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名無しさんは走った。ジェノスもついてこれるぐらいの速さで。
ジェノスは先ほどから誰かと電話していた。
そして、携帯をしまう。
「一人、こちらに増援が来るそうです」
「別にいらないけどね、私一人で全部倒せるし」
「どうしても来たかったらしいです」
誰が増援に来るのだろう。知っている人だろうか。
その人も私が知らない性格になっていたらどうしよう。
少しの心配は、的中した。
「フハハハハハ! 俺が来てやったぞ名無しさん!」
「は!?」
来たのは、いつもの恰好にマントをしたソニックだった。
思わず走っていた脚を止める。
急に止まったものだから、ジェノスとソニックは砂煙を発生させながら急停止した。
名無しさんは口をパクパクしながら聞く。
「え……? 増援って、ソニック?」
「はい」
「俺がいればサイタマなぞあっという間だ」
「え、え、ヒーロー?」
「そうです、S級ヒーロー八位の音速のソニックです」
「鬼サイボーグやら。足を引っ張るなよ?」
「黙っていろ音速のパニックが」
「このっ……クソガキ……!!」
二人の口喧嘩を名無しさんは止めずに眺めている。
ソニックがヒーローをやっている事実に、受け止められずにいた。
マントは似合っている。似合っているのだが。
「ま、いっか」
ソニックがヒーローをやっているのには驚いたが、自信満々な性格が変わっていないならいいかと思う。
名無しさんは再び走り始める。
二人は名無しさんに追いつくことはなかった。
追いついたのは、怪人サイタマが拠点としている場所だ。
漆黒の建物。
その雰囲気にジェノスとソニックは、足を震えさせる。
異質だ。まるで、足を踏み入れたら地獄に落ちるような。
それに比べ名無しさんは怒っている顔だ。
「サイタマずるい! こんな大きなアパートに住んでるなんて!! 私が勝ったら貰おうかな」
名無しさんの発言に、二人は震えが止まった。
名無しさんは恐れていない、恐れていないどころか、いつも通りあっけらかんとしている。
そんな名無しさんに安心したのだ。
足を踏み入れる。
「おじゃましまーす。うわ広い!!」
中はとても寒い。とても生き物がいるようには思えなかった。
でもいる。沢山の怪人が。
まるで獲物を狩るように、陰から名無しさんたちを見つめていた。
「さて、どうしよっか。別行動する?」
名無しさんは振り向いて二人に聞いた。
そしてジェノスとソニックは顔を見合わせて言った。
「「どっちが多く怪人を倒せるか勝負だ」」
返答になっていないが、まぁ別行動で良いということだろう。名無しさんが進もうとする。
その瞬間、名無しさんの頭上に怪人が襲い掛かってきた。
反応が遅れたジェノスとソニックが武器を構える。しかし、間に合わない!
だが心配は無用なようだ。名無しさんは拳を頭上にあげている。
傍にはお腹が開いた怪人。
それを合図に、隠れていた怪人が一斉に出てきた。
数は数百を超えるだろう。
「名無しさん先生! ここは俺に任せて先へ」
「名無しさん、死ぬなよ」
「はーい、頑張ってね」
名無しさんは先へ進む。
ジェノスとソニックは怪人を死体へと変えていった。
二人は信じている。名無しさんが必ず怪人サイタマを倒すと。
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