら!
いつも通り右にフェイントする兄をかわし、そのまま抜けようとするも目の前にまた立場だかる。
『ここだっ!』
そのまま抜けると思わせ、左にフェイントした私は遂に兄を抜かし、勝利した。
『うわー!芽瑠すごいぞー!』
『遂に勝った〜!』
周りで見ていた皆んなが私に拍手を送り、おめでとうと口々に言った。
『芽瑠ちゃん、おめでとう!』
春奈ちゃんが私の手を取り、勝利を喜んでくれた。
『あ、ありがとう…』
照れながらもお礼を言う私に、春奈ちゃんは私に笑顔を向けた。
『かんぜんにやられたな。』
ズボンについた砂を払いながら、兄は私の元へと来た。
そして、私に手を差し出した。
『おれは、ゆうと。はるなはおれのいもうとだ。つぎはまけないぞ。』
『わたしは、芽瑠。わたしこそまけないから!。』
私もその手を握り返し、この時になって初めて自己紹介をした。
兄である有人は私の一個上、春奈ちゃんは私と同い年の為、ゆう兄とはるなと呼ぶようになり、私達三人は常に行動を共にするようになった。
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