そうだ、焼却しよう。目の前でイチャつくリア充を
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波が押し出される心地いい音が人工的に作られた鼓膜へ届く
人間をやめ、サイボーグとなった身でも人間だったころみたいに音を、味覚を、視覚を楽しめることは大変感謝だ
これもきっとクセーノ博士の気遣いなのだろう
これほどのご恩をどう返したらいいものか
「あ、ジェノス君またここにいたんだ」
後ろから声がしたので振り返ってみると、潮風で乱れる髪を押さえながら駆け寄ってきた
「名無しさんさん」
「もうご飯だよ。家に戻ろうか」
「はい。わざわざありがとうございます」
気にしなくていいよ、と言っているように微笑む名無しさんさんに俺も自然と口角が上がる
さっきまで考えたことを波へ流すように頭の端にやり名無しさんさんと歩き出す
今日の晩御飯はなんだろうか
そんな他愛もない話から楽しそうな名無しさんさんの声と波の音は自分を人間に戻してくれそうな錯覚に陥りそうだった
狂サイボーグへ復讐するために町を転々と回っていたがそれらしい痕跡が見当たらなかったが、遂に手がかりがあるかもしれない町へたどり着いた
海が綺麗で太陽が反射し光っている町だった
その頃は潮の匂いがきつかったな
少し調べてやはり狂サイボークはここの町に関係があるのかもしれない
そう思った俺はここへしばらく滞在することにした
そこで出会ったのが名無しさんさんだった
名無しさんさんは暴力を振るってくる父親、助けてくれない母親から逃げてここへ来たらしい
身寄りがない俺を家へ招待してくれて、食事までごちそうになって
少しだけ俺の事情を話すと名無しさんさんはここに目的が済むまで利用してくれても構わない、とまで言った
よく出会ったばかりの奴にここまでできるのか
少しの警戒心を持ちながらお言葉に甘えることにした
俺も俺であまり余計な金は使いたくなかったから丁度いい
今思えば名無しさんさんの性格からして見ず知らずの他人にここまでしてしまうのも納得している
二人で過ごす一日一日で名無しさんさんを知れるのが嬉しいと自覚し始めた時に俺はこの人に恋心を抱いているのだとわかった
曲がりにも十代だ。こんな素敵な女性が近くにいたら落ちてしまうのも仕方ない
「ジェノス君おかわりいる?」
「お願いします」
「よく食べるね~。私嬉しいよ!」
あぁなんて幸せなのだろう
毎日が楽しくて、充実していて
もしこれが映画だったのならこの先信じられないような不幸がきてしまうのではと思ってしまう
でもそんなことを考えてるのがバカバカしくなるくらいに何不自由なく暮らしていた
これが復讐を誓った身がする生活だとは笑ってしまう
そんな気持ちを消すようによそってもらったばかりのシチューを口へ含んだ
噛む前にほろっとじゃがいもが崩れる
数回租借してから飲み込んだ
ふと名無しさんさんがこちらを見ていることに気づいた
「・・・俺の顔に何かついてますか?」
「へっ。あ、あぁぁごめんね!!」
どうやら俺を見つめていたことは無意識だったらしく慌てて視線を逸らし顔を真っ赤にさせている
「あの、その、違うの。ごごごごめんね気持ち悪かったよね」
必死で言い訳をする名無しさんさんがかわいくてかわいくて思わず笑ってしまった
それについても恥ずかしくなったのか、ジェノス君のバカ!と逆ギレをされてしまった
この人は俺より年上のはずだがどこか幼い部分もある
そのギャップも惹かれてしまった理由の一つに入るだろう
ごめんね、ごめんね、と顔を真っ赤にしたまま食べ終わった食器を片付けていく
洗い物をし始めた名無しさんさんの後姿はとても魅力的だったし、幼い頃に見た母の姿と少し被ってしまった
少しだけ揺れる髪に思わず手が伸びそうになってしまうのをなんとか抑える
なるべく人間に近く動かせるようにとクセーノ博士が配慮して作ってくれた指のパーツには関節に隙間が開いている
もし触ってしまったらその隙間に髪が引っかかってしまうだろう
自分の温度のない掌を握っては開いて、人間ではない現実を改めて感じた
「手伝いますよ」
「え、いいよいいよ!座ってて」
「手伝わせてください」
そう押してみると名無しさんさんは少し唸ってから。じゃあお願いします、と言った
さっきの態度とは変わって、いつものふんわりとした名無しさんさん
会話も何も変哲もない会話だった
それでも、幸せだ
これが幸せじゃなく当たり前、なんて言う奴もいるんだろうけど少なくとも俺には今までにない幸せを感じた
復讐を誓い人間の身を捨てたサイボーグがこの体たらくとは
それでもいいじゃないか。幸せを願ったって。感じたって
それを思うのは人間として当たり前のことだ
一緒に笑ったり、泣いたり
そういう感情を一緒に感じていたい
好きも、嫌いの感情だって
「ありがとうジェノス君」
洗い物が終わり、席へつく
名無しさんさんはまたキッチンへ行った
目でその姿を追いかけると、なにやら湯気がたっている
コト、と俺の目の前におかれたのはコップの底がみえるくらい澄んだ紅茶だった
いただきます、といってその紅茶へ口をつけた
温かい紅茶に落ち着く
ふと名無しさんさんを見てみるとまたこちらを見ていた
さっきとは違った悲しそうな、いとおしそうな表情をしていた
「・・・名無しさんさん?」
「あ、あぁぁまたごめんね!!」
先ほどと同じように慌てる名無しさんさんにまたも笑いがこみ上げてきてしまった
笑ってしまったことに怒る名無しさんさんはなんて愛らしいのだろうか
しばらくかわいらしく怒っていたが、「もう!」と言って落ち着いたようだ
けど、悲しそうな顔で無理矢理笑っているように見えた
「・・・あのね、ジェノス君」
申し訳なさそうな声で言う
それでも俺のことは逸らさずに、きちんと俺の目をみて
言いづらいのか口を結んでいる
なんだか聞いてはいけないことを聞くような気がした
体の中のモーターがキュルキュルと鳴り響く
どうしてここで気が利くことが言えないのか
「無理して言わなくていいですよ」と言えないのか
それはきっと名無しさんさんのことが知りたいから
時を重ねていくと名無しさんさんのことを知っていけた
今も、知りたいと思った
どうして俺のことをそんな風に見つめるのか
少しの静寂
やがて名無しさんさんは口を開いた
「ジェノス君似てるんだ、私の弟に」
その言葉に少し驚いてしまった
弟がいるだなんて聞いたことがなかったからだ
この家に住んでいた様子もない
日用品などは一人分であったし
ただタオルや箸の数は少し独り暮らしにしては多いとは思っていたが
あと部屋も一人にしては広い気もしていた
弟がいた、となればそこら辺も納得できる
だとすればその弟はここの町を出て行ってしまったのだろうか
それなら一人になってしまった寂しさから俺のことを弟と重ねてしまったことも仕方ない
と、心の中で思っていた
思っていた、というよりは言い聞かせたに近いかもしれない
モーター音が早くなる
「少し長くなっちゃうんだけどね」
前置きをしてから話し始めた
言ってなかったけど私には弟がいたんだ
私が稼げる歳になってから一緒に両親からここへ逃げてきた
二人だけで、しかも弟は学生だったから生活は大変だったけど幸せだったよ
けどある日別の町へ買い物へ一緒に行った時にサイボーグに襲われたの
それで弟は私を庇って・・・
しばらくはその事実を受け入れられなくて辛い日々を送っていた
いつまでもいない弟に縋っていた
その気持ちを吹っ切らそうと弟の物は全部捨ててみたの
そうしたら気持ちがスッキリして、今の通り
完全に吹っ切れたわけではないんだけどね
フフ、やっぱりそっくりだ
綺麗な金髪と目とか。大人っぽいんだけどどこ幼さある部分とか
・・・ごめんね、勝手に弟とジェノス君を重ねちゃって
まるで一つの物語を聞かされているようだった
弟が亡くなっていることに驚いた素振りは見せたものの脳ではわかっていたのだと思う
この状況で弟がいたなんて話されたらそれしかないだろう
死んでしまった人と重ねられるのは予想していたよりも大分辛いものだ
だって俺自身をしっかり見てくれていたわけではないのだから
もし弟が生きていたらこうだったんだろうな、と見られていたのだから
でもそれは仕方ないことなのだと思う
寂しさを、思い出を紛らわすには誰かと被せてしまうのは人間の本能だ
それよりも驚いたのはサイボーグについてだった
町を襲ったサイボーグ―・・・狂サイボーグではないだろうか
つまり名無しさんさんは過去に狂サイボーグに襲われたことがあるのか
段々と治まっていた怒りが、憎悪が、復讐心が体中を蝕んでいきそうになる
俺は覚悟をきめなければならない
「あぁもうこんな時間だね。もう寝ようか。おやすみ、ジェノス君」
二階の寝室へ上がっていく名無しさんさんへ「おやすみなさい」と言って見送った
俺はまだその場から動かずただただ決めていた
空になったマグカップの底を見つめながら冷静に考えていた
あぁ、やはり駄目だったのだ
俺はサイボーグとなった俺とはぐれる訳にはいかないから
人間をやめ、サイボーグとなった身でも人間だったころみたいに音を、味覚を、視覚を楽しめることは大変感謝だ
これもきっとクセーノ博士の気遣いなのだろう
これほどのご恩をどう返したらいいものか
「あ、ジェノス君またここにいたんだ」
後ろから声がしたので振り返ってみると、潮風で乱れる髪を押さえながら駆け寄ってきた
「名無しさんさん」
「もうご飯だよ。家に戻ろうか」
「はい。わざわざありがとうございます」
気にしなくていいよ、と言っているように微笑む名無しさんさんに俺も自然と口角が上がる
さっきまで考えたことを波へ流すように頭の端にやり名無しさんさんと歩き出す
今日の晩御飯はなんだろうか
そんな他愛もない話から楽しそうな名無しさんさんの声と波の音は自分を人間に戻してくれそうな錯覚に陥りそうだった
狂サイボーグへ復讐するために町を転々と回っていたがそれらしい痕跡が見当たらなかったが、遂に手がかりがあるかもしれない町へたどり着いた
海が綺麗で太陽が反射し光っている町だった
その頃は潮の匂いがきつかったな
少し調べてやはり狂サイボークはここの町に関係があるのかもしれない
そう思った俺はここへしばらく滞在することにした
そこで出会ったのが名無しさんさんだった
名無しさんさんは暴力を振るってくる父親、助けてくれない母親から逃げてここへ来たらしい
身寄りがない俺を家へ招待してくれて、食事までごちそうになって
少しだけ俺の事情を話すと名無しさんさんはここに目的が済むまで利用してくれても構わない、とまで言った
よく出会ったばかりの奴にここまでできるのか
少しの警戒心を持ちながらお言葉に甘えることにした
俺も俺であまり余計な金は使いたくなかったから丁度いい
今思えば名無しさんさんの性格からして見ず知らずの他人にここまでしてしまうのも納得している
二人で過ごす一日一日で名無しさんさんを知れるのが嬉しいと自覚し始めた時に俺はこの人に恋心を抱いているのだとわかった
曲がりにも十代だ。こんな素敵な女性が近くにいたら落ちてしまうのも仕方ない
「ジェノス君おかわりいる?」
「お願いします」
「よく食べるね~。私嬉しいよ!」
あぁなんて幸せなのだろう
毎日が楽しくて、充実していて
もしこれが映画だったのならこの先信じられないような不幸がきてしまうのではと思ってしまう
でもそんなことを考えてるのがバカバカしくなるくらいに何不自由なく暮らしていた
これが復讐を誓った身がする生活だとは笑ってしまう
そんな気持ちを消すようによそってもらったばかりのシチューを口へ含んだ
噛む前にほろっとじゃがいもが崩れる
数回租借してから飲み込んだ
ふと名無しさんさんがこちらを見ていることに気づいた
「・・・俺の顔に何かついてますか?」
「へっ。あ、あぁぁごめんね!!」
どうやら俺を見つめていたことは無意識だったらしく慌てて視線を逸らし顔を真っ赤にさせている
「あの、その、違うの。ごごごごめんね気持ち悪かったよね」
必死で言い訳をする名無しさんさんがかわいくてかわいくて思わず笑ってしまった
それについても恥ずかしくなったのか、ジェノス君のバカ!と逆ギレをされてしまった
この人は俺より年上のはずだがどこか幼い部分もある
そのギャップも惹かれてしまった理由の一つに入るだろう
ごめんね、ごめんね、と顔を真っ赤にしたまま食べ終わった食器を片付けていく
洗い物をし始めた名無しさんさんの後姿はとても魅力的だったし、幼い頃に見た母の姿と少し被ってしまった
少しだけ揺れる髪に思わず手が伸びそうになってしまうのをなんとか抑える
なるべく人間に近く動かせるようにとクセーノ博士が配慮して作ってくれた指のパーツには関節に隙間が開いている
もし触ってしまったらその隙間に髪が引っかかってしまうだろう
自分の温度のない掌を握っては開いて、人間ではない現実を改めて感じた
「手伝いますよ」
「え、いいよいいよ!座ってて」
「手伝わせてください」
そう押してみると名無しさんさんは少し唸ってから。じゃあお願いします、と言った
さっきの態度とは変わって、いつものふんわりとした名無しさんさん
会話も何も変哲もない会話だった
それでも、幸せだ
これが幸せじゃなく当たり前、なんて言う奴もいるんだろうけど少なくとも俺には今までにない幸せを感じた
復讐を誓い人間の身を捨てたサイボーグがこの体たらくとは
それでもいいじゃないか。幸せを願ったって。感じたって
それを思うのは人間として当たり前のことだ
一緒に笑ったり、泣いたり
そういう感情を一緒に感じていたい
好きも、嫌いの感情だって
「ありがとうジェノス君」
洗い物が終わり、席へつく
名無しさんさんはまたキッチンへ行った
目でその姿を追いかけると、なにやら湯気がたっている
コト、と俺の目の前におかれたのはコップの底がみえるくらい澄んだ紅茶だった
いただきます、といってその紅茶へ口をつけた
温かい紅茶に落ち着く
ふと名無しさんさんを見てみるとまたこちらを見ていた
さっきとは違った悲しそうな、いとおしそうな表情をしていた
「・・・名無しさんさん?」
「あ、あぁぁまたごめんね!!」
先ほどと同じように慌てる名無しさんさんにまたも笑いがこみ上げてきてしまった
笑ってしまったことに怒る名無しさんさんはなんて愛らしいのだろうか
しばらくかわいらしく怒っていたが、「もう!」と言って落ち着いたようだ
けど、悲しそうな顔で無理矢理笑っているように見えた
「・・・あのね、ジェノス君」
申し訳なさそうな声で言う
それでも俺のことは逸らさずに、きちんと俺の目をみて
言いづらいのか口を結んでいる
なんだか聞いてはいけないことを聞くような気がした
体の中のモーターがキュルキュルと鳴り響く
どうしてここで気が利くことが言えないのか
「無理して言わなくていいですよ」と言えないのか
それはきっと名無しさんさんのことが知りたいから
時を重ねていくと名無しさんさんのことを知っていけた
今も、知りたいと思った
どうして俺のことをそんな風に見つめるのか
少しの静寂
やがて名無しさんさんは口を開いた
「ジェノス君似てるんだ、私の弟に」
その言葉に少し驚いてしまった
弟がいるだなんて聞いたことがなかったからだ
この家に住んでいた様子もない
日用品などは一人分であったし
ただタオルや箸の数は少し独り暮らしにしては多いとは思っていたが
あと部屋も一人にしては広い気もしていた
弟がいた、となればそこら辺も納得できる
だとすればその弟はここの町を出て行ってしまったのだろうか
それなら一人になってしまった寂しさから俺のことを弟と重ねてしまったことも仕方ない
と、心の中で思っていた
思っていた、というよりは言い聞かせたに近いかもしれない
モーター音が早くなる
「少し長くなっちゃうんだけどね」
前置きをしてから話し始めた
言ってなかったけど私には弟がいたんだ
私が稼げる歳になってから一緒に両親からここへ逃げてきた
二人だけで、しかも弟は学生だったから生活は大変だったけど幸せだったよ
けどある日別の町へ買い物へ一緒に行った時にサイボーグに襲われたの
それで弟は私を庇って・・・
しばらくはその事実を受け入れられなくて辛い日々を送っていた
いつまでもいない弟に縋っていた
その気持ちを吹っ切らそうと弟の物は全部捨ててみたの
そうしたら気持ちがスッキリして、今の通り
完全に吹っ切れたわけではないんだけどね
フフ、やっぱりそっくりだ
綺麗な金髪と目とか。大人っぽいんだけどどこ幼さある部分とか
・・・ごめんね、勝手に弟とジェノス君を重ねちゃって
まるで一つの物語を聞かされているようだった
弟が亡くなっていることに驚いた素振りは見せたものの脳ではわかっていたのだと思う
この状況で弟がいたなんて話されたらそれしかないだろう
死んでしまった人と重ねられるのは予想していたよりも大分辛いものだ
だって俺自身をしっかり見てくれていたわけではないのだから
もし弟が生きていたらこうだったんだろうな、と見られていたのだから
でもそれは仕方ないことなのだと思う
寂しさを、思い出を紛らわすには誰かと被せてしまうのは人間の本能だ
それよりも驚いたのはサイボーグについてだった
町を襲ったサイボーグ―・・・狂サイボーグではないだろうか
つまり名無しさんさんは過去に狂サイボーグに襲われたことがあるのか
段々と治まっていた怒りが、憎悪が、復讐心が体中を蝕んでいきそうになる
俺は覚悟をきめなければならない
「あぁもうこんな時間だね。もう寝ようか。おやすみ、ジェノス君」
二階の寝室へ上がっていく名無しさんさんへ「おやすみなさい」と言って見送った
俺はまだその場から動かずただただ決めていた
空になったマグカップの底を見つめながら冷静に考えていた
あぁ、やはり駄目だったのだ
俺はサイボーグとなった俺とはぐれる訳にはいかないから
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