今日を呪って生きていくのは辛いから
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
未来が見えなくなって
過去の絶望が毎日纏わりつき
今日を倦怠感と劣等感を抱きながら生きる
毎日を名無しさんはそんな風に過ごしていた
周りからの期待のプレッシャー。それに応えられなく自己険悪
いつのまにか外に出るのが怖く、人すら恐怖し全てを拒絶していた
今日も布団の中で、惨めに縮こまる
親は大変心配してくれていた
けれどこんな自分を見せたくなくって。あまりにも、情けなさすぎて
一歩。たった一歩踏み出せればどれだけ楽だろう
今日もそんなことができず、朝を迎える
死にたいと、何度も願った
死のうと、何度も決意した
その決意がーー今日、実行されようとしていたのだ
両親はどちらも仕事で家にいない
暗い部屋の机に、これまでの感謝と謝罪を書きなぐった手紙と頑丈そうな縄
最後に、最後に
名無しさんが手に取ったものはテレビのリモコンであった
自ら遮断してしまった世界が今どんな風になっているのか、最後に知ってから死のうと思ったのだ
テレビをつける
真剣な顔つきのアナウンサーが、見えない相手に訴えかけていた
「嘘……」
唇を動かしただけかのような声で呟く
怪人がこの市にいるらしい。災害レベル鬼
画面が切り替わり映し出された場所はもうここから近かった
逃げる様子もなく、慌てた様子もなく名無しさんはテレビを見続けた
あぁなんだ。自分でやる必要がないのかな
そう思うだけであった
災害レベル鬼の怪人はコンクリートを花吹雪のように舞散らしながら近づいてきているようだ
思えば、轟音が響いている
名無しさんは立ち上がりベットへ向かう
もうこのまま眠ってしまおう
明日を迎えることなく寝れるのだ
名無しさんは何だか、スッキリとした気持ちだ
重い枷が取れたかのような、明日に希望を見出したかのような面持ちである
両親が、心配であったがでもまぁきっと避難所へ逃げていることだろう
凄まじい破壊音が、近い
「おやすみなさい」
誰に言ったのかわからないがハッキリとした声でいう
ここにいない両親にだろうか。自分自身にだろうか
ベットに入ろうと、足をかけた瞬間である
明るい眩い光が、部屋全体に入ってくる
「ってぇ~……ちくしょう、マント新調したばっかだってのに!」
「……!!?」
部屋に壁をぶち壊して入ってきた人物は、あまりにも現実的ではなさすぎてもうここがあの世だとさえ思ってしまった
ツルリとした綺麗な頭部に、黄色のスーツ
部屋には、家の破片があちらこちらに大きさもまばらに転がっている
「あ?おいおいまだ避難してねーやついたのかよ。早く行けよ、危ねーぞ」
「え、あ、」
久しぶりの人に、上手く言葉が出てこない。理由はそれだけではないが
あまりの驚きと久々に浴びた外の光に身体が動かない。硬直してしまったようだ
「動けないのか?仕方ねーな」
「!!」
こちらが何も言えないまま動けないままされるがまま、ヒーローサイタマは名無しさんを抱きかかえた
そのままぶち壊された壁から外へ出る
ここは二階なのに!と頭で思うだけで声帯は機能などしない
久しぶりに肺に取り入れる外の空気は清々しいものであった
「……!」
「大丈夫かー?」
いきなりの自宅破壊に侵入者、強制的な外出
いきなりの出来事に決して大丈夫などではなかったが、名無しさんは頷くことしかできない
それに、何年振りだろう。人肌をこんなに間近で触れるのは
こんなに、温かかっただろうか
そして、外はこんなにも眩しかっただろうか
気づけばそこは避難所である
「じゃあな。気を付けろよ。俺はあいつを倒してくるからよ」
待って!たった、たったこんなことも言えなかった
膝が笑い腰が抜け動けない
恐怖などではなく、驚きの連続で体と脳が耐えきれなくなったのだろう
「名無しさん!」
「名無しさん大丈夫か!?あぁ……良かった……良かった……!!」
後ろからの声が両親だと気づくのは、数秒経ってからであった
1/2ページ