夏だ! 海だ!!~その3~
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それからというもの、サバイバル生活は順調であった。
特に困ることもなく過ごしていた。
予想外なことが起きたのは、5日目のことだ。
「ヒィィ……」
桃テリーが病気になった。
主には嘔吐と下痢。
最初は食中毒を疑ったが、他の者は何ともなっていない。食中毒の線は薄かった。
何か食べたか?と聞くと桃テリーは口ごもってしまった。
「正直に言わないと、対処が分からねぇよ」
名無しさんが桃テリーの手を握りながら言う。
彼の辛さを少しでも和らげてあげようと思ってだ。
そんな名無しさんの優しさに、桃テリーは不誠実な態度ができない。
少しづつ昨日のことを話し始めた。
「……お腹が空いてッッ……裏のキノコを食べたでござる……ッッ」
青い顔になる名無しさんとバネヒゲ。
深夜。皆が深い眠りについている時、桃テリーはお腹が空いてしまったらしい。
普段なら、少しの物音がしたら名無しさんは起きていただろう。
しかしサバイバル生活での疲れが、ずっと名無しさんを掴んでいた。
こうして桃テリーは無事、裏にあったキノコの箱を見つけたのだ。
箱のすぐ下には×と書いてあったが、どうせ貯蓄している食材だと思い三つほどキノコを取った。
そしてずっと絶えずに燃やしている焚火で焼いて、食べたのだという。
イアイアンやブルーファイアは「何をやっているんだお前は」と呆れたのだが、名無しさんとバネヒゲは違う。
2人は桃テリーに謝罪をした。
「すまん、ちゃんと伝えてなくて……あれは動物の罠にしようと思ってたやつなんだ……」
「申し訳ございません。私がきちんと印をつけていれば……」
バネヒゲも名無しさんと同じように謝罪している。
ここでは、誰かを悪者にできない雰囲気だ。
「寒い……寒いでござる……」
ガチガチと歯を鳴らし、顔を青ざめていた。
もう既に葉で作った掛け物を3枚ほどかけているが、防寒できていないようだ。
もうギブアップするか? 誰かがカメラに向かってSOSを出そうとした時、
「これ着てくれ」
名無しさんがいつも着ている軍服を脱ぎ始めた。
思わず皆、目を瞑ったり、隠したりして視界を見えないようにした。
まるで女性の裸を見てしまったかのように。
勿論、名無しさんは下にタンクトップを着ているので裸ではないのだが。
「……!」
苦痛に歪んでいた桃テリーの顔が、少しだけ穏やかになったようだ。
歯はもう大人しくなり、ゆっくり寝れるようだ。
「あ、暖かいでござる……感謝……」
そう言って桃テリーはかけられた軍服をギュッと握る。
辛さを手に込めるように。
名無しさんの軍服は特殊なものであった。
簡単な打撃なら吸収し、中々切れない素材で作られている。
しかも身体の熱が一定以下となれば熱を逃がさないようにし、以上になれば熱を外に逃がす。
まさに戦い用に作られた者だ。
その下に着ているタンクトップも似たような作りでできている。
なので名無しさんは軍服を脱いでも特に問題ではない。
問題なのは周囲である。
「(ほそ……)」
スティンガーが思う。
「(筋肉無い……)」
ゲンジが思う。
「(女みたい……)」
イナズマックスが思う。
他の者は顔を赤らめたり、目を隠していた隙間から名無しさんを見たりしていた。
それに気づいた名無しさんはポカン、と皆を見ている。
「ど、どうしたお前ら」
隣にいたバネヒゲが、思わず着ていたジャケットを名無しさんに羽織らせる。
腕や鎖骨が丸見えなその格好は、皆には刺激が強いと思ったから。
名無しさんの頭にはてなマークが3個ほど浮かんでいた。
あのイアイアンも顔が真っ赤である。
ブンブン、と頭を振り顔を冷ます。落ち着け、俺。と心の中で叫ぶ。
そこで一人、名無しさんのタンクトップ姿に冷静な者がいた。
それはオカマイタチだ。
「あらぁん。名無しさんがそうなら私もそうしようかしら」
オカマイタチが服を脱ぎ始める。
そして綺麗な上腕二頭筋が露になった。
名無しさんと並ぶと、名無しさんの身体の小ささが目立っている。
「カマさん……!」
名無しさんは感動した目でオカマイタチを見た。
「貴方一人だけ辛い思いはさせないわ」
いくらタンクトップが特殊な素材でできているとはいえ、腕や首回りは丸出しである。
日中なら陽が出ていて暖かいとはいえ、夜はかなり冷え込む。
しかも名無しさんは外で寝る羽目になっているので、その格好では凍えるほど寒いだろう。
それにここは自然豊かだ。虫に刺されることだって、木の枝で怪我することだってある。
重戦車フンドシや大哲人などの常に全裸と違って、裸に慣れていない名無しさんは危険だ。
誰かが服を一枚貸そうとしても名無しさんの優しさで拒否するだろう。
今だって、ジャケットをバネヒゲに返している。
ならば、こうして一緒の姿になるほうが良いだろう。
オカマイタチのタンクトップ姿を見て、皆は冷静になった。
「そうだな。俺も名無しさんと同じ姿になろう」
イアイアンが鎧を脱いだ。
中は薄い黒タートルネックだが、腕をまくっている。
「しょうがない。俺も漢を見せよう」
ゲンジも鎧を脱ぎだす。
他の服を着ている者たちも脱ぎだした。
これで名無しさんと同じだ。同じ条件で頑張ろうではないか。
スティンガーとイナズマックスはしょんぼりとした顔をしていた。
本当は自分たちも同じく脱ぎたいものだったが、「俺これ脱いだら全裸になっちゃうしな……」「そういえば俺元々タンクトップみたいな服だった」と思い、何もできなかった。
名無しさんが目を潤ませている。
そしてオカマイタチに抱き着いた。
「皆! ありがとう!!」
オカマイタチが、名無しさんの頭に手を乗せる。
感謝の返答に頭を撫でた。
ほとんどの者がタンクトップ姿なことに、タンクトップベジタリアンは感動の涙を流していた。
「皆がタンクトッパーに……!!」
「それは違う」
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