私は風だ、風と一体になるのだ!!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
広い校庭に真っ直ぐに引かれた白いライン
その距離百メートル
百メートル先にあるゴールを集中するために静かに見つめた
すぐそばで先生が合図する
その合図でしゃがむ私達
いわゆるクラウチングスタートのポーズだ
「よーい」の声にお尻を上げ、スタートの準備を
―ピッ
かすれたホイッスル音が聞えた瞬間にスターティングブロックを力を込めて蹴る
腕を振り足をすばやく切り替え、強い風が全身を撫でた
この感覚が気持ちよくなったのはもう大分前になる
しかし最近はそうでもなくなってきてしまった
走り出して中盤、前にはゴールしか見えなかったのに段々と隣で後ろを走っていたはずの友人の背中が見えてきた
友人との距離はどんどん離れていってしまう
慌てて私も友人の後を追いかけるように加速してみるがその差は中々縮まない
そしていつのまにかゴールしてしまった
「名無しさん、十四、一」
「・・・ありがとうございます」
肩で息をしながら先に走り終わっていた友人の元へ行く
おつかれ、なんていう声に手でお礼を言ってベンチに座った
そばに置いてあった自分の水筒を手に取り口につける
氷が大量に入っているおかげでこの暑い中に置いといても冷たい麦茶に感謝した
「最近名無しさん調子悪いねー」
「うぅー・・・そうなんだよ・・・もうやだー!!」
水筒を元あった場所へ戻し友人へ抱きつく
優しい友人は泣き真似をする私を拒絶しないで頭ヨシヨシしてくれた
そう、最近どうもタイムが伸びないのだ
それに今日はタイムも落ちてしまった
これが世間一般で言うスランプというやつだろうか
しかしスランプというのは自分を過大評価しすぎということもあるし、そのうち時間がすぎれば直るものだ
それなら気に病まずスランプが治るまで時を待てばいいが、今はそんなこと言っている暇ではなかった
「もう来週大会なのにやばいね・・・」
「それな」
来週の木曜日にはもう本番だというのにスランプだなんて言ってられないのだ
先生にも友人にも心配されて、それが逆にプレッシャーにもなり申し訳なくなる
別に心配されるのは迷惑ではないのだが
少し休憩を取った後にまた練習なので、気を取り直すために顔を洗おうと体育館脇についてある水道へ行く
友人には「先に戻ってていいよ」と一言置いてから
フカフカとしたかわいいワンポイントのついたフェイスを振り回しながら水道へ着いた
フェイスタオルを首にかけ、顔を洗いやすいように蛇口を上に向けてからハンドルを捻った
「ぶわっぷ!?」
思いのほか力を入れて捻りすぎてしまい上を向いた蛇口から出た水は見事に私の顔面をビショビショにしてくれた
おかげで髪から水が滴りポタポタと地面へ落ちていく
あまりにもアホな出来事にその場から動けない
あぁ、誰か私にアホと言っておくれ
「相変わらずアホだな。名無しさんは」
「いや本当に言えとは言ってないから!?」
「何の話だ」
一つ目を下げながら呆れたようにボロスは言った
バッグを持っているということはもう帰りだろうか
「今の出来事をアホ以外の言葉で表せるほど俺は頭よくないのでな」
フッとドヤ顔で言うボロスに心の底から殺意が芽生えてくる
いつも成績上位のくせに・・・!!
首にかけてあったフェイスタオルを武器にボロスへ殴りかかる
しかし、いとも簡単にかわされた
逆にタオルを掴まれ奪われる
そんな男の人の力に私なんかが勝てるわけがなかった
「かーえーせー!!」
「さっさと濡れた顔を拭け。風邪ひくぞ」
「ぶっ」
タオルを顔面へ投げられる
悔しいがここは大人しくボロスの言うことを聞いておいた
確かにボロスの言うとおり今風邪をひいたら大会に支障がきてしまう
ガシガシと乱暴に顔と髪を拭いた
ちなみに今更だが私の学校では普通じゃない人達の集まりである
普通に生徒に怪人とか不死身とか超能力者とかサイボーグだっている
ボロスだってその一人であった
最初ボロスを見た時その強烈な見た目にはさすがに人外に慣れていたと思っていたがビックリしたものだ
今となってはこんな関係だけど
「・・・まだ調子は戻らないのか」
「まーねぇー。どうすればいいんだろ」
「もう少し下半身の肉を減らしたらいいんじゃないか?」
「ボロスが恥かいた瞬間の写真SNSで晒してやりたい」
スランプのことは少し前についポロッとボロスに話してしまったのだ
一応ボロスは私のことを心配してくれてるらしい
ただこうやって減らず口も叩いてくれるので変なプレッシャーを感じないのには私も感謝している
しかしその感謝を言葉にだすのは癪なので絶対に言わないが
ため息を吐いて壁にもたれかかる
そしたらボロスも隣に来て私と同じように壁にもたれかかった
帰らなくていいの、と聞いてみたらあぁ、という短い返事だけが返ってきた
二人で正面に見える野球部の練習を眺めた
バッターがマウンドへ入る
数回自分の場所を確認して、ピッチャーのほうへ向く
そしてそのまま来たボールを打った
ボールは遠くへ遠くへ飛んでいく
もしここが球場だったならばホームランであっただろう
そんな上手くいったバッターの姿に上手くいかない自分と重ね合わせてしまい自爆してしまった
「あー・・・もー・・・本当どうしよう」
「どうしよう」ともう何回言ったか
愚痴のように言ってしまう
どうにもならないことは自分が一番よくわかってはいるのだが
ボロスにはこんな惨めな私がどんな風にうつっているんだろうか
・・・勉強もできて運動もできて悩み事なんてなさそうなボロスに私の気持ちなんてわからないか
別にわかってもらえなくてもいいけど
こうやって気軽に、楽しく話し合えるのはいいことだ
「そうだな。じゃあ大会で名無しさんが新記録だしたならハーゲンダッヅを奢ってやろう」
「マジで!?よし、頑張る」
「その代わり記録だせなかったら俺にハーゲンダッヅだぞ」
「うわずるい」
ボロスと話こんでいたら休憩はあっという間に終わっていたらしく陸上部はとっくに練習していた
いつまでもここにいたらサボッているのがさすがに見つかってしまうので私もさっさと練習に戻ろう
よっこらせ、とおじさんくさいことを言ってもたれかかっていた姿勢を戻す
「じゃーねボロス。また明日」
「名無しさん」
「ん?」
歩き出しボロスへ背を向けたが声をかけられたので振り返る
ボロスはポケットに手を突っ込んだままだ
「少し、慌てすぎなんじゃないのか」
「え」
「お前が記録をだせなくても誰も名無しさんを責めない。改めて自分がどうして陸上をやっているのか考えてみろ」
よっ、と言ってボロスもよりかかっていた姿勢を元に戻す
「じゃあな。頑張れよ」
「え、あ、・・・うん」
ボロスが帰るために校門へ歩き出す
私はその場に止まって考えていた
確かに私が記録をだせなくても責める人はいないのかもしれない
さっきだって友人達は励ましてくれた
私だって他の人が大会本番で記録がだせなくても「また次頑張ろう!」としか思っていなかったわけなのだし
・・・考えすぎ、か
それに”どうして陸上をやっているのか”についても考えていた
新記録をだしたときの喜びという理由もあるがやはり心底にあるのは走るのが好きだから、というのが一番の理由だ
記録をだすことがすべてではない
そうか、私考えすぎだったのか
なんだか少し心が軽くなったような気がした
「・・・ボロスのバーカ」
本人がいなくても素直にお礼が言えずに、いつもみたいに悪口をポツリと呟いた
タオルを強く握った後走りながら謝って練習へと戻った
その距離百メートル
百メートル先にあるゴールを集中するために静かに見つめた
すぐそばで先生が合図する
その合図でしゃがむ私達
いわゆるクラウチングスタートのポーズだ
「よーい」の声にお尻を上げ、スタートの準備を
―ピッ
かすれたホイッスル音が聞えた瞬間にスターティングブロックを力を込めて蹴る
腕を振り足をすばやく切り替え、強い風が全身を撫でた
この感覚が気持ちよくなったのはもう大分前になる
しかし最近はそうでもなくなってきてしまった
走り出して中盤、前にはゴールしか見えなかったのに段々と隣で後ろを走っていたはずの友人の背中が見えてきた
友人との距離はどんどん離れていってしまう
慌てて私も友人の後を追いかけるように加速してみるがその差は中々縮まない
そしていつのまにかゴールしてしまった
「名無しさん、十四、一」
「・・・ありがとうございます」
肩で息をしながら先に走り終わっていた友人の元へ行く
おつかれ、なんていう声に手でお礼を言ってベンチに座った
そばに置いてあった自分の水筒を手に取り口につける
氷が大量に入っているおかげでこの暑い中に置いといても冷たい麦茶に感謝した
「最近名無しさん調子悪いねー」
「うぅー・・・そうなんだよ・・・もうやだー!!」
水筒を元あった場所へ戻し友人へ抱きつく
優しい友人は泣き真似をする私を拒絶しないで頭ヨシヨシしてくれた
そう、最近どうもタイムが伸びないのだ
それに今日はタイムも落ちてしまった
これが世間一般で言うスランプというやつだろうか
しかしスランプというのは自分を過大評価しすぎということもあるし、そのうち時間がすぎれば直るものだ
それなら気に病まずスランプが治るまで時を待てばいいが、今はそんなこと言っている暇ではなかった
「もう来週大会なのにやばいね・・・」
「それな」
来週の木曜日にはもう本番だというのにスランプだなんて言ってられないのだ
先生にも友人にも心配されて、それが逆にプレッシャーにもなり申し訳なくなる
別に心配されるのは迷惑ではないのだが
少し休憩を取った後にまた練習なので、気を取り直すために顔を洗おうと体育館脇についてある水道へ行く
友人には「先に戻ってていいよ」と一言置いてから
フカフカとしたかわいいワンポイントのついたフェイスを振り回しながら水道へ着いた
フェイスタオルを首にかけ、顔を洗いやすいように蛇口を上に向けてからハンドルを捻った
「ぶわっぷ!?」
思いのほか力を入れて捻りすぎてしまい上を向いた蛇口から出た水は見事に私の顔面をビショビショにしてくれた
おかげで髪から水が滴りポタポタと地面へ落ちていく
あまりにもアホな出来事にその場から動けない
あぁ、誰か私にアホと言っておくれ
「相変わらずアホだな。名無しさんは」
「いや本当に言えとは言ってないから!?」
「何の話だ」
一つ目を下げながら呆れたようにボロスは言った
バッグを持っているということはもう帰りだろうか
「今の出来事をアホ以外の言葉で表せるほど俺は頭よくないのでな」
フッとドヤ顔で言うボロスに心の底から殺意が芽生えてくる
いつも成績上位のくせに・・・!!
首にかけてあったフェイスタオルを武器にボロスへ殴りかかる
しかし、いとも簡単にかわされた
逆にタオルを掴まれ奪われる
そんな男の人の力に私なんかが勝てるわけがなかった
「かーえーせー!!」
「さっさと濡れた顔を拭け。風邪ひくぞ」
「ぶっ」
タオルを顔面へ投げられる
悔しいがここは大人しくボロスの言うことを聞いておいた
確かにボロスの言うとおり今風邪をひいたら大会に支障がきてしまう
ガシガシと乱暴に顔と髪を拭いた
ちなみに今更だが私の学校では普通じゃない人達の集まりである
普通に生徒に怪人とか不死身とか超能力者とかサイボーグだっている
ボロスだってその一人であった
最初ボロスを見た時その強烈な見た目にはさすがに人外に慣れていたと思っていたがビックリしたものだ
今となってはこんな関係だけど
「・・・まだ調子は戻らないのか」
「まーねぇー。どうすればいいんだろ」
「もう少し下半身の肉を減らしたらいいんじゃないか?」
「ボロスが恥かいた瞬間の写真SNSで晒してやりたい」
スランプのことは少し前についポロッとボロスに話してしまったのだ
一応ボロスは私のことを心配してくれてるらしい
ただこうやって減らず口も叩いてくれるので変なプレッシャーを感じないのには私も感謝している
しかしその感謝を言葉にだすのは癪なので絶対に言わないが
ため息を吐いて壁にもたれかかる
そしたらボロスも隣に来て私と同じように壁にもたれかかった
帰らなくていいの、と聞いてみたらあぁ、という短い返事だけが返ってきた
二人で正面に見える野球部の練習を眺めた
バッターがマウンドへ入る
数回自分の場所を確認して、ピッチャーのほうへ向く
そしてそのまま来たボールを打った
ボールは遠くへ遠くへ飛んでいく
もしここが球場だったならばホームランであっただろう
そんな上手くいったバッターの姿に上手くいかない自分と重ね合わせてしまい自爆してしまった
「あー・・・もー・・・本当どうしよう」
「どうしよう」ともう何回言ったか
愚痴のように言ってしまう
どうにもならないことは自分が一番よくわかってはいるのだが
ボロスにはこんな惨めな私がどんな風にうつっているんだろうか
・・・勉強もできて運動もできて悩み事なんてなさそうなボロスに私の気持ちなんてわからないか
別にわかってもらえなくてもいいけど
こうやって気軽に、楽しく話し合えるのはいいことだ
「そうだな。じゃあ大会で名無しさんが新記録だしたならハーゲンダッヅを奢ってやろう」
「マジで!?よし、頑張る」
「その代わり記録だせなかったら俺にハーゲンダッヅだぞ」
「うわずるい」
ボロスと話こんでいたら休憩はあっという間に終わっていたらしく陸上部はとっくに練習していた
いつまでもここにいたらサボッているのがさすがに見つかってしまうので私もさっさと練習に戻ろう
よっこらせ、とおじさんくさいことを言ってもたれかかっていた姿勢を戻す
「じゃーねボロス。また明日」
「名無しさん」
「ん?」
歩き出しボロスへ背を向けたが声をかけられたので振り返る
ボロスはポケットに手を突っ込んだままだ
「少し、慌てすぎなんじゃないのか」
「え」
「お前が記録をだせなくても誰も名無しさんを責めない。改めて自分がどうして陸上をやっているのか考えてみろ」
よっ、と言ってボロスもよりかかっていた姿勢を元に戻す
「じゃあな。頑張れよ」
「え、あ、・・・うん」
ボロスが帰るために校門へ歩き出す
私はその場に止まって考えていた
確かに私が記録をだせなくても責める人はいないのかもしれない
さっきだって友人達は励ましてくれた
私だって他の人が大会本番で記録がだせなくても「また次頑張ろう!」としか思っていなかったわけなのだし
・・・考えすぎ、か
それに”どうして陸上をやっているのか”についても考えていた
新記録をだしたときの喜びという理由もあるがやはり心底にあるのは走るのが好きだから、というのが一番の理由だ
記録をだすことがすべてではない
そうか、私考えすぎだったのか
なんだか少し心が軽くなったような気がした
「・・・ボロスのバーカ」
本人がいなくても素直にお礼が言えずに、いつもみたいに悪口をポツリと呟いた
タオルを強く握った後走りながら謝って練習へと戻った
1/2ページ