このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

刀剣乱舞

障子越しにうっすらと陽の光が差し込む薄暗い部屋。
その押し入れでよもやこのような事態になっているとは、誰も想像すら出来まい。

「ちょっ・・・やめ・・・だめ・・・!」

「あまり声を出されますと、他の者に聞こえてしまいますぞ」
組み敷いた彼女の耳元にそっと唇を寄せる。
ひくりと肩が震えたのは、驚いたせいだろうか。
それとも、この声に反応したせいか。

「・・・いち、ご・・・だめ、だよ・・・」

「主殿さえ黙っていてくだされば、誰も気づきますまい」
首筋にもわざと音を立てて口付ける。
証を刻み込めないのがなんとも口惜しい。

「なんで・・・こんな、こと・・・」

瞳にたっぷりと涙を浮かべて懇願してくる彼女の姿に、ぞくりと背後に痺れが走った。

「お慕い申しておるが故です」

少し乱れてはだけた胸元にも、唇をひとつ。
抑えきれずに零れた嬌声がますます理性を壊していく。
本当は、わかっている。
こんなことをしても無駄だということを。
彼女には想い人がいて、それは私ではない。

「・・・どうして、私ではないのですか・・・」

聞いておきながら、彼女の唇を自身のそれで塞いでしまう。
答えが聞きたい訳では無い。
ただ、ほんのわずかでも彼女の中に自分を刻んで欲しかった。

「・・・っ・・・ん・・・ぁ・・・」

何度も何度も角度を変えて、歯列を割って舌を絡ませる。
暴れれば暴れるほど、衣服が乱れて艶が増す。

「・・・けて・・・っ・・・る、まる・・・!」

懸命にこの腕を振りほどこうと抵抗しながら、貴方はあの鶴の名を呼ぶのですね。
頭では理解していながら、心の臓を袈裟掛けに斬られたような心地になる。
いっそ、あの男の元へなど戻れぬくらい穢してしまおうか。
そんな想いにはっと息を飲んで、彼女に触れる手を止めた。
なんとおぞましいものがこの身に巣食っていたことか。
今更ながらに事の重大性に気づく。

「・・・申し訳、ございません・・・」

震える手で彼女の襟元を正してからそっと涙を拭った。
何か告げねばならないのに、何も言葉が出てこない。
動けずに固まったままの彼女をその場に残し、狭い押し入れから抜け出した。
もう、主殿はおそらく私のことなど見たくもないだろう。
・・・ならば。

たった一言だけ想いをしたためた紙一枚を残し、一期一振はこの本丸から姿を消した。
3/16ページ
スキ