夏だ! 海だ!!~その2~
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料理係はバネヒゲをリーダーとし、お皿にできそうな葉や箸になりそうな物を探していた。
しかしそれはバネヒゲにとって専門外だった。
どのような葉を探せば、箸はどう作るか、など詳しいことは分からない。
一応、作り方自体は事前に調べたがいざ来てみると材料を探す方が大変なのだと、サバイバルの大変さを実感していた。
「おーい、バネヒゲさん!」
困っていたところで、名無しさんがやってきた。
バネヒゲは名無しさんと話し合う。そして名無しさんは顎に手を当て考えた。
「平たい石を皿代わりにするか。石を葉っぱで包めばいいしな。平たい石がなければカマさんの飛空剣で、岩を斬れない?」
「いいわね。やってみるわ」
あと器が欲しい、と桃テリーが要望を出した。
スープを入れたり、水を入れたりしたいのだそう。
「確か海の方向にココナッツがあったよな。あれを綺麗に半分に斬るか。できるよな、桃テリー」
「任せるでござる!」
元気の良い声に名無しさんは微笑む。
そしてバネヒゲと再度話し合う。ご飯はどうするか、献立はどうするか、等々。
どうせ魚と山菜がメインだから、それで基本的に組むと話している。
バネヒゲは頭の中で、魚と山菜のメニューを開きだし必要な調味料を思い出した。
1個だけ好きなものを持ってきていい。バネヒゲは醤油を持ってきていた。
ブルーファイアは砂糖。そして黄金ボールが焼き肉のタレを持ってきていた。
これなら、1週間ぐらいは違うメニューができそうだと考える。
「あとは塩があれば……」
誰も塩は持ってきていない。
塩は万能な調味料で身体に必要だ。誰かが持ってくるだろう、と皆が皆押し付けあった結果である。
しかし我儘は言ってられない。この3つの調味料で何とかするしかない。
そこでブルーファイアが言った。
「作ればいい」
「作るといっても……」
「俺が承る。名無しさん、塩の作り方教えてくれ」
「分かった」
そしてブルーファイアと名無しさんが別行動となる。
喧嘩しなければいいのですが、とバネヒゲは心配だ。
まぁ大丈夫でしょう。と自分の作業に集中した。
「そんなに面倒なのか」
「まぁー確かに根気なんだよな」
エアーが持ってきていた手鍋を回収し、木の枝を集めた。
塩の作り方はシンプルだ。海水をろ過して煮詰める。この繰り返し。
シンプルだからこそ、時間がかかるのだ。
それでもブルーファイアは面倒がる訳でもなく、小鍋に水を汲んできた。
名無しさんは火を起こそうと、木の板と頑丈そうなツルと木の棒で火を起こそうとしている。
「火はこれで付ければいい」
ブルーファイアの手首から覗く銀色の棒。
ここから火が出、戦うのだ。
だからこれで火を付ければいい。一番早く効率良い。
しかし名無しさんは木を擦り合わせている。
話を聞いていない名無しさんに、ブルーファイアは怒りの筋を額に作った。
「いや、それは取っておいたほうがいい」
「どうしてだ」
「雨が降った時に使ってほしいからな。それに、俺らが怪人を倒すけど間に合わない場合可能性も十分にあり得る。その時のために取っておいたほうがいいだろ」
「……なるほど」
ブルーファイアは大人しく名無しさんの隣に座った。
そして煙が出てきたところを、ブルーファイアが息を吹き掛ける。
火種をすぐさま、木の間に置く。
あっという間に、小さな焚き火ができた。
火が着くのが当たり前のように、簡単にできた。
よく漫画では火をつけるのは大変な描写がある。しかしあれはフェイクなのだな、とブルーファイアは思った。
しかし名無しさんは驚いている。
「すげぇ。一発で成功した」
「?。そんな驚くことか?」
「一人だと日暮れまでかかったんだよな。ありがとな!」
いつも会えば喧嘩する2人は、喧嘩しない。
それどころか息を合わせて火をつけることができた。
2人は暫く火を眺めていた。これから一週間どのような生活になるのか、食べ物は取れるだろうか、天気が悪くなったらどうしよう。そんな不安を、火にくべるように。
不安は意欲を無くす。意欲が無くなれば集中力が下がる。集中力が下がれば何も上手くいかなくなる。
不安はなるべく少ない方がいい。
ブルーファイアは名無しさんの方をチラリと見てみる。
すると口には薄く笑顔があった。
「どうしてこの状況で笑っていられる?」
思ったことをすぐ口に言うのが、ブルーファイアの良いところであり、悪いところ。
名無しさんは手で口を隠す。
「悪い。笑ってたか」
申し訳なさそうに笑った。
その姿を見てブルーファイアは一瞬言葉に詰まってしまう。
悪いことを聞いてしまったか? 気まずくなってしまい視線を名無しさんから火へと移した。
そんなブルーファイアの気持ちを汲み取ったのか、名無しさんは笑っていた理由を話す。
「勿論、不安もあるぜ? けど、それ以上に皆と一緒に必死で頑張るのが楽しみなんだ」
確かにこうして、A級が揃うのは珍しいことだった。
年に2-3回ほど集められて会議するぐらいだろうか。
怪人が出た際だってA級数名で向かうし、皆で怪人を討伐することはない。
だから、この企画を承諾したのだ。
だから、楽しそうなのだ。
ブルーファイアはまた名無しさんを見る。
笑顔の意味が分かって、今度はこちらも少し楽しみな気持ちになった。
どんなご飯が食べられるのか、どんな生活になるのか。
ブルーファイアも自然と笑った。
「楽しいものになるといいな」
ブルーファイアの言葉に名無しさんは満面の笑みとなる。
その笑顔は肯定だ。
小鍋を火の上へと置き煮詰めていく。
「じゃあ、俺行くな」
「あぁ」
これは喧嘩している暇はないな、とブルーファイアは思う。
しかし数日後に大喧嘩するのは2人はまだ知らない。
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