君の抱えているもの
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※俺の里には女はいなかった、とありますが気にしないで読んでいただけると幸いです。
新しくS級ヒーローが入るらしい。
試験一発合格。体力測定では、鬼サイボーグにも並ぶ成績だったようだ。
その人物に、フラッシュは驚く。
昔、一緒に忍者の里にいた人物だ。確か、殺したはずなのに。
書類で顔を確認する。だいぶ歳を取ったがこの顔は忘れるはずない。
目を瞑り、瞼の裏に思い出を映し始める。
忍者の里にて
「大丈夫? フラッシュ、ソニック」
「……あぁ」
「フン。俺は大丈夫だ、フラッシュの面倒を見てやれ」
そういって、怪我を手当てしてくれたのは名無しさんという者だった。
名無しさんもこの忍者の里で育てられている。
名無しさんは忍者には相応しくない甘さを持っていた。
死にそうになった者も、鍛錬に置いていかれそうになった者も、こうして怪我をしている者も助けようとする。
その甘さのせいで、いつも罰を与えられていた。
なのでフラッシュは名無しさんのことが強いのか弱いのか分からない。でも、心は弱いのだと確信めいたものを感じていた。
こんなに甘いのだから、人など殺せないだろうと。
しかも女性だ。女に血を流す仕事などできないだろう。
名無しさんはここで唯一の女であった。
「フラッシュ、ソニック。ご飯持ってきた!」
そう笑顔でいた記憶だ。いつも怪我をしていた。
傷が昨日ついたものだろう。修行の怪我ではない。誰かに殴られたものに見える。
いつしかフラッシュは、その笑顔が楽しみになっていた。
いつからだろうか。その笑顔が消えたのは。
それだけではない。名無しさんがフラッシュとソニックのもとへ来てくれなくなった。
どうやら皆が修行している場にもいなかった。
色々な場所を探す。名無しさんがいたのは、木の上だ。
名無しさんの身体が、ヒクヒク動いている。
「おい」
声をかける。すると名無しさんは動きを止めた。
木から降りてくる気配はない。
フラッシュは、名無しさんのもとへ行こうと木へのぼる。
しかし名無しさんが静止した。
「来ないでッ!」
フラッシュは首を傾げる。どうして行ってはいけないのか。
名無しさんの静止も聞かず、フラッシュは気にせずのぼり名無しさんのもとへ行った。
名無しさんを見て言葉が詰まる。いつもの傷がないから。
「来ないでって行ったのに」
名無しさんの顔は涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃだ。
目元は真っ赤に腫れている。
「どうした?」
そう聞くのがフラッシュの精一杯の言葉だった。
名無しさんは俯く。顔をフラッシュに見られたくないように。
声を震わしながら言った。
「……言いたくない」
「そうか」
何があったのか話してくれないと理解したフラッシュは、それっきり何も聞かなかった。
フラッシュはまだ人の気持ちや感情が分からない。それでも、名無しさんが悲しくて泣いているのは、顔を見て分かった。
ただただ、隣に座っている。
暫くして、思いついた。フラッシュは木から飛び降りる。
そして、とある場所に行った。
名無しさんは隣からフラッシュがいなくなったことを疑問に思ったが、やっと一人になれたのでまた泣き始めた。
数十分後フラッシュが戻って来る。その手には、この場所に似合わない花を持っていた。
また木にのぼり、名無しさんの耳上の髪に花をさす。
「……?」
「確か、花はこうするのだと見た」
フラッシュが得た知識は、誰かが落としたボロボロの少女漫画だ。
今時摘んだ花を髪にさすなんてことはやっていない。
それでも、これがフラッシュの考える一番の励ましかただった。
名無しさんは笑った。いつもみたいな笑顔ではないけれど。
「……ありがとう、フラッシュ」
笑顔がフラッシュの時間を止めたようだった。
心臓が騒がしい。顔が熱い。身体が動かない。
名無しさんは目に溜まっていた涙を袖で拭い、話し始めた。
「嫌なこと、しちゃった」
「任務か?」
「うん」
自分たちより早く名無しさんが任務に行くとは。
しかもそのせいで泣いている? やはり名無しさんは忍者に向いていないと思った。
しかしその考えなど忘れるぐらい、名無しさんの言葉は重かった。
「女の私にしか、できないんだって」
その言葉の意味を理解した途端、熱かった顔は頭へと。
手が震える。震えは怒りの証明だ。
名無しさんがされたこと、やらされたこと。考えたくないのに、脳に浮かんでいる。
決心した。忍者の里は滅ぼさないといけない。
ここの者たちは全て、死なないといけない存在だ。
「……早くヒーローが助けにきてくれないかな」
名無しさんのその言葉をフラッシュはよく覚えていた。
だからこそ里を滅ぼした後にヒーローになった。あの時の名無しさんを助けようと夢を見るように。
それからフラッシュは里を滅ぼした。全員、遠慮なく。
ソニックと名無しさんも例外なく殺した。
名無しさんは最後、笑っていた気がする。あの時、花をあげた時の笑み。
どうして笑っていたのか、フラッシュは今も分かっていない。
目を開ける。そこにはヒーロー協会の天井。
フラッシュは名無しさんにどんな言葉をかけようか悩んだ。
新しくS級ヒーローが入るらしい。
試験一発合格。体力測定では、鬼サイボーグにも並ぶ成績だったようだ。
その人物に、フラッシュは驚く。
昔、一緒に忍者の里にいた人物だ。確か、殺したはずなのに。
書類で顔を確認する。だいぶ歳を取ったがこの顔は忘れるはずない。
目を瞑り、瞼の裏に思い出を映し始める。
忍者の里にて
「大丈夫? フラッシュ、ソニック」
「……あぁ」
「フン。俺は大丈夫だ、フラッシュの面倒を見てやれ」
そういって、怪我を手当てしてくれたのは名無しさんという者だった。
名無しさんもこの忍者の里で育てられている。
名無しさんは忍者には相応しくない甘さを持っていた。
死にそうになった者も、鍛錬に置いていかれそうになった者も、こうして怪我をしている者も助けようとする。
その甘さのせいで、いつも罰を与えられていた。
なのでフラッシュは名無しさんのことが強いのか弱いのか分からない。でも、心は弱いのだと確信めいたものを感じていた。
こんなに甘いのだから、人など殺せないだろうと。
しかも女性だ。女に血を流す仕事などできないだろう。
名無しさんはここで唯一の女であった。
「フラッシュ、ソニック。ご飯持ってきた!」
そう笑顔でいた記憶だ。いつも怪我をしていた。
傷が昨日ついたものだろう。修行の怪我ではない。誰かに殴られたものに見える。
いつしかフラッシュは、その笑顔が楽しみになっていた。
いつからだろうか。その笑顔が消えたのは。
それだけではない。名無しさんがフラッシュとソニックのもとへ来てくれなくなった。
どうやら皆が修行している場にもいなかった。
色々な場所を探す。名無しさんがいたのは、木の上だ。
名無しさんの身体が、ヒクヒク動いている。
「おい」
声をかける。すると名無しさんは動きを止めた。
木から降りてくる気配はない。
フラッシュは、名無しさんのもとへ行こうと木へのぼる。
しかし名無しさんが静止した。
「来ないでッ!」
フラッシュは首を傾げる。どうして行ってはいけないのか。
名無しさんの静止も聞かず、フラッシュは気にせずのぼり名無しさんのもとへ行った。
名無しさんを見て言葉が詰まる。いつもの傷がないから。
「来ないでって行ったのに」
名無しさんの顔は涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃだ。
目元は真っ赤に腫れている。
「どうした?」
そう聞くのがフラッシュの精一杯の言葉だった。
名無しさんは俯く。顔をフラッシュに見られたくないように。
声を震わしながら言った。
「……言いたくない」
「そうか」
何があったのか話してくれないと理解したフラッシュは、それっきり何も聞かなかった。
フラッシュはまだ人の気持ちや感情が分からない。それでも、名無しさんが悲しくて泣いているのは、顔を見て分かった。
ただただ、隣に座っている。
暫くして、思いついた。フラッシュは木から飛び降りる。
そして、とある場所に行った。
名無しさんは隣からフラッシュがいなくなったことを疑問に思ったが、やっと一人になれたのでまた泣き始めた。
数十分後フラッシュが戻って来る。その手には、この場所に似合わない花を持っていた。
また木にのぼり、名無しさんの耳上の髪に花をさす。
「……?」
「確か、花はこうするのだと見た」
フラッシュが得た知識は、誰かが落としたボロボロの少女漫画だ。
今時摘んだ花を髪にさすなんてことはやっていない。
それでも、これがフラッシュの考える一番の励ましかただった。
名無しさんは笑った。いつもみたいな笑顔ではないけれど。
「……ありがとう、フラッシュ」
笑顔がフラッシュの時間を止めたようだった。
心臓が騒がしい。顔が熱い。身体が動かない。
名無しさんは目に溜まっていた涙を袖で拭い、話し始めた。
「嫌なこと、しちゃった」
「任務か?」
「うん」
自分たちより早く名無しさんが任務に行くとは。
しかもそのせいで泣いている? やはり名無しさんは忍者に向いていないと思った。
しかしその考えなど忘れるぐらい、名無しさんの言葉は重かった。
「女の私にしか、できないんだって」
その言葉の意味を理解した途端、熱かった顔は頭へと。
手が震える。震えは怒りの証明だ。
名無しさんがされたこと、やらされたこと。考えたくないのに、脳に浮かんでいる。
決心した。忍者の里は滅ぼさないといけない。
ここの者たちは全て、死なないといけない存在だ。
「……早くヒーローが助けにきてくれないかな」
名無しさんのその言葉をフラッシュはよく覚えていた。
だからこそ里を滅ぼした後にヒーローになった。あの時の名無しさんを助けようと夢を見るように。
それからフラッシュは里を滅ぼした。全員、遠慮なく。
ソニックと名無しさんも例外なく殺した。
名無しさんは最後、笑っていた気がする。あの時、花をあげた時の笑み。
どうして笑っていたのか、フラッシュは今も分かっていない。
目を開ける。そこにはヒーロー協会の天井。
フラッシュは名無しさんにどんな言葉をかけようか悩んだ。
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