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刀剣乱舞

「君はここのところ働きすぎだ。少しは休みを取れ」

散々そう言われていたけれど、日々の仕事量を目の前にしてはいそうですかと頷くわけにもいかず、結局聞く耳を持たないでいたら、近侍である鶴丸国永は強硬手段に出た。
半ば無理やりに腕を引かれて本丸の外へと引きずられる。
ぐるぐると身体の中に渦巻いていた、何となく黒い物がすっといなくなるような心地がした。
久しぶりに万屋を覗いて買い物をしたり、甘味処で新作のあんみつも食べた。
そして陽も暮れかけてきた頃、どうしても行きたいという彼の希望で、わたしたちは海岸沿いへとやってきた。

「……綺麗」

沈みゆく太陽はどこか物悲しさを帯びているのに、その光が反射する水面はいつも以上に輝いて見えた。
何の風情もない言葉しか出て来ない。せめてもう少し歌仙に雅な言葉を教わっておけばよかった。

「たまにはこうして、何もない景色を眺めるのも悪くないだろう」

いつの間にか鶴丸は着物の裾をたくし上げて、くるぶしの上まで海に浸かっていた。
その姿があまりにも眩しくて、夕陽が彼の輪郭を飲み込んでいく。
まるでどこか遠くへ行ってしまうような気がして、思わずわたしは抱きついた。

「……置いて、いかないよね」
:「何を言うかと思えば、そんなことか」

どこかへ連れ去ることはあるかもしれないがな。
そうお道化て笑う彼を見て、抱きしめられていることを実感して、ようやく安堵する。

「俺は君の刀だ。必ず傍で守ると約束しただろう」
「違うよ、あなたはわたしの……」

その先の言葉は、彼からの口づけに飲み込まれてしまった。
言わせたくなかったのか、そもそも無意識だったのかはわからないけれど。

今はまだ、この曖昧な関係にただ身を委ねた。
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