27話:ヒミツが溶ける
中間テストが終わってから、約一ヶ月半と言ったところだろうか?
「テスト! やっと終わりましたねぇ……オレはもう帰りたい」
「じゃあ帰れよ」神崎さんは、いつものように橋下さんに悪態をついた。
「イヤだな先輩。それくらい頑張ったってことじゃないですか」
「ほんとかよ……いや、なんでもない」
「あ、さてはこう見えてオレの成績がいいことを思い出しましたね?」
話題は既に、七月に行われた期末テストが終わったという話が行われていた。テスト期間ということもあり、図書室はテストが行われる一週間ほど前から閉まるのが早くなっていたお陰で、こうしてなんの疑いもなくこのメンバーが集まるというのは久し振りのような、そんな気がした。
「せ、先輩……」
「ん?」
「えっと……」
だからこそと言うべきなのか、僕はといえばテストが終わった後も気が気じゃなかった。
理由は主に三つ。まず一つ目は、最後のテストが終わって早々に橋下さんが勢いをつけて教室に飛び込んできたお陰で、図書室にこなければならなくなったということ。もうひとつは、この人たちと会うのが久し振りなせいで少々落ち着かないということ。そしてもうひとつは……。
「……仮に順位落ちてもさ、別にこれで決まるわけじゃないし」
正しく、今宇栄原さんが口にした事柄のことである。僕がなにかを言うよりも前に先手を打たれてしまい、それ以上何かを口にすることに躊躇してしまう。もしかして、こうも的確に言われてしまう程顔に出てしまっていただろうか? そうだとするなら、もう少し身の振り方を考えないとならないかも知れない。
「まあ、その分二学期はもうちょっと頑張らないといけないだろうけど。その時はその時で何とかなると思うけどなぁ」
「で、でも……それじゃあ教えてもらった意味がないというか……」
「ああ確かに、これで相谷君のテストの点数が落ちたら原因はどう考えてもおれだもんなぁ。それは流石に責任感じるかも」
参ったなぁと、本当にそう思っているのかいないのか苦笑いでそんなことを口にする宇栄原さんに、僕は思わず視線を反らした。
宇栄原さんはこういう人であるというのは一応分かってはいるのだが、それにしても自ら頼んでおいて成績が落ちました、なんてことには当然なりたくないのだ。
「もしそうなったら、おれも頑張るからさ。……いや、でもそうなったらおれじゃない方がいいかもね。やっぱり相性ってあるだろうし」
ここなら一応、選り取り見取りだし。そうやって適当に言ってみせる宇栄原さんは、僕に勉強を教えるというこの状況を、果たしてどう思っているのだろうか?
そう思えば思うほど、どういうわけか欲に近いものが湧いて出る。
「宇栄原さん以外の人に教わるのは嫌です……」
仮に、もしこれから先もその状況が少しでも続く可能性があるだとするなら、それ以外の選択肢は出来ることなら取りたくない。
「な、なんか分かんないけどオレが恥ずかしい……」急に話に割って入ってきたのは、案の定橋下さんである。
「黙れ」
「ごめんなさいごめんなさい」
神崎さんが、手に持っていた文庫本で橋下さんのことを制圧する。だが、その時には既に手遅れだった。
さて、一体どうしてそんなことを口にしてしまったのか、自分でもいまいちよく分からない。
「か、帰ります……っ!」
一気に身体の体温が上がり、思わず勢いのまま腰をあげる。まだ来たばかりだというのに、僕はすぐさま荷物を持ち急いでその場を後にしてしまった。
「テスト! やっと終わりましたねぇ……オレはもう帰りたい」
「じゃあ帰れよ」神崎さんは、いつものように橋下さんに悪態をついた。
「イヤだな先輩。それくらい頑張ったってことじゃないですか」
「ほんとかよ……いや、なんでもない」
「あ、さてはこう見えてオレの成績がいいことを思い出しましたね?」
話題は既に、七月に行われた期末テストが終わったという話が行われていた。テスト期間ということもあり、図書室はテストが行われる一週間ほど前から閉まるのが早くなっていたお陰で、こうしてなんの疑いもなくこのメンバーが集まるというのは久し振りのような、そんな気がした。
「せ、先輩……」
「ん?」
「えっと……」
だからこそと言うべきなのか、僕はといえばテストが終わった後も気が気じゃなかった。
理由は主に三つ。まず一つ目は、最後のテストが終わって早々に橋下さんが勢いをつけて教室に飛び込んできたお陰で、図書室にこなければならなくなったということ。もうひとつは、この人たちと会うのが久し振りなせいで少々落ち着かないということ。そしてもうひとつは……。
「……仮に順位落ちてもさ、別にこれで決まるわけじゃないし」
正しく、今宇栄原さんが口にした事柄のことである。僕がなにかを言うよりも前に先手を打たれてしまい、それ以上何かを口にすることに躊躇してしまう。もしかして、こうも的確に言われてしまう程顔に出てしまっていただろうか? そうだとするなら、もう少し身の振り方を考えないとならないかも知れない。
「まあ、その分二学期はもうちょっと頑張らないといけないだろうけど。その時はその時で何とかなると思うけどなぁ」
「で、でも……それじゃあ教えてもらった意味がないというか……」
「ああ確かに、これで相谷君のテストの点数が落ちたら原因はどう考えてもおれだもんなぁ。それは流石に責任感じるかも」
参ったなぁと、本当にそう思っているのかいないのか苦笑いでそんなことを口にする宇栄原さんに、僕は思わず視線を反らした。
宇栄原さんはこういう人であるというのは一応分かってはいるのだが、それにしても自ら頼んでおいて成績が落ちました、なんてことには当然なりたくないのだ。
「もしそうなったら、おれも頑張るからさ。……いや、でもそうなったらおれじゃない方がいいかもね。やっぱり相性ってあるだろうし」
ここなら一応、選り取り見取りだし。そうやって適当に言ってみせる宇栄原さんは、僕に勉強を教えるというこの状況を、果たしてどう思っているのだろうか?
そう思えば思うほど、どういうわけか欲に近いものが湧いて出る。
「宇栄原さん以外の人に教わるのは嫌です……」
仮に、もしこれから先もその状況が少しでも続く可能性があるだとするなら、それ以外の選択肢は出来ることなら取りたくない。
「な、なんか分かんないけどオレが恥ずかしい……」急に話に割って入ってきたのは、案の定橋下さんである。
「黙れ」
「ごめんなさいごめんなさい」
神崎さんが、手に持っていた文庫本で橋下さんのことを制圧する。だが、その時には既に手遅れだった。
さて、一体どうしてそんなことを口にしてしまったのか、自分でもいまいちよく分からない。
「か、帰ります……っ!」
一気に身体の体温が上がり、思わず勢いのまま腰をあげる。まだ来たばかりだというのに、僕はすぐさま荷物を持ち急いでその場を後にしてしまった。