姥桜
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藍染は梅子を呼びつけたものの、そもそも何と呼んでよいものやら、と思った。仮にも年上の梅子に、「秦君」はないだろう、と思った。梅子は黙っていたが、何やらなんとなく喧嘩腰で、藍染は手痛い言葉が返ってくるだろう、と予想した。藍染は、梅子が今まで他の隊士達にしてやったことは膨大で、いくら自分が隊長とはいっても、到底梅子にはかなわない、と思った。彼女は命懸けで、他の隊士達のために魂の臨戦態勢でここに立っている、と思うと、彼女をとがめるのは間違いなのではないか、と思ってしまった。
「何故墮胎などということをさせたんだい?」
藍染はそれだけ尋ねた。藍染とて世間を知らぬわけではない。相手の男が、俺の子じゃないとしらを切ったから、とか、産休を取ると出世に響くから、とか、犯されて身ごもった子供で、生まれても不幸だったから、とか、生んでも育てられない状況にあり、いくらでも墮胎した理由が浮かんできた。しかし隊士達は、それを隊長には言わず、梅子に言い、梅子に労苦を担ってもらっていたのである。
隊長とは何か、と思った。
まるで遠くにあるお飾りじゃないか、と藍染は自答した。
「野暮ですね。」
梅子は力を抜かず、息だけを吐いて言った。
「色々あるんですよ。」
梅子は肩をいからせたままだった。
張り詰めた空気が、隊主室に充満していた。
彼女はこれからもその生き方を変えることはないだろう。隊長が誰であろうが、知ったことか、と言われた気がした。
そんな空気を破って、廊下で女性隊士達の悲鳴が聞こえた。男の隊士が二人、争う声がした。梅子は藍染のことなど忘れたかのように、藍染が許可を出してもいないのにとっとと隊主室から走り出て行った。男の隊士は、お互いに、
「お前がおばあちゃんのことをたれ込んだんだろう?!」
と、ありもしない罪をかぶせあって殴り合っていた。梅子は二人の間に全力で割り込み、
「よしなって!!子守ばばあが目を離すとすぐこれだ!!」
と声を上げ、二人の頬を一回ずつピシャリと打った。
「私が藍染隊長に何をされたっていうんだい?!見てのとおりピンピンしてるじゃないか!!そんな肝っ玉の小さいことでどうするんだい!!」
梅子は怒りで顔を渋くしながら胸を張った。隊士達はみな安心して涙ぐんでいた。
嗚呼、これが皆を守る者の力というものか。
藍染はそっと扉を締め、隊主室にこもった。
窓の外で、桜の老木が花を咲かせていた。
剪定の度に、植木職人から、傷んでいて来年は花をつけないかもしれない、と言われ続けている古木である。しかし毎年花を咲かせていた。
来年も彼女とこの桜を見られるだろうか。
そう思うと、桜が散る前に、彼女に声をかけなければ、と藍染は思った。
「何故墮胎などということをさせたんだい?」
藍染はそれだけ尋ねた。藍染とて世間を知らぬわけではない。相手の男が、俺の子じゃないとしらを切ったから、とか、産休を取ると出世に響くから、とか、犯されて身ごもった子供で、生まれても不幸だったから、とか、生んでも育てられない状況にあり、いくらでも墮胎した理由が浮かんできた。しかし隊士達は、それを隊長には言わず、梅子に言い、梅子に労苦を担ってもらっていたのである。
隊長とは何か、と思った。
まるで遠くにあるお飾りじゃないか、と藍染は自答した。
「野暮ですね。」
梅子は力を抜かず、息だけを吐いて言った。
「色々あるんですよ。」
梅子は肩をいからせたままだった。
張り詰めた空気が、隊主室に充満していた。
彼女はこれからもその生き方を変えることはないだろう。隊長が誰であろうが、知ったことか、と言われた気がした。
そんな空気を破って、廊下で女性隊士達の悲鳴が聞こえた。男の隊士が二人、争う声がした。梅子は藍染のことなど忘れたかのように、藍染が許可を出してもいないのにとっとと隊主室から走り出て行った。男の隊士は、お互いに、
「お前がおばあちゃんのことをたれ込んだんだろう?!」
と、ありもしない罪をかぶせあって殴り合っていた。梅子は二人の間に全力で割り込み、
「よしなって!!子守ばばあが目を離すとすぐこれだ!!」
と声を上げ、二人の頬を一回ずつピシャリと打った。
「私が藍染隊長に何をされたっていうんだい?!見てのとおりピンピンしてるじゃないか!!そんな肝っ玉の小さいことでどうするんだい!!」
梅子は怒りで顔を渋くしながら胸を張った。隊士達はみな安心して涙ぐんでいた。
嗚呼、これが皆を守る者の力というものか。
藍染はそっと扉を締め、隊主室にこもった。
窓の外で、桜の老木が花を咲かせていた。
剪定の度に、植木職人から、傷んでいて来年は花をつけないかもしれない、と言われ続けている古木である。しかし毎年花を咲かせていた。
来年も彼女とこの桜を見られるだろうか。
そう思うと、桜が散る前に、彼女に声をかけなければ、と藍染は思った。