忍者の人
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「クレープを20個頼む」
そう言われ、思わず聞き返してしまった。
驚いたのも勿論あるが、この人物が大量にクレープを買うからだ。
その人物はS級ヒーローのフラッシュだ。
この量は誰かに差し入れだろうか?
あんまり差し入れや社交的なタイプには見えないので驚いた。
そう思っていたのに、隣にいた黒い人から衝撃の一言が。
「食い過ぎだ、フラッシュ」
「やらんぞ」
食いすぎだ……? ということはこの量を一人で食べるつもりなのだろうか。
心の声は胸の中にしまっておき、黙々とクレープを作る。
あの細い身体に、これだけの量のクレープを食べられるのだろうか。
「速く動くと大量のカロリーを使うのは当たり前だ」
「そんなこと知っている。俺だってそうだからな」
「ならソニックは食べないのか」
「フン。俺は自分を甘やかさないからな」
そんな会話は私の耳に届いていなかった。
目の前のクレープを作るのに必死だからである。
生地を作って、生クリームを搾って、フルーツやスイーツを飾って。
どれくらい時間がかかっただろうか。
やっと全て作り終わった。しかし私は大事なことを聞くのを忘れていた。
「すみません! クレープはお持ち帰りでよろしかったでしょうか」
「……どうするか」
「そんなに持てるわけないだろたわけ」
「そうだな。じゃあ19個は持ち帰りで、1個はそのまま頼む」
「か、かしこまりました」
まさかクレープ20個をそのまま持とうとしていた?
案外フラッシュは天然なのだろうか?
頭の中でフラッシュのことを考えながら、クレープを持ち帰り用の袋に詰めていた。
そしてやっと、フラッシュの手元にクレープを渡すことができた。
「お待たせいたしました」
「あぁ、感謝する」
天然であろうフラッシュは、案外礼儀は正しいみたいだ。
ありがとうございました、と言おうとしたところでまさかの注文が入る。
「……」
「なんだソニック。やらんぞ」
「美味そうだな」
「やらんぞ」
「……」
黒い人の視線はフラッシュのクレープを凝視していた。
そして目線を私の方に向ける。
「俺もクレープ30個いただこう」
ヒュッと息が詰まる。
二人のおかげで今日の売り上げは、いつもより3倍だった。
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