君には笑顔が足りないな もっと笑いなよ!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※人が死ぬ
ザクッ。ザシュッ
そんな、切り裂くような音がかすかにガロウの耳に届いた
太陽は沈んだが、減らない人々といつまでも灯る光のせいで月は主役ではない夜のことであった
何度か聞いたことのある音にガロウはもう一度耳を澄ませる
ザシュッ
持っている携帯にしか集中がいかない周りはその音には気づいていないようだ
音の方向へガロウは出向く
ビルとビルの隙間はお店の光も月の光も届かぬ場所
だが、数多の自己トレーニングと元からある才能のおかげで視野に支障は特にはなかった
だから、はっきりと見えてしまった。見てしまったのだ
コンクリートに広がり鮮やかな赤い血の池を
瞳孔を開きながら笑う人間であったものを
それを見下ろす女の姿を
「……!」
ガロウは呼吸の代わりに固唾を飲み込む
あまりにも悲惨で、非現実的な光景をまだ脳が処理しきれていなかったのだ
女がガロウに気づいたようでそちらに首を向けた
ーー笑って、いる?
「ッに、しがるテメェ」
「あれれ避けたの?やるねぇ君」
眼前に突き出されたナイフを避けた
身体が脳に訴えかけたかのようだった。「死ぬぞ」と
ガロウは構えながらもう一度女を見た
先ほど、笑っているかのように見えた顔は実は笑ってなどいない
裂けたかのような傷があるだけであった
おかげで、女が少し歯を見せただけでも笑ったかのようだ
女はナイフでガロウを追う
服が切れる。髪の毛が数本、切られる
中々の身のこなしのようだが、既に動きを見切ったガロウの敵ではない
ガロウの拳が女の水落に入り、口の端を上げた
なんだ、ただのイカれた殺人鬼か
「アハ!アハハハハハハハ!!ハハハハハ!!」
涎を垂らし腹を抑える女に片眉を上げる
おいおいこいつは本当にイッちまってるぜ。と内心で恐怖に似た何かを抱いた
「君!君!本当に強いねぇ」
いつのまにか、女の両手にナイフが握られている
先ほどとは違いノコギリのようなナイフだ
「まだやる気かぁ?いいぜ、叩きのめしてやるよ」
特にこの殺人鬼と戦う理由もないが、生かしておく理由もなかった
ランクで言えばA級中盤あたりぐらいだろうか。彼女も自分の栄養、すなわち強くなるために利用させてもらおうと思ったのだ
女は少しガロウの目を見つめていたが、やがてナイフをしまう
ガロウは思わず間抜けな声を出してしまった
「フフ。フ、フフ。別に殺してもいいけど今日の殺人限度数超えちゃうからなぁ。やめとく」
「あ?何言ってんだ。イカれ殺人鬼」
「んんっんー。んー。私だって別に無差別に殺してるけじゃない。性欲が我慢できなくなって殺してるわけじゃない。そんなに、馬鹿じゃない」
まるで、人間じゃない何かと喋っているようだ
喋る石像や絵画、そういったファンタジーの世界と会話をしているようでどこかもどかしい気持ちとなる
本当にこの女が現実の人物なのか確かめたくなるほどだ
「なんていうの、君」
「テメェなんかに教える義理はねぇよ」
「私?私は名無しさん。名無しさん。素敵なお名前でしょ。でももう一つ名前があるの。”スマイリー”っていうの。素敵でしょ」
スマイリー。笑顔、という意味だ
もし自分でそう名付けたのなら、その傷を皮肉っているのか
なんて、頭のおかしいやつだ。こちらも狂ってしまいそうであった
「アハ、アハハハ!またね、少年」
隙だらけの背中をガロウは追うことはしなかった
構えていた拳を下ろしただけである
フゥ、と一息吐いた
はたして今の出来事が現実なのか夢だったのか、足元に転がる死体がなければ分らなくなるとこであった
死体を見た
スーツに綺麗なネクタイをしている。ごく一般のサラリーマンだろう
先ほど笑っていると思った死体の顔は、笑ってなどいない。裂かれているだけだ
改めてあの女、名無しさんの異常さを見たようだ
「……ん。スマイリー……?もしかして、あれか」
よくニュースキャスターが口にする連続殺人鬼だと今更になって気づいた
"スマイリー”
その名は噂でついたものであった。みんなが自分のことをそう言うので名無しさんもその名を使うことにした
噂、というのも彼女の姿を見たものはいない。見れた者はあの世へのお土産となってしまうのだ
いつも、口から耳までナイフで裂き笑っているような痕を死体に残す
スマイリーと言われる所以だ
数年前に突然現れ、もう殺した人数はニュースキャスターでも覚えていないだろう
もはや、都市伝説と言っても過言ではないのかもしれない
ガロウはそんな都市伝説に、二度目の再開を果たす
汚れていたTシャツを更に赤く汚しながら怪人を滅多刺しにする名無しさんは砂場で遊ぶ子供のようだ
「あれ、あれれれ。昨日の」
「あ?なんだよ。オメーかよ」
「どうしてこんなところにいるの、ガロウ君」
ガロウを見つけた瞬間、遊んでいた玩具を投げ捨てるように口の中にあてていたナイフを外へ露出した
細かい血の飛沫が飛ぶ
怪人は既に息絶えてたようだ
「ここを通ったら近道なんだよ」
「ふぅ。そっか。そっか。では、どうぞ」
「ここはオメーの道じゃねーだろうが」
そこで、ふと気づく
俺はこの女に名前を名乗ったか?と
ガロウの眉を上げた仕草で、心中を読んだかのように名無しさんはにんまりと笑った。傷のせいで大笑いしてるみたいだ
「尾けてたんだけど、ふふ、ガロウ君全然気づいてないんだもん」
この俺が?尾けられてた?しかもそれに気づかず次の日を迎えた
おいおい嘘だろ!
自分自身を馬鹿にするように心の中で笑ったのと同時に、不快感とは違う、もっとどろりとした舌で心臓を舐められたかのような気分となる
本気を出さずとも、勝てる相手のように思う
けど、何故こんなにも近づきたくないと感じるのか。さっさと足を動かしたかった
しかし尾けられてたという事を素直に認められないガロウは自ら質問をぶつける
「どうして俺を尾けてた?おもしれーもんなんか何もないだろ」
「興味があったから?かな?うん、そうだ、興味があったから」
「殺人鬼のお前が俺なんかに興味ねぇ。ありがてぇありがてぇ。……で、殺し損ねた獲物ってわけだろ?いいぜかかってこいよ」
大量の殺人鬼が何故捕まらないのか
答えはガロウでも分かるほど単純明快ーー見た者は殺すから
腰を落とし構える。足をつけているアスファルトに亀裂が入った
勝てないことはない。だが、油断はできない相手
殺人鬼を倒すだなんて、ヒーローくさいことまっぴらごめんだが、自分の命が狙われているのなら話は別である
「ははは!やだなガロウ君。戦う気なんてないよ。ほら」
持っていたナイフを、怪人にまるで針山に刺すかのように刺した
「あ?」
「興味があるって、言ったじゃん。ふむふむ、実に、面白い。君は、面白いよ」
ケタケタ笑う名無しさんに、戦おうとしていた自分が阿呆らしくなり構えを下ろす
代わりにその奇妙さに顔の中心に力が入った
視線で人が殺せそうだ
面白い、とは本来なら誉め言葉として使われることが多いが、この場合悪口に聞こえてしまう
「ガロウ君、君は強いね。そこが第一だ。多分私じゃ殺せない。第二に、君は私が人を殺してたのにどうもしなかった。警察にも通報しなければ、騒ぐ様子もない。私に怯えることもしない。ンフフ、今までそんな人はいなかった」
女は常に笑うことをやめなかった
”スマイリー”とは傷のことだけではないのかもしれない
同じようなヒーロー名の奴とは真反対だな、と心の中だけで呟いた
そして存在を忘れられてた、怪人を指さした
「怪人も殺すのかよ」
「んー?あぁ」
先ほどまで怪人を滅多刺しにしていたことを本気で忘れていたようで、ガロウが指さした先を見て眉を少し上にあげた
ニンマリ。そう笑うと傷痕が耳にも届きそうである
コクリ、と頷く
世の中は、大きく分けて二種類の生き物がいる
勝者と敗者
そしてそのあとに続いて分けれれるのが、人間と怪人ではないだろうか
しかしこの名無しさんはどちらにも属していない異質な存在なことはガロウにもわかっていた
「テメェは……どっちだ?」
「んー?」
「だから、」
言葉の続きをまるで代わりのように、パトカーのサイレンが響き渡る
ガロウが舌打ちをして名無しさんへ向き直ると、名無しさんは既に遠くへいた
「また、今度教えてあげるよガロウ君」
そう叫んで消えていった
ザクッ。ザシュッ
そんな、切り裂くような音がかすかにガロウの耳に届いた
太陽は沈んだが、減らない人々といつまでも灯る光のせいで月は主役ではない夜のことであった
何度か聞いたことのある音にガロウはもう一度耳を澄ませる
ザシュッ
持っている携帯にしか集中がいかない周りはその音には気づいていないようだ
音の方向へガロウは出向く
ビルとビルの隙間はお店の光も月の光も届かぬ場所
だが、数多の自己トレーニングと元からある才能のおかげで視野に支障は特にはなかった
だから、はっきりと見えてしまった。見てしまったのだ
コンクリートに広がり鮮やかな赤い血の池を
瞳孔を開きながら笑う人間であったものを
それを見下ろす女の姿を
「……!」
ガロウは呼吸の代わりに固唾を飲み込む
あまりにも悲惨で、非現実的な光景をまだ脳が処理しきれていなかったのだ
女がガロウに気づいたようでそちらに首を向けた
ーー笑って、いる?
「ッに、しがるテメェ」
「あれれ避けたの?やるねぇ君」
眼前に突き出されたナイフを避けた
身体が脳に訴えかけたかのようだった。「死ぬぞ」と
ガロウは構えながらもう一度女を見た
先ほど、笑っているかのように見えた顔は実は笑ってなどいない
裂けたかのような傷があるだけであった
おかげで、女が少し歯を見せただけでも笑ったかのようだ
女はナイフでガロウを追う
服が切れる。髪の毛が数本、切られる
中々の身のこなしのようだが、既に動きを見切ったガロウの敵ではない
ガロウの拳が女の水落に入り、口の端を上げた
なんだ、ただのイカれた殺人鬼か
「アハ!アハハハハハハハ!!ハハハハハ!!」
涎を垂らし腹を抑える女に片眉を上げる
おいおいこいつは本当にイッちまってるぜ。と内心で恐怖に似た何かを抱いた
「君!君!本当に強いねぇ」
いつのまにか、女の両手にナイフが握られている
先ほどとは違いノコギリのようなナイフだ
「まだやる気かぁ?いいぜ、叩きのめしてやるよ」
特にこの殺人鬼と戦う理由もないが、生かしておく理由もなかった
ランクで言えばA級中盤あたりぐらいだろうか。彼女も自分の栄養、すなわち強くなるために利用させてもらおうと思ったのだ
女は少しガロウの目を見つめていたが、やがてナイフをしまう
ガロウは思わず間抜けな声を出してしまった
「フフ。フ、フフ。別に殺してもいいけど今日の殺人限度数超えちゃうからなぁ。やめとく」
「あ?何言ってんだ。イカれ殺人鬼」
「んんっんー。んー。私だって別に無差別に殺してるけじゃない。性欲が我慢できなくなって殺してるわけじゃない。そんなに、馬鹿じゃない」
まるで、人間じゃない何かと喋っているようだ
喋る石像や絵画、そういったファンタジーの世界と会話をしているようでどこかもどかしい気持ちとなる
本当にこの女が現実の人物なのか確かめたくなるほどだ
「なんていうの、君」
「テメェなんかに教える義理はねぇよ」
「私?私は名無しさん。名無しさん。素敵なお名前でしょ。でももう一つ名前があるの。”スマイリー”っていうの。素敵でしょ」
スマイリー。笑顔、という意味だ
もし自分でそう名付けたのなら、その傷を皮肉っているのか
なんて、頭のおかしいやつだ。こちらも狂ってしまいそうであった
「アハ、アハハハ!またね、少年」
隙だらけの背中をガロウは追うことはしなかった
構えていた拳を下ろしただけである
フゥ、と一息吐いた
はたして今の出来事が現実なのか夢だったのか、足元に転がる死体がなければ分らなくなるとこであった
死体を見た
スーツに綺麗なネクタイをしている。ごく一般のサラリーマンだろう
先ほど笑っていると思った死体の顔は、笑ってなどいない。裂かれているだけだ
改めてあの女、名無しさんの異常さを見たようだ
「……ん。スマイリー……?もしかして、あれか」
よくニュースキャスターが口にする連続殺人鬼だと今更になって気づいた
"スマイリー”
その名は噂でついたものであった。みんなが自分のことをそう言うので名無しさんもその名を使うことにした
噂、というのも彼女の姿を見たものはいない。見れた者はあの世へのお土産となってしまうのだ
いつも、口から耳までナイフで裂き笑っているような痕を死体に残す
スマイリーと言われる所以だ
数年前に突然現れ、もう殺した人数はニュースキャスターでも覚えていないだろう
もはや、都市伝説と言っても過言ではないのかもしれない
ガロウはそんな都市伝説に、二度目の再開を果たす
汚れていたTシャツを更に赤く汚しながら怪人を滅多刺しにする名無しさんは砂場で遊ぶ子供のようだ
「あれ、あれれれ。昨日の」
「あ?なんだよ。オメーかよ」
「どうしてこんなところにいるの、ガロウ君」
ガロウを見つけた瞬間、遊んでいた玩具を投げ捨てるように口の中にあてていたナイフを外へ露出した
細かい血の飛沫が飛ぶ
怪人は既に息絶えてたようだ
「ここを通ったら近道なんだよ」
「ふぅ。そっか。そっか。では、どうぞ」
「ここはオメーの道じゃねーだろうが」
そこで、ふと気づく
俺はこの女に名前を名乗ったか?と
ガロウの眉を上げた仕草で、心中を読んだかのように名無しさんはにんまりと笑った。傷のせいで大笑いしてるみたいだ
「尾けてたんだけど、ふふ、ガロウ君全然気づいてないんだもん」
この俺が?尾けられてた?しかもそれに気づかず次の日を迎えた
おいおい嘘だろ!
自分自身を馬鹿にするように心の中で笑ったのと同時に、不快感とは違う、もっとどろりとした舌で心臓を舐められたかのような気分となる
本気を出さずとも、勝てる相手のように思う
けど、何故こんなにも近づきたくないと感じるのか。さっさと足を動かしたかった
しかし尾けられてたという事を素直に認められないガロウは自ら質問をぶつける
「どうして俺を尾けてた?おもしれーもんなんか何もないだろ」
「興味があったから?かな?うん、そうだ、興味があったから」
「殺人鬼のお前が俺なんかに興味ねぇ。ありがてぇありがてぇ。……で、殺し損ねた獲物ってわけだろ?いいぜかかってこいよ」
大量の殺人鬼が何故捕まらないのか
答えはガロウでも分かるほど単純明快ーー見た者は殺すから
腰を落とし構える。足をつけているアスファルトに亀裂が入った
勝てないことはない。だが、油断はできない相手
殺人鬼を倒すだなんて、ヒーローくさいことまっぴらごめんだが、自分の命が狙われているのなら話は別である
「ははは!やだなガロウ君。戦う気なんてないよ。ほら」
持っていたナイフを、怪人にまるで針山に刺すかのように刺した
「あ?」
「興味があるって、言ったじゃん。ふむふむ、実に、面白い。君は、面白いよ」
ケタケタ笑う名無しさんに、戦おうとしていた自分が阿呆らしくなり構えを下ろす
代わりにその奇妙さに顔の中心に力が入った
視線で人が殺せそうだ
面白い、とは本来なら誉め言葉として使われることが多いが、この場合悪口に聞こえてしまう
「ガロウ君、君は強いね。そこが第一だ。多分私じゃ殺せない。第二に、君は私が人を殺してたのにどうもしなかった。警察にも通報しなければ、騒ぐ様子もない。私に怯えることもしない。ンフフ、今までそんな人はいなかった」
女は常に笑うことをやめなかった
”スマイリー”とは傷のことだけではないのかもしれない
同じようなヒーロー名の奴とは真反対だな、と心の中だけで呟いた
そして存在を忘れられてた、怪人を指さした
「怪人も殺すのかよ」
「んー?あぁ」
先ほどまで怪人を滅多刺しにしていたことを本気で忘れていたようで、ガロウが指さした先を見て眉を少し上にあげた
ニンマリ。そう笑うと傷痕が耳にも届きそうである
コクリ、と頷く
世の中は、大きく分けて二種類の生き物がいる
勝者と敗者
そしてそのあとに続いて分けれれるのが、人間と怪人ではないだろうか
しかしこの名無しさんはどちらにも属していない異質な存在なことはガロウにもわかっていた
「テメェは……どっちだ?」
「んー?」
「だから、」
言葉の続きをまるで代わりのように、パトカーのサイレンが響き渡る
ガロウが舌打ちをして名無しさんへ向き直ると、名無しさんは既に遠くへいた
「また、今度教えてあげるよガロウ君」
そう叫んで消えていった
1/3ページ