人が一人いなくなったって
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※ハロウィンボロスネタ(閻魔様)
※閻魔知識は諸説あります
別れがあるから、出会いがあるように
夏が来るから、冬が来るように
得るものがあるから、失うものがあるように
この世はプラスマイナスゼロで動いている
例えば、人が一人死んでも世界のどこかで新しい命が産まれる。均等が保たれる
だから――私が死んでも、きっと大丈夫なのだ
「まぁ、行先が地獄だと思ってなかったけれど」
「……何だ、また地球人が来たのか」
目の前に座る巨人、といっても目測で二メートルほどの男が尺を片手に座っている
テーブルの上には巻物が
良く言われる、”閻魔様”という奴だろう
もう一度、その閻魔様とやらを見上げてみる
退紅色の髪に紫苑色の肌。一つしか存在していない目はコバルトグリーンに露草を所々に散りばめたような瞳だ
想像していた閻魔様とは大きく違い、呆気に取られてしまった
「おい聞いているのか貴様」
「あぁ、はい。すみません」
私の知っている、というよりはよく知られている閻魔様といえば深緋色の肌に顎に長い髭を生やした姿ではないだろうか
実物なんて誰も見たことがないし、想像で誰かが書いたものをそれを本物だ、これがそうだ、と勝手に自分で思い込んでいただけ
サンタクロースが親だったという事実に気づいた時の衝撃よりは全然マシだ
「さて、名は何という」
「名無しさんです」
「名無しさん、か。ふむ、名無しさんよ。どういった罪でココへ来たのか……貴様の人生を拝見し、裁判するとしよう」
閻魔は鏡を持ちスクリーンを映し出す
スクリーンに映ったのは全身赤みの肌に頭部に少しばかりの毛
産まれたばかりの赤ちゃんだ
本で読んだことがある。閻魔が持っている鏡は浄玻璃鏡という特殊な鏡で、裁きの者の人生をスクリーンに映すものだ
今、流されているものは私の人生ということになる
不安になるような、ピリリと雷を起こしそうな泣き声をずっとしているのにも関わらず両親たちは幸せそうに私を抱き上げていた
それからも、私が徐々に成長していく過程が流れ続ける
「フム」
自分の人生を、客観的に見ることなんてないし自分自身でも見ていて恥ずかしくなるのに他人に見られているとなると余計に羞恥が募る
もう、裁かなくていいから今すぐこの上映をやめてくれと叫びたいほどだった
しかし、改めて自分の人生を見返してみると特に大きなことをしているわけでもなく、平々凡々な人生で
淡々と一日を終わらしている
正直、私は何故地獄なのかが分からない
確かに嘘はついたことはあるし、ちょっとした悪いこともした。親に、友達にひどいことを言ってしまったこともある
だがそれで地獄行きになるだろうか?
この世界に、嘘もつかず善いことだけをしている生き物などいるのだろうか
もし、その人だけが天国へ行けるのだとしたらその世界は恐ろしいほど静かで退屈なのだろう
比べて、地獄は地獄という枠組みの世界が生き物で埋もれ隙間がないほど密集しているはず
しかし、今いるこの場はそんなことはなかった
スクリーンも終盤
曲がり角で子供を庇い、トラックに押しつぶされた所でこのくだらない上映は終わった
最初から最後まで、閻魔様は肘をつき退屈そうな顔をしていた
「驚くほど平凡で、ありきたりで、退屈で、何の熱もない人生だな。名無しさん」
「まぁ、そうですね」
「だが謎だな。たったあれしきの悪事で、地獄行きになるとは。普通、もっと面白いことをした奴がここに来るはずだが」
「同意です」
閻魔様は机をトントンひと人差し指で叩きながら巻物を見ている
その真剣に裁きを行っている姿は驚いた
どうせ死んでいるのだから、もっと適当に行うものかと思ったが存外、真面目に行っているらしい
こんなことを知っても喋る人などいないが
「……驚いたな。本当に地獄に落ちる理由がない。名無しさん、何故ここに来た?」
「何故って言われましても。逆にこちらが聞きたいのですが」
「フム、考えられることはあれだな……」
「あれ?」
閻魔様は巻物を閉じ、間が長い瞬きをする
大きい目のせいか映画館のシアターを連想させた
コバルトグリーンの目が私を見つめる
「ミス、だろうな」
「はぁ?」
「たまに間違えて地獄に堕ちてくる奴がいるんだ。上の奴のミスでな」
「なる……ほどじゃないですけど。そんなミスのせいで私地獄行なんですか」
仕事をミスするというのは、人間界だけじゃないらしい
こうして私はまたいらぬ知識を手に入れてしまったのである
「まぁ焦るな。このことは報告しておく。とりあえず今は名無しさんの裁きは保留になる」
「となると?」
「おそらく、天国に行けるだろう。ここには面白い奴しか入れん。貴様のような退屈な奴にはさぞかし苦しいだろう。処理には約一週間かかる」
「一週間もですか」
それならばこの一週間、私は何をしていたらいというのか
そして死んでも尚、時間という概念があるのが不思議であった
「フム、そうだな……正式な書類が来るまで俺の手伝いでもしていろ。ここはこの世界では一番安全だ。本来天国に行く奴に傷でもついていたら、うるさい奴らがキャンキャン鳴くからな」
※閻魔知識は諸説あります
別れがあるから、出会いがあるように
夏が来るから、冬が来るように
得るものがあるから、失うものがあるように
この世はプラスマイナスゼロで動いている
例えば、人が一人死んでも世界のどこかで新しい命が産まれる。均等が保たれる
だから――私が死んでも、きっと大丈夫なのだ
「まぁ、行先が地獄だと思ってなかったけれど」
「……何だ、また地球人が来たのか」
目の前に座る巨人、といっても目測で二メートルほどの男が尺を片手に座っている
テーブルの上には巻物が
良く言われる、”閻魔様”という奴だろう
もう一度、その閻魔様とやらを見上げてみる
退紅色の髪に紫苑色の肌。一つしか存在していない目はコバルトグリーンに露草を所々に散りばめたような瞳だ
想像していた閻魔様とは大きく違い、呆気に取られてしまった
「おい聞いているのか貴様」
「あぁ、はい。すみません」
私の知っている、というよりはよく知られている閻魔様といえば深緋色の肌に顎に長い髭を生やした姿ではないだろうか
実物なんて誰も見たことがないし、想像で誰かが書いたものをそれを本物だ、これがそうだ、と勝手に自分で思い込んでいただけ
サンタクロースが親だったという事実に気づいた時の衝撃よりは全然マシだ
「さて、名は何という」
「名無しさんです」
「名無しさん、か。ふむ、名無しさんよ。どういった罪でココへ来たのか……貴様の人生を拝見し、裁判するとしよう」
閻魔は鏡を持ちスクリーンを映し出す
スクリーンに映ったのは全身赤みの肌に頭部に少しばかりの毛
産まれたばかりの赤ちゃんだ
本で読んだことがある。閻魔が持っている鏡は浄玻璃鏡という特殊な鏡で、裁きの者の人生をスクリーンに映すものだ
今、流されているものは私の人生ということになる
不安になるような、ピリリと雷を起こしそうな泣き声をずっとしているのにも関わらず両親たちは幸せそうに私を抱き上げていた
それからも、私が徐々に成長していく過程が流れ続ける
「フム」
自分の人生を、客観的に見ることなんてないし自分自身でも見ていて恥ずかしくなるのに他人に見られているとなると余計に羞恥が募る
もう、裁かなくていいから今すぐこの上映をやめてくれと叫びたいほどだった
しかし、改めて自分の人生を見返してみると特に大きなことをしているわけでもなく、平々凡々な人生で
淡々と一日を終わらしている
正直、私は何故地獄なのかが分からない
確かに嘘はついたことはあるし、ちょっとした悪いこともした。親に、友達にひどいことを言ってしまったこともある
だがそれで地獄行きになるだろうか?
この世界に、嘘もつかず善いことだけをしている生き物などいるのだろうか
もし、その人だけが天国へ行けるのだとしたらその世界は恐ろしいほど静かで退屈なのだろう
比べて、地獄は地獄という枠組みの世界が生き物で埋もれ隙間がないほど密集しているはず
しかし、今いるこの場はそんなことはなかった
スクリーンも終盤
曲がり角で子供を庇い、トラックに押しつぶされた所でこのくだらない上映は終わった
最初から最後まで、閻魔様は肘をつき退屈そうな顔をしていた
「驚くほど平凡で、ありきたりで、退屈で、何の熱もない人生だな。名無しさん」
「まぁ、そうですね」
「だが謎だな。たったあれしきの悪事で、地獄行きになるとは。普通、もっと面白いことをした奴がここに来るはずだが」
「同意です」
閻魔様は机をトントンひと人差し指で叩きながら巻物を見ている
その真剣に裁きを行っている姿は驚いた
どうせ死んでいるのだから、もっと適当に行うものかと思ったが存外、真面目に行っているらしい
こんなことを知っても喋る人などいないが
「……驚いたな。本当に地獄に落ちる理由がない。名無しさん、何故ここに来た?」
「何故って言われましても。逆にこちらが聞きたいのですが」
「フム、考えられることはあれだな……」
「あれ?」
閻魔様は巻物を閉じ、間が長い瞬きをする
大きい目のせいか映画館のシアターを連想させた
コバルトグリーンの目が私を見つめる
「ミス、だろうな」
「はぁ?」
「たまに間違えて地獄に堕ちてくる奴がいるんだ。上の奴のミスでな」
「なる……ほどじゃないですけど。そんなミスのせいで私地獄行なんですか」
仕事をミスするというのは、人間界だけじゃないらしい
こうして私はまたいらぬ知識を手に入れてしまったのである
「まぁ焦るな。このことは報告しておく。とりあえず今は名無しさんの裁きは保留になる」
「となると?」
「おそらく、天国に行けるだろう。ここには面白い奴しか入れん。貴様のような退屈な奴にはさぞかし苦しいだろう。処理には約一週間かかる」
「一週間もですか」
それならばこの一週間、私は何をしていたらいというのか
そして死んでも尚、時間という概念があるのが不思議であった
「フム、そうだな……正式な書類が来るまで俺の手伝いでもしていろ。ここはこの世界では一番安全だ。本来天国に行く奴に傷でもついていたら、うるさい奴らがキャンキャン鳴くからな」
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