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君との見る月
君の名前は?
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審神者になり、何日か経った。
出陣や、遠征、内番、刀剣の様子など、知らないことが沢山あって、毎日があっという間に過ぎていく。
それでも、三日月や日本号、他の昔から私を知ってる刀剣はみんな良くしてくれて。
私を知らなくても、短刀君達はいつもキラキラした目で私を迎えてくれる。
それは、今まで否定され続けてきた私にはとても心地よくて。
毎日が楽しかった。
「主よ、そろそろ休憩したらどうだ?」
朝から書庫にあった文献を引っ張り出しては今まであった出陣や時間遡行軍の情報を読んでる私を見かねた三日月がお茶を持ってきてくれた。
「三日月、ありがと。
知らないことが沢山あって、審神者ってすごいんだなって思うね。」
本を閉じて暖かいお茶を貰う。
「勉強ばかりも悪くはないが、そう根を詰めすぎると、疲れてしまうぞ?」
散らかしてしまった書類を片付けながら、三日月は苦笑いをする。
ここに来てから、ずっと部屋に籠りきりで、食事以外ほとんど人と会うこともない。
三日月も心配はしてくれるけど、やはり少しでもちゃんとした審神者になりたいから。
のんびりと三日月と話してると、賑やかな声が外に聞こえてきた。
「おや、短刀達かな?」
今日は遠征に出てない短刀君達には畑当番をお願いしていた。
「主様~!!居ますか~?」
元気な短刀達の声に、三日月が障子を開けると。
今にも靴のまま上がって来そうなキラキラした目の短刀達。
「今剣君に、包丁君に、愛染君だよね?
どうしたの?」
お茶を置いて縁側に出ると、今剣君が膝に飛び付いてきた。
「名前覚えてくれた~!!」
話を聞こうと縁側に座り、今剣君を撫でると、愛染君も包丁君も横に来る。
「主様あのね!」
「主様聞いて!!」
「主、あっちでな!」
3人が同時に話始めて、びっくりしてしまう。
こんなに人から話かけられたことがないから。
「これ、3人とも。同時に話始めたら主が聞き取れないだろ?」
三日月に窘められて、3人が思い出したように止まる。
「ごめんね。じゃあ、今剣君から聞かせて?」
3人を撫でながら聞くと、今剣君がわーい!と、喜んで話始めた。
「内番が終わったので報告に来ました!」
今剣君がそう言うと、続いて包丁君が話始めた。
「燭台切さんにお野菜届けてきたんですよ!!」
ありがとう、そう言うとと、待ってたとばかりに愛染君が私の手を引いた。
「光忠が芋蒸かしたって言うから食べに行こうぜ!!」
それで3人が嬉しそうに呼びに来てくれたのかと。
「ありがとう。でも、みんなで頑張ったんだから、皆で食べておいで?」
もう少し勉強したかったから断ろうとすると、
「主様も呼んできてって燭台切に言われたんです!」
行くの!
と、今剣君が手を引っ張る。
どうしようと三日月を見ると。
「良いじゃないか。ワシも行こう。」
そう言って背中をポンと押してくれた。
「じゃあ………少しだけね?」
縁側に草履を出してもらい、履くと、3人は喜んで手を引いてくれた。
燭台切が用意してくれた蒸かし芋は甘くて短刀君達とワイワイ食べてると、とても美味しくて。
しばらくは走り回る短刀君達を眺めながらお芋を食べて話していた。
夕刻になり。
夕飯も終わり、また自室で書物を読んでいる。
「主よ、ここの書物は片付けて良いのか?」
読み終えて積んでおいた書物を指差し、三日月が聞いてくれた。
「あ、うん。それの続きも読みたい。」
読みたい本を指差し伝えると。
「わかった。書庫に行ってくる。」
よいしょっと、書物を持つと、三日月が部屋から出ていった。
また、読んでいた本に視線を戻し、陣形を見ていると、部屋に誰かが近づく足音が聞こえた。
これは、三日月でも日本号でもない。
「主様、入ってよろしいですか?」
あまり聞きなれない声に少しだけ緊張の糸が張る。
「ど、どうぞ?」
読んでいた本を閉じて声のした方に目をやると。
障子が開き、淡いピンクの髪をした刀剣が入ってきた。
「失礼します。」
ペコリと頭を下げると足音も静かに入ってくる。
私も、本を置き、刀剣の前に座った。
「えっと、宗三左文字さん、で良かったですね?」
ゆったりと座る刀剣は左文字の中でも落ち着いた雰囲気のある左文字。
確か、姉が継ぐ予定だった時に姉の近侍をやっていた方。
「はい。ご挨拶をしに参りました。」
深々と頭を下げると、しっかりと私を見る。
「あ、はい。お名前は姉より聞いて、存じております。」
こちらも頭を下げると、少しだけ微笑んだ。
「知っていただけているとは、ありがたい。
御姉様には大変良くして頂いて。これからは、貴女の為にこの身を尽くさせて頂きます。」
そう言って笑ってくれてるのに。
この人は、どこか怖い。
目が、笑っていない。
三日月はまだ帰って来なそうだから、場をつなぐのが辛い。
「そういえば………」
三日月が帰ってこないかと、廊下を気にしていたとき。
不意に左文字が話始めて、そちらに目を向けると。
「私が御姉様の生前の近侍だったのはご存知ですね?」
そう聞かれて。
「はい………。姉から伺ってました。」
何を言われるんだろうと思っていると。
不意に立ち上がった左文字はすっと目の前に座ると私の頬を撫でた。
「本当に………。御姉様にそっくりですね。
言われなかったらわからないでしょう………?」
ゆっくりと頬をなでる目が冷たい。
見つめられて、凍ったように、体が動かせない。
「あの………ちょっと……」
止めさせようと手を掴もうとすると、逆に腕を掴まれて。
「腕も………、瞳も………。全てあの方なんですね。」
明らかに、私を通して姉を見ている左文字に、恐怖すら感じる。
それを見越してか、左文字は頬を撫でる指で唇をなぞり始める。
「私は、あの方を心からお慕いしておりました………。だから、あの方が亡くなったと聞いたとき、自分の役目は無くなったと思いました………。」
どうしても逃げたくて。
震える体を後ろに離そうとすると、そうはさせないと、腕を引っ張られる。
「左文字、やめて………。放して………。」
大きな声を出せば三日月が戻るかもと思って廊下を見た瞬間。
声が出ないように口を押さえられる。
「騒がないでください。
貴女はいつだって冷静だったでしょ?
御姉様が亡くなり、あなたが残ってしまったなら、あなたが御姉様になればいい………。
顔も、声も、体も同じなら、あなたが御姉様の思想を継げばいい。」
恐怖で声がでないと解ると、左文字は嬉しそうに口から手を放して、人差し指で唇から喉を通り、胸までなぞる。
「貴女は望まれて産まれてきた。
審神者として、この本丸を継ぐ者として。
雛菊などこの本丸に必要ない。
必要なのは、貴女様です………。
ずっと、お待ちしておりました………。」
恐怖で反らせない左文字の目は、私を姉として見て、姉として愛していた。
私を私としては見ていない………。
頬に戻った手が冷たくて。
言葉すら発することができないでいた。
その時。
-ガタンッ-
不意に障子が開き、笑顔の三日月が入ってきた。
「宗三左文字よ、何をしておる?」
笑顔のまま聞けば、左文字は笑顔のまま返す。
「主様に挨拶をしに来ただけですよ?」
ねぇ?
と、さっきまで掴んでいた手と頬を触っていた手は放された。
「挨拶は構わんが、主がそこまで凍りつく表情をさせるようなことをするためにここに入って良いとは私言ってはいないが?」
明らかに、怒っている。
そんな雰囲気がひしひしと伝わってくる。
その雰囲気は左文字にも伝わったのか。
やれやれと立ち上がるとこちらを見た。
「また、改めてお話しましょうね。主様?」
では、と頭を下げると部屋を出ていった。
それを見届けると、三日月は障子を閉めて近くに寄ってくる。
「主よ、大事ないか?」
私の横に座り、手を取ってくれたけど。
左文字の目が頭から離れない。
やっぱり、私は姉の代わりで。
「………三日月………。ごめんなさい………。」
三日月の手をゆっくりと掴んで、頭を下げた。
「私が残ってしまってごめんなさい……。」
三日月に謝るわけではなく。
誰に謝るわけではなく。
自分が生き残ってしまったことが、悲しくて。
三日月は、そっと私を抱き締めると、まるで子供をあやすように背中を撫でてくれた。
「主は雛菊様であって、姉様では無かろう?」
耳元で囁くように、優しく話しかけてくれる。
「一部、否定的な者が居ても、もちろん短刀達や、我らのように受け入れる者もいる。
主は「望まれない人」ではないぞ?」
よしよし、と、声にならず泣いている私を強く抱き締めては撫でてくれる。
「主は、わし達にとって、「望まれる者」だ。忘れないでくれ。主が折れてしまっては、本丸が弱るからな。」
三日月の言葉の一つ一つが優しくて。
私の心をとかしていく。
ここに居て良いんだと。
私は、私で良いんだと。
それが嬉しくて。
疲れ果てるまで泣いた。
-パタン-
主が泣きつかれて眠ったので、布団に横たえて寝かせると部屋を出る。
縁側には、一人酒を煽る男。
「日本号よ。帰ったのか。」
静かに縁側に座れば、日本号はまた一口酒を煽る。
「雛菊に何があった?」
明らかに機嫌の悪い。
きっと、さっきまでの状況を見ていたのだろう。
「宗三左文字が、主に近づいた。姉様の近侍だったからな。主に姉様になれと申した。」
日本号にぐい飲みをもらい、注いでもらった酒を飲む。
「………くそがっ………。」
自分が助けられなかったことがさらに怒りを煽る。
「宗三左文字は主に近づけるな。」
ぼそりと、怒りを込めた一言を発して、日本号は立ち上がった。
「………当たり前だ。
主に苦を与える者を私は許さぬよ。」
日本号は、そっと障子を開けて眠る主を見る。
無き疲れて眠る姿はまだ幼く、儚い。
「俺は………雛菊を守る………。」
そう言うと、そっと障子を閉めて歩いていった。
これから主の道が、たとえ荒れ果てて歩きにくかろうとも、私と日本号が必ずお守りします。
我らの命と代えても………
出陣や、遠征、内番、刀剣の様子など、知らないことが沢山あって、毎日があっという間に過ぎていく。
それでも、三日月や日本号、他の昔から私を知ってる刀剣はみんな良くしてくれて。
私を知らなくても、短刀君達はいつもキラキラした目で私を迎えてくれる。
それは、今まで否定され続けてきた私にはとても心地よくて。
毎日が楽しかった。
「主よ、そろそろ休憩したらどうだ?」
朝から書庫にあった文献を引っ張り出しては今まであった出陣や時間遡行軍の情報を読んでる私を見かねた三日月がお茶を持ってきてくれた。
「三日月、ありがと。
知らないことが沢山あって、審神者ってすごいんだなって思うね。」
本を閉じて暖かいお茶を貰う。
「勉強ばかりも悪くはないが、そう根を詰めすぎると、疲れてしまうぞ?」
散らかしてしまった書類を片付けながら、三日月は苦笑いをする。
ここに来てから、ずっと部屋に籠りきりで、食事以外ほとんど人と会うこともない。
三日月も心配はしてくれるけど、やはり少しでもちゃんとした審神者になりたいから。
のんびりと三日月と話してると、賑やかな声が外に聞こえてきた。
「おや、短刀達かな?」
今日は遠征に出てない短刀君達には畑当番をお願いしていた。
「主様~!!居ますか~?」
元気な短刀達の声に、三日月が障子を開けると。
今にも靴のまま上がって来そうなキラキラした目の短刀達。
「今剣君に、包丁君に、愛染君だよね?
どうしたの?」
お茶を置いて縁側に出ると、今剣君が膝に飛び付いてきた。
「名前覚えてくれた~!!」
話を聞こうと縁側に座り、今剣君を撫でると、愛染君も包丁君も横に来る。
「主様あのね!」
「主様聞いて!!」
「主、あっちでな!」
3人が同時に話始めて、びっくりしてしまう。
こんなに人から話かけられたことがないから。
「これ、3人とも。同時に話始めたら主が聞き取れないだろ?」
三日月に窘められて、3人が思い出したように止まる。
「ごめんね。じゃあ、今剣君から聞かせて?」
3人を撫でながら聞くと、今剣君がわーい!と、喜んで話始めた。
「内番が終わったので報告に来ました!」
今剣君がそう言うと、続いて包丁君が話始めた。
「燭台切さんにお野菜届けてきたんですよ!!」
ありがとう、そう言うとと、待ってたとばかりに愛染君が私の手を引いた。
「光忠が芋蒸かしたって言うから食べに行こうぜ!!」
それで3人が嬉しそうに呼びに来てくれたのかと。
「ありがとう。でも、みんなで頑張ったんだから、皆で食べておいで?」
もう少し勉強したかったから断ろうとすると、
「主様も呼んできてって燭台切に言われたんです!」
行くの!
と、今剣君が手を引っ張る。
どうしようと三日月を見ると。
「良いじゃないか。ワシも行こう。」
そう言って背中をポンと押してくれた。
「じゃあ………少しだけね?」
縁側に草履を出してもらい、履くと、3人は喜んで手を引いてくれた。
燭台切が用意してくれた蒸かし芋は甘くて短刀君達とワイワイ食べてると、とても美味しくて。
しばらくは走り回る短刀君達を眺めながらお芋を食べて話していた。
夕刻になり。
夕飯も終わり、また自室で書物を読んでいる。
「主よ、ここの書物は片付けて良いのか?」
読み終えて積んでおいた書物を指差し、三日月が聞いてくれた。
「あ、うん。それの続きも読みたい。」
読みたい本を指差し伝えると。
「わかった。書庫に行ってくる。」
よいしょっと、書物を持つと、三日月が部屋から出ていった。
また、読んでいた本に視線を戻し、陣形を見ていると、部屋に誰かが近づく足音が聞こえた。
これは、三日月でも日本号でもない。
「主様、入ってよろしいですか?」
あまり聞きなれない声に少しだけ緊張の糸が張る。
「ど、どうぞ?」
読んでいた本を閉じて声のした方に目をやると。
障子が開き、淡いピンクの髪をした刀剣が入ってきた。
「失礼します。」
ペコリと頭を下げると足音も静かに入ってくる。
私も、本を置き、刀剣の前に座った。
「えっと、宗三左文字さん、で良かったですね?」
ゆったりと座る刀剣は左文字の中でも落ち着いた雰囲気のある左文字。
確か、姉が継ぐ予定だった時に姉の近侍をやっていた方。
「はい。ご挨拶をしに参りました。」
深々と頭を下げると、しっかりと私を見る。
「あ、はい。お名前は姉より聞いて、存じております。」
こちらも頭を下げると、少しだけ微笑んだ。
「知っていただけているとは、ありがたい。
御姉様には大変良くして頂いて。これからは、貴女の為にこの身を尽くさせて頂きます。」
そう言って笑ってくれてるのに。
この人は、どこか怖い。
目が、笑っていない。
三日月はまだ帰って来なそうだから、場をつなぐのが辛い。
「そういえば………」
三日月が帰ってこないかと、廊下を気にしていたとき。
不意に左文字が話始めて、そちらに目を向けると。
「私が御姉様の生前の近侍だったのはご存知ですね?」
そう聞かれて。
「はい………。姉から伺ってました。」
何を言われるんだろうと思っていると。
不意に立ち上がった左文字はすっと目の前に座ると私の頬を撫でた。
「本当に………。御姉様にそっくりですね。
言われなかったらわからないでしょう………?」
ゆっくりと頬をなでる目が冷たい。
見つめられて、凍ったように、体が動かせない。
「あの………ちょっと……」
止めさせようと手を掴もうとすると、逆に腕を掴まれて。
「腕も………、瞳も………。全てあの方なんですね。」
明らかに、私を通して姉を見ている左文字に、恐怖すら感じる。
それを見越してか、左文字は頬を撫でる指で唇をなぞり始める。
「私は、あの方を心からお慕いしておりました………。だから、あの方が亡くなったと聞いたとき、自分の役目は無くなったと思いました………。」
どうしても逃げたくて。
震える体を後ろに離そうとすると、そうはさせないと、腕を引っ張られる。
「左文字、やめて………。放して………。」
大きな声を出せば三日月が戻るかもと思って廊下を見た瞬間。
声が出ないように口を押さえられる。
「騒がないでください。
貴女はいつだって冷静だったでしょ?
御姉様が亡くなり、あなたが残ってしまったなら、あなたが御姉様になればいい………。
顔も、声も、体も同じなら、あなたが御姉様の思想を継げばいい。」
恐怖で声がでないと解ると、左文字は嬉しそうに口から手を放して、人差し指で唇から喉を通り、胸までなぞる。
「貴女は望まれて産まれてきた。
審神者として、この本丸を継ぐ者として。
雛菊などこの本丸に必要ない。
必要なのは、貴女様です………。
ずっと、お待ちしておりました………。」
恐怖で反らせない左文字の目は、私を姉として見て、姉として愛していた。
私を私としては見ていない………。
頬に戻った手が冷たくて。
言葉すら発することができないでいた。
その時。
-ガタンッ-
不意に障子が開き、笑顔の三日月が入ってきた。
「宗三左文字よ、何をしておる?」
笑顔のまま聞けば、左文字は笑顔のまま返す。
「主様に挨拶をしに来ただけですよ?」
ねぇ?
と、さっきまで掴んでいた手と頬を触っていた手は放された。
「挨拶は構わんが、主がそこまで凍りつく表情をさせるようなことをするためにここに入って良いとは私言ってはいないが?」
明らかに、怒っている。
そんな雰囲気がひしひしと伝わってくる。
その雰囲気は左文字にも伝わったのか。
やれやれと立ち上がるとこちらを見た。
「また、改めてお話しましょうね。主様?」
では、と頭を下げると部屋を出ていった。
それを見届けると、三日月は障子を閉めて近くに寄ってくる。
「主よ、大事ないか?」
私の横に座り、手を取ってくれたけど。
左文字の目が頭から離れない。
やっぱり、私は姉の代わりで。
「………三日月………。ごめんなさい………。」
三日月の手をゆっくりと掴んで、頭を下げた。
「私が残ってしまってごめんなさい……。」
三日月に謝るわけではなく。
誰に謝るわけではなく。
自分が生き残ってしまったことが、悲しくて。
三日月は、そっと私を抱き締めると、まるで子供をあやすように背中を撫でてくれた。
「主は雛菊様であって、姉様では無かろう?」
耳元で囁くように、優しく話しかけてくれる。
「一部、否定的な者が居ても、もちろん短刀達や、我らのように受け入れる者もいる。
主は「望まれない人」ではないぞ?」
よしよし、と、声にならず泣いている私を強く抱き締めては撫でてくれる。
「主は、わし達にとって、「望まれる者」だ。忘れないでくれ。主が折れてしまっては、本丸が弱るからな。」
三日月の言葉の一つ一つが優しくて。
私の心をとかしていく。
ここに居て良いんだと。
私は、私で良いんだと。
それが嬉しくて。
疲れ果てるまで泣いた。
-パタン-
主が泣きつかれて眠ったので、布団に横たえて寝かせると部屋を出る。
縁側には、一人酒を煽る男。
「日本号よ。帰ったのか。」
静かに縁側に座れば、日本号はまた一口酒を煽る。
「雛菊に何があった?」
明らかに機嫌の悪い。
きっと、さっきまでの状況を見ていたのだろう。
「宗三左文字が、主に近づいた。姉様の近侍だったからな。主に姉様になれと申した。」
日本号にぐい飲みをもらい、注いでもらった酒を飲む。
「………くそがっ………。」
自分が助けられなかったことがさらに怒りを煽る。
「宗三左文字は主に近づけるな。」
ぼそりと、怒りを込めた一言を発して、日本号は立ち上がった。
「………当たり前だ。
主に苦を与える者を私は許さぬよ。」
日本号は、そっと障子を開けて眠る主を見る。
無き疲れて眠る姿はまだ幼く、儚い。
「俺は………雛菊を守る………。」
そう言うと、そっと障子を閉めて歩いていった。
これから主の道が、たとえ荒れ果てて歩きにくかろうとも、私と日本号が必ずお守りします。
我らの命と代えても………