貴方の存在はまるで呪いのよう
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※人が死ぬ
真っ白な空間が俺の世界だった
同じ顔をした人間に観察され実験され、その繰り返しの日々は俺にとっては当たり前で
そんな人生を悲劇だとは思わない
この人生を変えてくれたのは、いつ頃入ってきたのかは覚えていないが、ジーナスの助手も名無しさんだ
白衣を着ているとこは変わらないが、ふわりとたなびく髪や自分やジーナスより華奢な身体、柔らかい笑顔
何より、温かい手をよく覚えている
名無しさんは俺に色々なことを教えてくれた
歌や本や、言葉
……俺に世界を与えてくれたも同然
当然、名無しさんのことを好いていた
人間としても、異性としても
名無しさんと色々な世界を見たい
この建物なんかより、高い、高い建物
空よりも青い海
色とりどりな地いっぱいの花
そんな世界が、本にしかないような世界が現実にもあると名無しさんは言う
その顔は悲しげではあったが
ひょっとすると、名無しさんも見たことないのかもしれない
夢に溢れた世界を
だから、俺は研究所を壊し外へ出た
名無しさんを探して探して――だが見つからなかった
殺してしまったかもしれない
即座に頭に思い浮かんだのは、こうであった
何年瓦礫をどかし続けたのか覚えていない
ただ、彼女が見つからなく何度も何度もナイフで首を掻っ切った痛みは覚えている
名無しさんのおかげで、一般常識を持っていた俺はヒーローになることができた
こんな、死ねない体を持って活用できるのはヒーローをやり、それなりに知名度が上がればもしかして生きている名無しさんの耳に届くかもしれない
そう思っていたのだが
知名度を上げなくとも、大丈夫だったようだ
「名無しさん……?」
「ゾ、ゾンビ……マン……!!」
数十年の間、久しぶりの名無しさんは大分歳を老いているがその顔は忘れるはずがない
名無しさんはヒーロー協会で働いていた
劇的な再会
名無しさんはとっくのとうに世界へ出て、あの忌まわしい研究者から逃れ、平和に暮らしているとは!
名無しさんが生きていた、というだけではなく普通に生活していることがとても嬉しかった
そんな日々は長く続かなかったようだが
俺の、せいで
名無しさんは俺だと認識できた途端、目の前に恐ろしい怪人が現れたかのような悲鳴を上げた
「殺される殺される殺される殺される!!私、あいつに殺されるわ!!」
あぁ、あの研究者の呪縛は解かれないままなのだ
名無しさんは、外へ出なくなったそうだ
仕事があろうが、怪人が出ようが関係ない
医者も困り果てているようだ
俺は協会に過去のことを話し、名無しさんにも伝えてくれたそうだが耳に入らないらしい
ずっと、ずっと、俺に殺されると信じて疑わない
「私は彼にあんなひどいことをしたのよ!!許されるはずないわ!!きっと惨く、残忍に、殺すに決まってる!!」
きっと罪悪感があったのだ
人体実験をすることに。俺を――閉じ込め、実験していたことに
それが悪いことだと、残酷なことだと知ったのは外に出てからであるしそもそも名無しさんのことは一切恨んでいない
むしろ名無しさんには感謝しても、しきれないぐらいだ
俺に世界を与え今この場にいるのは名無しさんのおかげ
名無しさんに、直接本音を言ったこともある
壊れてしまいそうな体を抱きしめ、想いが伝わるように
「嘘!!嘘よ!!殺したいほど私を憎んでいるんでしょう!?嫌、嫌、嫌ァァァァァァ!!!」
痛みには、慣れていたと思ったが、
これはとても、痛いのはなんでだろうか
手足が吹っ飛ばされるより、身体半分が溶かされたりするよ痛い
震えながら包丁から手を離し、名無しさんは後ずさりする
やがて座り込み、金切り声で喚き始めた
俺には、名無しさんを救ってやれない
それだけが理解できたことだ
俺という存在がいる限り、名無しさんは決して死の恐怖から逃れられない
だが、俺がこの世からいなくなることもできない
どうすれば、名無しさんを救えるのだろう?
どうすれば、名無しさんを死の恐怖の呪いから助けてあげられるだろう
名無しさんに恩返しがしたかった
俺を人間にしてくれて、人間のままにしてくれて
名無しさんを助けたかった
だから、俺は
「――……ァ」
名無しさんを、殺した
これでもう名無しさんは死の呪いから解かれたのだ
もう怖がることはない
名無しさんの顔が柔らかく、前に見た笑顔に見えたのは俺の思い込みだろうか
真っ白な空間が俺の世界だった
同じ顔をした人間に観察され実験され、その繰り返しの日々は俺にとっては当たり前で
そんな人生を悲劇だとは思わない
この人生を変えてくれたのは、いつ頃入ってきたのかは覚えていないが、ジーナスの助手も名無しさんだ
白衣を着ているとこは変わらないが、ふわりとたなびく髪や自分やジーナスより華奢な身体、柔らかい笑顔
何より、温かい手をよく覚えている
名無しさんは俺に色々なことを教えてくれた
歌や本や、言葉
……俺に世界を与えてくれたも同然
当然、名無しさんのことを好いていた
人間としても、異性としても
名無しさんと色々な世界を見たい
この建物なんかより、高い、高い建物
空よりも青い海
色とりどりな地いっぱいの花
そんな世界が、本にしかないような世界が現実にもあると名無しさんは言う
その顔は悲しげではあったが
ひょっとすると、名無しさんも見たことないのかもしれない
夢に溢れた世界を
だから、俺は研究所を壊し外へ出た
名無しさんを探して探して――だが見つからなかった
殺してしまったかもしれない
即座に頭に思い浮かんだのは、こうであった
何年瓦礫をどかし続けたのか覚えていない
ただ、彼女が見つからなく何度も何度もナイフで首を掻っ切った痛みは覚えている
名無しさんのおかげで、一般常識を持っていた俺はヒーローになることができた
こんな、死ねない体を持って活用できるのはヒーローをやり、それなりに知名度が上がればもしかして生きている名無しさんの耳に届くかもしれない
そう思っていたのだが
知名度を上げなくとも、大丈夫だったようだ
「名無しさん……?」
「ゾ、ゾンビ……マン……!!」
数十年の間、久しぶりの名無しさんは大分歳を老いているがその顔は忘れるはずがない
名無しさんはヒーロー協会で働いていた
劇的な再会
名無しさんはとっくのとうに世界へ出て、あの忌まわしい研究者から逃れ、平和に暮らしているとは!
名無しさんが生きていた、というだけではなく普通に生活していることがとても嬉しかった
そんな日々は長く続かなかったようだが
俺の、せいで
名無しさんは俺だと認識できた途端、目の前に恐ろしい怪人が現れたかのような悲鳴を上げた
「殺される殺される殺される殺される!!私、あいつに殺されるわ!!」
あぁ、あの研究者の呪縛は解かれないままなのだ
名無しさんは、外へ出なくなったそうだ
仕事があろうが、怪人が出ようが関係ない
医者も困り果てているようだ
俺は協会に過去のことを話し、名無しさんにも伝えてくれたそうだが耳に入らないらしい
ずっと、ずっと、俺に殺されると信じて疑わない
「私は彼にあんなひどいことをしたのよ!!許されるはずないわ!!きっと惨く、残忍に、殺すに決まってる!!」
きっと罪悪感があったのだ
人体実験をすることに。俺を――閉じ込め、実験していたことに
それが悪いことだと、残酷なことだと知ったのは外に出てからであるしそもそも名無しさんのことは一切恨んでいない
むしろ名無しさんには感謝しても、しきれないぐらいだ
俺に世界を与え今この場にいるのは名無しさんのおかげ
名無しさんに、直接本音を言ったこともある
壊れてしまいそうな体を抱きしめ、想いが伝わるように
「嘘!!嘘よ!!殺したいほど私を憎んでいるんでしょう!?嫌、嫌、嫌ァァァァァァ!!!」
痛みには、慣れていたと思ったが、
これはとても、痛いのはなんでだろうか
手足が吹っ飛ばされるより、身体半分が溶かされたりするよ痛い
震えながら包丁から手を離し、名無しさんは後ずさりする
やがて座り込み、金切り声で喚き始めた
俺には、名無しさんを救ってやれない
それだけが理解できたことだ
俺という存在がいる限り、名無しさんは決して死の恐怖から逃れられない
だが、俺がこの世からいなくなることもできない
どうすれば、名無しさんを救えるのだろう?
どうすれば、名無しさんを死の恐怖の呪いから助けてあげられるだろう
名無しさんに恩返しがしたかった
俺を人間にしてくれて、人間のままにしてくれて
名無しさんを助けたかった
だから、俺は
「――……ァ」
名無しさんを、殺した
これでもう名無しさんは死の呪いから解かれたのだ
もう怖がることはない
名無しさんの顔が柔らかく、前に見た笑顔に見えたのは俺の思い込みだろうか
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