三話
夢小説設定
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イアイアンと共に怪人討伐へと向かう名無しさん。耳の小型通信機からは絶えず怪人の情報が流れてくる。
走っていくにつれ、大きくなっていく爆発音。
「あそこか」
イアイアンが言った。次々とアスファルトを砕き、木々を折る怪人を睨みつける。
「災害レベルは虎程度か・・・。よし、行くぞ。・・・おい?」
返事がないことに、イアイアンは隣にいる貴公子を見た。
名無しさんは、刀を握ってすらいない。
けれど、
「―ッ」
笑って、いた。今まで見たことの無い顔。
見ているこちらがゾッとしたのだ。
イアイアンは全身が逆毛立ち、鳥肌まで立っている。
一言で言えば、恐怖を感じたのだ。
「おい!」
「え?」
こちらを向いた名無しさん。
しかし名無しさんはいつもの名無しさんで、先ほど笑っていた雰囲気もない。
「・・・なんだったんだ?」
首に冷たい汗をかいていた。
当の本人の名無しさんは何もわかっていない。笑っていたのは無自覚であった。
災害レベル虎の怪人。当然、A級ヒーロー上位である。
あっという間に討伐は完了した。。
けれど名無しさんは、その死体にいつまでも銃を放っている。
怪人の表面が血肉だらけになるほどに。
血の臭いと硝煙の匂いが混ざり合い気持ち悪い。
「やめろ!」
イアイアンが止めに入った。怪人とはいえ、ここまでする必要は無い。
「・・・えっ、あれ・・・俺、何して・・・」
頭を抱えた名無しさん。
そんなことをまったくしたいわけではなかったのに、身体が勝手に動いていた。
いや、身体だけではない。思考も勝手に動いていた。
ほぼ、肉の塊としか認識できない死体に、名無しさんは口に手を押さえ、震えた。
どうして、こんなこと。
それからというもの、名無しさんの怪人への横暴さが徐々に現れる。
死んだというのにいつまでもその肉を切り裂いていたり、鉛玉で血飛沫を広がらせたり。
犯罪者の捕獲では、その人間を躊躇無く殺そうとしていたのだ。
その場にいたヒーロー達が必死で名無しさんを止めに入ったこともあった。
名無しさんの人格が変わったよう。
見るに耐えない死体。切りづらい鋏で何度も何度も切られたかのような怪人の死体を、名無しさんは見つめていた。
「ふ、ふふ・・・・」
イアイアンの心臓が早くなっていく。
「あっははははははは!」
屋外なのに、反響するかのような笑い声がイアイアンの鼓膜を震わせた。
「・・・・っ!どうしたんだ。最近何かあったのか?」
「んーん。別になんでも」
そう言う名無しさんの表情は、初めてのおもちゃで遊んだ子供のように笑っていた。
また別の日だ。
アマイマスクが出かけていたとき偶然、怪人討伐している名無しさんに出くわした。
その様子にアマイマスクは驚いた。
決して強くないはずの怪人なのに名無しさんは時間をかけている。しかもわざと。
わざと、死なないところを斬っている。
指、片方の腕、片方の脚。
怪人は泣きながら名無しさんに許しを請っていた。
だが名無しさんは笑っているばかりだ。
「んー。まだまだ死にそうにないな。上出来上出来」
刀の先を、怪人の目へと突き刺した。
地へ広がる血が振動するほどの絶叫。
名無しさんは刀を回し更に深くへと刀を押す。
そんな光景を、アマイマスクは堪らず、怪人へとトドメを刺したのであった。
もう、怪人は動かない。
名無しさんはつまらない顔をしてアマイマスクへと振り向く。
「何で邪魔すんの?」
「何をやってる。こんな奴さっさと倒せるだろう」
「でもさぁ、こいつらは害悪なんだぜ?」
名無しさんは刀をしまい、代わりに銃を取り出し発砲した。
コンクリートの壁が、更に赤く染まる。
「それなら、苦しんで死んだほうがいいに決まってるだろ」
薄ら笑いで言う名無しさん。
明らかに様子がおかしい。
いつもの名無しさんではない。
アマイマスクは正面に名無しさんと立合い、下から見下ろした。
・・・目の奥の色が濁っているように見える。
「何があったんだ?君に」
「何でもねーよ」
そう言って名無しさんは帰っていった。
アマイマスクはその背を見ずに、見るに耐えない怪人を、見ていた。
それからまた、名無しさんが行方不明となった。
静かとなる会議室。
集まった者は名無しさんの友人達・・・つまり、A級たちだ。
誰も何も喋ろうとしない。
名無しさんの謎の行動、謎の失踪。誰も予想などできるはずがない。
予想するにはいくつかの仮定を必要とするが、その仮定すらも思いつかなかった。
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