怖い人
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倒れている。
この平和(怪人が出るし平和とは言えないが)な時代に人間が倒れているとは。
そっと倒れている人物に近づく。
頭にはたんこぶができている。
これは、救急車を呼ぶべきだろう。
携帯を取り出し、番号を押そうとしたところで
グギュルルルルルル
でかい音が鳴る。
何の音か分からず、地響きかと思った。
もう一度、先ほどの音が鳴る。
音の出どころはどこかと探すと、倒れている人物からだった。
「ラ……へっ……」
喋った。
てっきり気を失っているかと思ったので、声をかけていなかった。
声をかける。
「大丈夫ですか!?」
「ハラ……減った……」
「え」
どうやらお腹を空かしているようだ。
それよりも先に救急車へ運ぶべきだろうか。
「救急車呼びますか?」
「…メロ」
「え?」
「ヤメロ……」
「えぇ……」
どうやら救急車は呼んでほしくないらしい。
何故だろう? 医者に罹りたくない理由があるのだろうか。
とりあえず、お腹が空いているとのことで、今の私にできるのはクレープを作ってあげる事だけだ。
コンビニとかで買ってあげても良かったが、あまり長い時間離れるのが嫌だったからだ。
それに、クレープ作ってあげる方が安く済むし。
ササっと惣菜系クレープを作ってあげ、コップに水を入れて持っていく。
「あの良かったらこれどうぞ……」
倒れている彼に差し出してみる。
すると彼はガバッと起き上がった。
おそらく匂いで食べ物だと分かったのだろう。
起き上がったかと思えば、私の手から水を奪い取り一気に飲む。
そしてその後はクレープを受け取り、勢い良く食べ始めた。
改めて彼の顔を見る。
吊り上がった目に、逆だった二つ割れの髪の毛。
クレープを食べている彼は子供のように見えた。
「ごっそさん」
ゲフ、とゲップをしてゴミを渡してきた。
きちんとごちそうさまができるだなんて、見た目に反して良い人なのかもしれない。
ゴミを受け取ると彼は私の顔を見る。
「なんで助けた?」
「いや、倒れている人がいたら助けようとするものだと思うのですが……」
「お前、俺の事知らないのか」
えぇ!? 有名人だったのですか?
風貌からして、芸能人ではないだろう。ではヒーローか?
しかし脳内でヒーローHPを開いても彼の顔が出てくる事はなかった。
もしかしてC級ヒーローとかだろうか?
しまった、C級ヒーローまでは特に確認していなかった。
返答に困っていると、彼は立ち上がる。
「ま、俺もその程度って事か」
「ご、ごめんなさい」
「じゃあな。いつかこの借りは返すぜ」
そう言って立ち去ってしまった。
当然のようにお金は貰えなかったが、ま、まぁ彼が元気になってくれたのならいいか。
帰宅して、ヒーローHPでC級とB級ヒーローを万遍なく確認したが彼は見つけられなかった。
次の日
「俺らはぁ、ここの地域を守ってんの」
「だからそのお礼として無料でもいいでしょ?」
「向こうの居酒屋はタダにしてくれたよ?」
ただいま、目の前の三人にカツアゲをされています。
どうやら彼はヒーローでこの辺をパトロールしているらしい。
確かこの三人は最近B級になったばかりのヒーローだ。(昨日ヒーローHPを見たおかげで顔が分かった)
確かに、ここら辺を守ってくれているのならサービスしたっていい。
しかし、私は童帝君に「ヒーローだからってあんまりサービスしないほういいよ。ヒーローだからといって人間だし、つけこまれるから」と言われている。
なのでここでサービスをしたら彼らは今後も「守っているから」という盾で今後もたかりにくるだろう。
ここでサービスするにはいかなかった。
「申し訳ございませんが、当店ではサービスをする事はできません」
「はぁ!?」
「ふーんじゃあ今度からここが怪人に襲われてもいいの?」
「俺たち無視しちゃうから」
別に無視しても構わないので、早く購入するかどこかへ行って欲しい。
後ろに並んでいる人が怖がっているし、イライラしている者もいるではないか。
諦めて帰っていく者までいる。
営業を邪魔されるくらいなら、サービスをするしかない。
そう思い、承知いたしました。と口を開こうとした瞬間。
「「「ぐわぁぁぁぁぁ!?!?」」」
目の前から三人がいなくなる。
私も、並んでいるお客様も目を見開き茫然としてしまった。
三人を吹っ飛ばしたのは、昨日助けた彼だった。
既に三人は気を失っているのか、寝っ転がったままだ。
彼が私の所へ来る。ビクッと肩が跳ね上がる。
「これで借りは返したからな」
返事をするまでもなく、彼はここから去っていってしまった。
驚いた、あの少年があんなに強いだなんて。
お客様もあっけとしていたが、邪魔をしていた者がいなくなったので注文を言ってくる。
私も、何事も無かったかのように、いつも通りに営業を再開する。
あの人はまた来てくれるだろうか。
そしたら、お礼が言いたいな。
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