和楽器バンドの夢専用の名前になります♪
君との見る月
君の名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
なぜ、私が生きてるんだろう………。
なぜ、お姉ちゃんが死んで、私が生き残ってしまったんだろう………。
私は、代々続く審神者の一族に双子の妹として産まれた。
姉は一族でも稀に見る実力者になると親族の中でも期待されていた。
統率力、観察力、全てが優秀だった。
父も、母も、期待していた。
なのに。
流行り病にかかった。
私も、姉も。
元々体の弱かった姉はどんどん弱っていき。
逆に私は、どんどん良くなっていった。
結果、姉は病に勝てず。
母は毎日泣いていた。
親族にもなぜ私が残ったのかと、影口を言われた。
そのうち。
母は私が見えなくなっていた。
姉と、瓜二つな私は、母の中で【姉】として理解されて。
私の存在は母の中から居なくなっていた。
母が泣くから。
父も、母を泣かせたくないから。
私は、姉にならなきゃいけなかった。
姉の代わりに、審神者にならなきゃいけなかった。
「雛菊、さあ、時間だ。」
家の小窓から見える綺麗な月。
これが、現世で見る、最後の月。
「………はい。」
審神者の装束に身を包み、立ち上がると、父について神棚の前に行く。
「では、これから行くのは一族代々守ってきた本丸だ。
よろしく頼んだぞ。」
これから、私は【本丸】という名の鳥籠に移される。
審神者とは名ばかりの、厄介払い。
ここに居たら、いつか、また母が壊れてしまうから。
「………はい。
大変、お世話になりました。」
ペコリと頭を下げて、神棚を見つめる。
目を閉じれば、胸に下げた勾玉が光りだし、体が光に包まれた。
(さよなら………。)
しばらくして。
光がおさまり、ゆっくりと目を開けると。
そこは、月明かりに照らされた部屋。
「主、お待ちしておりました。」
目の前には刀剣と呼ばれる存在。
小さい頃から何度か本丸には来たことあるから、大体の刀剣はわかる。
「三日月………。お久しぶりです。」
三日月はニコリと笑い、深々と頭を下げた。
「雛菊様、立派に成長されましたな。」
立派に………。
どこがだろうと考えながら、周りを見る。
すでに夜更け。
誰かが起きてるハズはない。
「立派に、なれたら良いんですが………。
明日の朝、皆に会います。
今日は、三日月も休んでください。」
私も休みますから、そう言うと。
「では、そのように。」
そう言って部屋を出ていった。
ただ、広い部屋。
資料など、色んな本も並んでいる。
これから、私はこの鳥籠で刀剣達を纏め、指揮を取らなきゃいけない。
でも、私は人が傷つくのが怖い。
昔から何をしても姉に勝てたことがない。
将棋をしても、花札をしても。
「雛菊は、優しすぎるのね。」
いつもお姉ちゃんにそう言われていた。
優しすぎるから、人が傷つく前に自分が白旗を上げてしまう。
ふぅ、と、ため息をついて。
なんとなく障子を開けて庭を眺める。
誰も居ない、静かな庭には、広い池に、藤が咲き誇り、綺麗な満月が見えている。
「どこの世界も、月だけは綺麗なんだな………。」
ぼんやりと、縁側に座り、足を投げ出して月を見上げていた。
「へぇ、お嬢が新しい審神者か。」
気配が無かったのに不意に声をかけられて心臓が跳ね上がる。
びっくりしたまま、声のした方を見れば。
手に酒瓶をぶら下げた大きな人が庭にやってきた。
「………びっくりした………。」
あまりのことに心臓が痛く、目を丸くしてると。
「わりぃ。」
笑いながらその大きな人は隣まで歩いてきて縁側に座った。
「えっと、雛菊の方だよな?」
この人も、私がわかるのかと感心した。
姉とは本当に顔が似ていて、大体の人は間違えるから。
「…………はい。よく、わかりましたね?」
感心してると、その人は笑いながら酒を一口呑んで。
「そりゃ、小さい頃はしょっちゅう肩に乗せてたからな。
小さい頃すぎて、覚えてないか?」
そう言われれば。
小さい頃、本丸に行くといつも肩に乗せてくれる人がいた。
その人の頭を触るのが好きで、しょっちゅう髪の毛結んでたっけ。
「えっと…………日本号?」
名前もうろ覚えで。
恐る恐る聞くと。
「………正解。」
そう言って笑ってくれた。
「そっか、日本号もこの本丸に居てくれたんだね。」
なんだか急に懐かしくなり。
顔をよく見れば、相変わらず髪の毛は結んである。
「雛菊が髪の毛結ぶ癖つけたから、ほどいてあると邪魔でよ。」
こうなったと。
教えてくれたことが面白くてついつい笑ってしまう。
「お、やっと笑った。」
そう言われて。
それまで笑ってなかったことに気付く。
「初めてくる場所じゃねぇんだ。知ってるやつだって居るだろ?
心配すんな。」
そう言って、昔のように頭を撫でてくれる。
その大きな手に。
ここに来るまでの不安が、少しだけ解けた気がした………。
笑い合う二人を月だけが見ていた………
1/15ページ