第2話
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それを目の当たりにしたコーネロは、全く予想外の展開に対し、狂った音程で嘲笑う。
エドの機械鎧を見つめながら、おかしくて、たまらなく嘲笑う。
「…なるほど。そうか、貴様…なぜ、こんなガキが"鋼"なんぞという厳 い称号を掲げているのか不思議でならなかったが…そういう訳か…」
錬金術師の間で暗黙の内に禁じられている、そのとてつもない危険さを思い知らされた。
「ロゼ、この者達はな、錬金術の間では、暗黙のうちに禁じられている『人体錬成』を…最大の禁忌を犯しおったのよ!」
他でもない、死んだ人間を生き返らせる禁忌の術――それが人体錬成。
「…!!」
ロゼは思わず口許を押さえて言葉に詰まった。
失った右腕と左足を機械鎧に代えたエド、鋼鉄の鎧の内側は空洞のアル。
身体の一部と全てを失った兄弟の姿に、教会で彼が告げた言葉がよみがえる。
(『太陽 に近づきすぎた英雄は、翼をもがれて地に墜されるっ』…てな)
あの時の彼の言い草は誰かを非難しているというよりむしろ、自嘲のような響きがあった。
それは、死んだ人間を生き返らせるために禁忌を犯した自分達を差したのだと、今さらになって悟る。
これはまだ、兄弟が幼い頃――人体錬成を実行する前のことである。
彼ら兄弟は父親の書庫から独学で錬金術を学び、それを度々母親に見せていた。
だが、母親は若くして流行り病で死んでしまった。
「アル!アル!アルフォンス!」
「どうしたのさ、兄さん」
書庫で錬金術を調べるアルに駆け寄り、エドは机に大きな紙を広げる。
「これだ!この理論なら完璧だよ!」
「これって、まさか…」
「そうだ!母さんを生き返らせる事ができる!」
――生物を創り出す事に、なんの疑いも無かった。
――やさしい…本当にやさしい母さんだった。
突然の声が二人の勉強部屋を震わせたのは、その時だった。
「エド!アル!こんなトコにいた!!」
すぐ目の前で仁王立ちになっているのは、一人の少女だった。
肩まで伸ばした金の髪に、大きな海を思わせる深い碧眼。
「「キョウコ!」」
少女――キョウコはすねた声で言い返す。
「また二人して、人体錬成について調べてるの?ずるい!あたしも混ぜてって言ってるのに」
キョウコは幼い頃、身寄りもなくさ迷っていたところを兄弟の父親に手を引かれ、今では彼らの家で家族同然に暮らしている。
ちなみに、キョウコも錬金術を習っているが、まだ二人には遠く及ばない。
「そんなことより、キョウコ!見てくれよ」
エドは先程持ってきた紙を、キョウコにも見せる。
「この理論なら完璧だよ!これなら、母さんを生き返らせる事ができる!」
「じゃあ、これでまた、お母さんと一緒に暮らせるんだね!」
――ボク達は、ただもう一度、母さんの笑顔が見たかっただけだったんだ。
――たとえそれが、錬金術の禁忌にふれていても。
――それだけのために、ボク達は錬金術を鍛えてきたんだから…。
「じゃあ、その時になったら、必ずあたしも誘ってね!」
「オゥ!約束だ!」
キョウコは実行する日に必ず自分も誘ってくれと、二人に約束を誓った。
しかし、二人はキョウコに内緒で人体錬成を始めた。
期待と興奮に胸膨らむ中、錬成陣に異変が起こる。
――錬成は失敗だった。
さらに運悪く、キョウコが部屋に入って来てしまった。
――錬成の過程で、兄さんは左足を、キョウコは髪と瞳の色を、ボクは身体を全部持って行かれた。
――ボクの意識は、そこで一度途切れ…次に目を開けた時に見たものは、この鎧の身体と、血の海の中の――。
「ヘヘ…ごめんな。右手一本じゃ、お前の魂しか錬成できなかったよ」
「なんて無茶を…!!」
次に、床に倒れ込むキョウコを見つけると急いで駆け寄る。
「…キョウコ!?キョウコ!しっかりして、キョウコ!!」
「……ッ…う…」
身体を抱き上げようとするが、その姿に愕然とした。
「……………キョウコ…その髪…」
何故なら、キョウコの金髪――絹糸を思わせ、実に繊細で柔軟な明るい髪の色は、彼らには見たことのない、珍しい漆黒。
「――……ア…ル…?」
切り揃えた前髪の奥、眉の下で開いた瞳の色は見紛 うはずもない――"黒"だった。
語られるのは、無邪気さと好奇心、そして子供特有の残酷性から生まれてしまった悪夢。
「兄さんは左足を失ったままの重傷で…今度はボクの魂を、その右腕と引き替えに錬成して、この鎧に定着させたんだ」
「あたしは二人の人体錬成に遭遇してしまった事で、髪と瞳の色を変えられた」
「へっ…二人がかりで一人の人間を甦らせようとして、このザマだ…挙げ句の果てに、何の関係もないキョウコを巻き込んじまってな」
刹那、凜とした響きがその発言を否定する。
「でも、あたしはそれでいいと思ってる。あたしだけ罰が無いなんてのは有り得ない」
隣に立つキョウコの美しい覇気にエドは一瞬驚いて、頬を赤く染める。
一つ息を整えると、漆黒の瞳をまっすぐロゼへと向けた。
「ロゼ。人を甦らせるってのはこういうことよ。その覚悟があるの?あなたに!」
キョウコの覚悟を求める言葉に、ロゼは身体を強張らせる。
もう彼女には何も言えなかった。
三人の歩んできた道は、想像するのもおこがましいくらい苦難の道だったのだから。
「くくく…エドワード・エルリック!!キョウコ・アルジェント!!貴様らそれで国家錬金術師とは!!これが笑われずにいられるか!?」
「うっせーんだよ。石が無きゃ何もできねぇ、どサンピンが!」
「なるほど、なるほど。それで賢者の石を欲するか。そうだなぁ。これを使えば、人体錬成が成功するかもなぁ?」
くっくっくっ、と喉の奥を鳴らして笑うコーネロに、三人は反論する。
「カン違いすんなよハゲ!石が欲しいのは、元の身体に戻るためだ。もっとも、元に戻れるかもだけどな…!」
「教主様、もう一度だけ言いますよ」
「痛い目見ないうちに、石をボク達に渡してほしい」
「くく…神に近づきすぎ、地に墜とされたおろか者どもめ…」
コーネロは持っていた杖に手をかざし、全くの別物へと変形させる。
束ねられた六本の銃身 を回転させながら切れ目のない超連続射撃を行う旋回機銃 である。
「ならば、この私が、今度こそしっかりと…神の元へ送りとどけてやろう!!」
無情な宣言と共に、コーネロは射撃反動に備えて両足でしっかりと地を踏みしめる。
トリガーボタンを押し込むと、回転銃身がスピンアップ、直後に耳を塞ぐ爆音をあげてガトリングガンが火を噴く。
かなりの威力なのか、砂塵が舞い上がる。
「ははははははははは…!?」
これこそが一秒間に百発の高速ライフル弾を吐き出す鏖殺 兵器ガトリングガンの真価である。
そうして、土交じりの風が過ぎることしばし、コーネロは唖然とする。
キョウコを抱き寄せ、エドは自身が錬成した石の壁で銃撃を防いでいたのだ。
「いや、オレらって、神様に嫌われてるだろうからさ。行っても、追い返されると思うぜ!」
強きに言い返す腕の中で、キョウコは頬を赤らめる。
どうやら、服というフィルターがなくなったため、彼の逞しい胸板に羞恥心を感じたらしい。
「ち!!」
舌打ちする、その隙にアルはロゼを抱き上げ、一目散に走り出す。
「この…」
逃走に気づき、狙いを変えてアル(の背中)へと再びガトリングガンを撃つ。
「きゃーーーっ!!!」
「あだだだだだ」
痛がっている様子にも見えないアルとは裏腹に、ロゼは悲鳴をあげ、怯えるように頭を抱える。
エドはキョウコの手を取り、扉に向かって走る。
「アル!いったん出るぞ!」
「バカめ!出口はこっちで操作せねば開かぬようになっておる!!」
「ああ、そうかい!」
エドはキョウコの手を離すと、両手を合わせてから壁に手を当てる。
次の瞬間、ただの壁から錬成し、あるはずのない扉を出現させた。
「んなぁーーーーーっっ!!??」
狂乱に陥るコーネロはあらん限り絶叫する。
エドは体当たりして扉を開かせる。
「出口が無けりゃ」
「作るまでね!」
不遜に口の端をつり上げるエドに続き、キョウコも凛々しい笑みを浮かべながら外に出る。
広間の外で待機する男達に、コーネロは声を荒げて命令する。
「何をしておる!追え!教団を陥れる異教徒だ!!早く捕まえんか!!」
しばらく走り続けると、武器を持った男達が待ち構えていた。
「こっちだ!」
「止まれ、その者!」
三人の正面に立つ男達は恫喝的な声で威嚇する。
その姿が近づくにつれ、捕縛する人物が二人の少年少女に気づき、軽い嘲笑が湧き起こる。
「ほら、ボウズ。丸腰でこの人数相手にする気かい?」
「ケガしないうちに、おとなしく捕まり…」
余裕綽々な男達だったが、エドはにっこりと微笑むと両手を合わせた。
そして右手の機械鎧へと触れ、巨大なナイフを錬成した。
「「え」」
これには、年端もいかない少年少女だとなめてかかった男達の表情が一変、硬直する。
直後、恐怖に身を震わせる男達の断末魔が響き渡り、それはまるで地獄絵図。
『ひーーーーーーっっ!!』
その残虐な光景を見たキョウコは、敵に同情の眼差しを送る。
「うわー…容赦ない。ってゆーか、あたしの援護、必要ないんじゃ…」
「くっ…手強いぞ!子供だからと言って、油断するな!」
「ガキがダメなら、小娘をやれェェ!!」
後からやって来た男達が武器を構え、標的をキョウコに変えて襲いかかってきた。
地を滑らす足に力を込めて、手袋をはめた右手をコート左の内懐、腰の辺りに差し入れる。
「小娘だと思って、なめちゃ」
腰のベルトから、ガシャン、とスライドを引く。
ほどなく前方、見る見る迫る男達に向けて、距離を見切り、
「ケガするわよっ!」
抜きつけに、左腰から現れた黒い銃を抜き、発砲。
男達が持つ各々の武器に命中する。
「が……っ!?」
「ぐうっ!!」
「…痛っ!」
男達は次々に武器を落とし、痺れる手を押さえてうずくまる。
「はい、邪魔ーー」
さらに、背後から走ってきたアルに踏み台にされた。
「しどい…」
無事、合流した四人はひたすら逃げ続ける。
逃走の途中、エドはある部屋の前に立ち止まった。
「エド、どうかした?」
「なんでもねぇよ…お?」
「この部屋は?」
キョウコが疑問符を浮かべていると、アルに抱えられたロゼが降りて答える。
エドの機械鎧を見つめながら、おかしくて、たまらなく嘲笑う。
「…なるほど。そうか、貴様…なぜ、こんなガキが"鋼"なんぞという
錬金術師の間で暗黙の内に禁じられている、そのとてつもない危険さを思い知らされた。
「ロゼ、この者達はな、錬金術の間では、暗黙のうちに禁じられている『人体錬成』を…最大の禁忌を犯しおったのよ!」
他でもない、死んだ人間を生き返らせる禁忌の術――それが人体錬成。
「…!!」
ロゼは思わず口許を押さえて言葉に詰まった。
失った右腕と左足を機械鎧に代えたエド、鋼鉄の鎧の内側は空洞のアル。
身体の一部と全てを失った兄弟の姿に、教会で彼が告げた言葉がよみがえる。
(『
あの時の彼の言い草は誰かを非難しているというよりむしろ、自嘲のような響きがあった。
それは、死んだ人間を生き返らせるために禁忌を犯した自分達を差したのだと、今さらになって悟る。
これはまだ、兄弟が幼い頃――人体錬成を実行する前のことである。
彼ら兄弟は父親の書庫から独学で錬金術を学び、それを度々母親に見せていた。
だが、母親は若くして流行り病で死んでしまった。
「アル!アル!アルフォンス!」
「どうしたのさ、兄さん」
書庫で錬金術を調べるアルに駆け寄り、エドは机に大きな紙を広げる。
「これだ!この理論なら完璧だよ!」
「これって、まさか…」
「そうだ!母さんを生き返らせる事ができる!」
――生物を創り出す事に、なんの疑いも無かった。
――やさしい…本当にやさしい母さんだった。
突然の声が二人の勉強部屋を震わせたのは、その時だった。
「エド!アル!こんなトコにいた!!」
すぐ目の前で仁王立ちになっているのは、一人の少女だった。
肩まで伸ばした金の髪に、大きな海を思わせる深い碧眼。
「「キョウコ!」」
少女――キョウコはすねた声で言い返す。
「また二人して、人体錬成について調べてるの?ずるい!あたしも混ぜてって言ってるのに」
キョウコは幼い頃、身寄りもなくさ迷っていたところを兄弟の父親に手を引かれ、今では彼らの家で家族同然に暮らしている。
ちなみに、キョウコも錬金術を習っているが、まだ二人には遠く及ばない。
「そんなことより、キョウコ!見てくれよ」
エドは先程持ってきた紙を、キョウコにも見せる。
「この理論なら完璧だよ!これなら、母さんを生き返らせる事ができる!」
「じゃあ、これでまた、お母さんと一緒に暮らせるんだね!」
――ボク達は、ただもう一度、母さんの笑顔が見たかっただけだったんだ。
――たとえそれが、錬金術の禁忌にふれていても。
――それだけのために、ボク達は錬金術を鍛えてきたんだから…。
「じゃあ、その時になったら、必ずあたしも誘ってね!」
「オゥ!約束だ!」
キョウコは実行する日に必ず自分も誘ってくれと、二人に約束を誓った。
しかし、二人はキョウコに内緒で人体錬成を始めた。
期待と興奮に胸膨らむ中、錬成陣に異変が起こる。
――錬成は失敗だった。
さらに運悪く、キョウコが部屋に入って来てしまった。
――錬成の過程で、兄さんは左足を、キョウコは髪と瞳の色を、ボクは身体を全部持って行かれた。
――ボクの意識は、そこで一度途切れ…次に目を開けた時に見たものは、この鎧の身体と、血の海の中の――。
「ヘヘ…ごめんな。右手一本じゃ、お前の魂しか錬成できなかったよ」
「なんて無茶を…!!」
次に、床に倒れ込むキョウコを見つけると急いで駆け寄る。
「…キョウコ!?キョウコ!しっかりして、キョウコ!!」
「……ッ…う…」
身体を抱き上げようとするが、その姿に愕然とした。
「……………キョウコ…その髪…」
何故なら、キョウコの金髪――絹糸を思わせ、実に繊細で柔軟な明るい髪の色は、彼らには見たことのない、珍しい漆黒。
「――……ア…ル…?」
切り揃えた前髪の奥、眉の下で開いた瞳の色は
語られるのは、無邪気さと好奇心、そして子供特有の残酷性から生まれてしまった悪夢。
「兄さんは左足を失ったままの重傷で…今度はボクの魂を、その右腕と引き替えに錬成して、この鎧に定着させたんだ」
「あたしは二人の人体錬成に遭遇してしまった事で、髪と瞳の色を変えられた」
「へっ…二人がかりで一人の人間を甦らせようとして、このザマだ…挙げ句の果てに、何の関係もないキョウコを巻き込んじまってな」
刹那、凜とした響きがその発言を否定する。
「でも、あたしはそれでいいと思ってる。あたしだけ罰が無いなんてのは有り得ない」
隣に立つキョウコの美しい覇気にエドは一瞬驚いて、頬を赤く染める。
一つ息を整えると、漆黒の瞳をまっすぐロゼへと向けた。
「ロゼ。人を甦らせるってのはこういうことよ。その覚悟があるの?あなたに!」
キョウコの覚悟を求める言葉に、ロゼは身体を強張らせる。
もう彼女には何も言えなかった。
三人の歩んできた道は、想像するのもおこがましいくらい苦難の道だったのだから。
「くくく…エドワード・エルリック!!キョウコ・アルジェント!!貴様らそれで国家錬金術師とは!!これが笑われずにいられるか!?」
「うっせーんだよ。石が無きゃ何もできねぇ、どサンピンが!」
「なるほど、なるほど。それで賢者の石を欲するか。そうだなぁ。これを使えば、人体錬成が成功するかもなぁ?」
くっくっくっ、と喉の奥を鳴らして笑うコーネロに、三人は反論する。
「カン違いすんなよハゲ!石が欲しいのは、元の身体に戻るためだ。もっとも、元に戻れるかもだけどな…!」
「教主様、もう一度だけ言いますよ」
「痛い目見ないうちに、石をボク達に渡してほしい」
「くく…神に近づきすぎ、地に墜とされたおろか者どもめ…」
コーネロは持っていた杖に手をかざし、全くの別物へと変形させる。
束ねられた六本の
「ならば、この私が、今度こそしっかりと…神の元へ送りとどけてやろう!!」
無情な宣言と共に、コーネロは射撃反動に備えて両足でしっかりと地を踏みしめる。
トリガーボタンを押し込むと、回転銃身がスピンアップ、直後に耳を塞ぐ爆音をあげてガトリングガンが火を噴く。
かなりの威力なのか、砂塵が舞い上がる。
「ははははははははは…!?」
これこそが一秒間に百発の高速ライフル弾を吐き出す
そうして、土交じりの風が過ぎることしばし、コーネロは唖然とする。
キョウコを抱き寄せ、エドは自身が錬成した石の壁で銃撃を防いでいたのだ。
「いや、オレらって、神様に嫌われてるだろうからさ。行っても、追い返されると思うぜ!」
強きに言い返す腕の中で、キョウコは頬を赤らめる。
どうやら、服というフィルターがなくなったため、彼の逞しい胸板に羞恥心を感じたらしい。
「ち!!」
舌打ちする、その隙にアルはロゼを抱き上げ、一目散に走り出す。
「この…」
逃走に気づき、狙いを変えてアル(の背中)へと再びガトリングガンを撃つ。
「きゃーーーっ!!!」
「あだだだだだ」
痛がっている様子にも見えないアルとは裏腹に、ロゼは悲鳴をあげ、怯えるように頭を抱える。
エドはキョウコの手を取り、扉に向かって走る。
「アル!いったん出るぞ!」
「バカめ!出口はこっちで操作せねば開かぬようになっておる!!」
「ああ、そうかい!」
エドはキョウコの手を離すと、両手を合わせてから壁に手を当てる。
次の瞬間、ただの壁から錬成し、あるはずのない扉を出現させた。
「んなぁーーーーーっっ!!??」
狂乱に陥るコーネロはあらん限り絶叫する。
エドは体当たりして扉を開かせる。
「出口が無けりゃ」
「作るまでね!」
不遜に口の端をつり上げるエドに続き、キョウコも凛々しい笑みを浮かべながら外に出る。
広間の外で待機する男達に、コーネロは声を荒げて命令する。
「何をしておる!追え!教団を陥れる異教徒だ!!早く捕まえんか!!」
しばらく走り続けると、武器を持った男達が待ち構えていた。
「こっちだ!」
「止まれ、その者!」
三人の正面に立つ男達は恫喝的な声で威嚇する。
その姿が近づくにつれ、捕縛する人物が二人の少年少女に気づき、軽い嘲笑が湧き起こる。
「ほら、ボウズ。丸腰でこの人数相手にする気かい?」
「ケガしないうちに、おとなしく捕まり…」
余裕綽々な男達だったが、エドはにっこりと微笑むと両手を合わせた。
そして右手の機械鎧へと触れ、巨大なナイフを錬成した。
「「え」」
これには、年端もいかない少年少女だとなめてかかった男達の表情が一変、硬直する。
直後、恐怖に身を震わせる男達の断末魔が響き渡り、それはまるで地獄絵図。
『ひーーーーーーっっ!!』
その残虐な光景を見たキョウコは、敵に同情の眼差しを送る。
「うわー…容赦ない。ってゆーか、あたしの援護、必要ないんじゃ…」
「くっ…手強いぞ!子供だからと言って、油断するな!」
「ガキがダメなら、小娘をやれェェ!!」
後からやって来た男達が武器を構え、標的をキョウコに変えて襲いかかってきた。
地を滑らす足に力を込めて、手袋をはめた右手をコート左の内懐、腰の辺りに差し入れる。
「小娘だと思って、なめちゃ」
腰のベルトから、ガシャン、とスライドを引く。
ほどなく前方、見る見る迫る男達に向けて、距離を見切り、
「ケガするわよっ!」
抜きつけに、左腰から現れた黒い銃を抜き、発砲。
男達が持つ各々の武器に命中する。
「が……っ!?」
「ぐうっ!!」
「…痛っ!」
男達は次々に武器を落とし、痺れる手を押さえてうずくまる。
「はい、邪魔ーー」
さらに、背後から走ってきたアルに踏み台にされた。
「しどい…」
無事、合流した四人はひたすら逃げ続ける。
逃走の途中、エドはある部屋の前に立ち止まった。
「エド、どうかした?」
「なんでもねぇよ…お?」
「この部屋は?」
キョウコが疑問符を浮かべていると、アルに抱えられたロゼが降りて答える。