第97話 回転すしはラーメン一択
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アトミック侍の目的はとある人物に会うこと。
しかし協会から教えてもらった住所に行ってもその人は留守だった。
無駄足になってしまった。
弟子を3人も連れているのでほんの少し申し訳ない気持ちになる。
「せっかく来たんだ。寿司でも食っていくか」
申し訳なさの気持ちを無くすためにそう言った。
3人共首を縦に振る。
「やったー!!! お寿司久しぶりー♡」
「みっともないからはしゃぐな」
キャッキャッとはしゃぐオカマイタチをブシドリルが窘める。
そんな2人をよそにイアイアンはアトミック侍の横に立つ。
「師匠、あの……名無しさんも誘ってよろしいでしょうか」
「!。あぁ、いいぜ」
「ありがとうございます!」
イアイアンはアトミック侍でも中々見せない笑顔。
彼の笑顔があまりにも眩しいのでアトミック侍は目を細める。
イアイアンは既に持っていた携帯で電話をし始めた。
「10分ぐらいで来れるそうです」
イアイアンはとびっきりの笑顔を3人に向けた。
オカマイタチとブシドリルはイアイアンの肩に手を置き、アトミック侍は光を浴びないようにそっぽを向く。
それほど彼の笑顔は純粋で、朗らかで、見る者の母性本能を覚醒するような笑顔だった。
何故彼らがこんな様子なのか分からないまま、名無しさんとの集合場へと歩く。
集合場所はネズミ寿司の前にした。
ネズミ寿司が見えたが、名無しさんの姿は見えない。
そこにいるのは中性的な人が1人いるだけ。
黒い帽子を深く被り顔が見えない。大きなパーカーで体を隠しているがその下のスキニーパンツは足にフィットしている。
5センチほどあるヒールのブーツのおかげで足がスラっとしていた。
その人は携帯をいじっている。それだけでモデルのようだ。
店に近づく。
すると、人の気配を感じたのか中性的な人は顔を上げる。
大きな眼鏡に黒いマスクは顔を隠すよう。
それでもこちらを見た瞳は美しいものだった。
思わずビクリ、としてしまいほど。
綺麗な瞳がこちらを見たかと思えば、そのまま手を振る。
「よぉ、イアイ久しぶり。アトミック侍さんも、カマさんも、ドリルも」
4人がポカーンとしながら見つめ合う。
「え、何、どうした」
「……名無しさんッ!?」
最初に気づいたのはイアイアンだ。
そのあとに続いてオカマイタチもアトミック侍もブシドリルも気づいたようだった。
「あらやだ名無しさん!? いつもと全然雰囲気違うから分からなかった! 超似あってるわ♡」
「まぁちょっと変装した感じです」
「へんそぉ?」
ブシドリルが尋ねる。
「ヒーロー協会辞めてから外歩くと人が集まるようになっちゃって……」
あぁ、と皆は同情してしまう。
名無しさんがヒーローを辞めた事はアマイマスクがアイドル業を引退するぐらい、市民に衝撃的だっただろう。
一度有名人になったら生きている限り一般人に戻るのは難しい。
見つけられたら囲まれ、質問の津波に巻き込まれる。
溺れるほど高い津波は足を止めてしまう。
外を気軽に歩けないのは生活に支障が出る。
だから自分のイメージとかけ離れた服装をすることで変装をしたのだ。
オマケにメガネをかけてマスクもつけたら、大親友のイアイアンでも気づかない。
変装成功だな。と言って名無しさんはピースをした。
ギュンッとイアイアンは顔の中心に力を入れる。
いつもと違う雰囲気、ヒールにより身長差が縮んだおかげでいつもより顔の近さ……。
心臓が煩くならないようにするには、これが一番手っ取り早い。
「すみませんアトミック侍さん。俺まで誘っていただきありがとうございます」
「気にすんな。コイツらもお前がいたほうが嬉しいだろ」
そんなイアイアンをよそに、名無しさんはアトミック侍に頭を下げていた。
どうやらアトミック侍がお金を出してくれるようだ。
名無しさんも、オカマイタチも、ブシドリルもワクワクしながらお店に入っていった。
「イアンどうした?」
「いえ、なんでも」
カウンター席に座る。
名無しさんの席はイアイアンとオカマイタチに挟まれる席に座った。
アトミック侍の気遣いだ。「若い奴は若い奴と話しな」と言ってくれた。
これはヒーロー協会に勤めているヒーローに限った話だが、特に決まった席が無く目上の人がいる場合、ヒーロー達は順位順に座る。
ヒーロー協会はそんなマナーや決まりなど作っていない。
ヒーロー達の無意識な行動というか、潜在意識というか。そういうものだ。
目の前にはカラフルな寿司がレーンで運ばれている。
名無しさんが初めての回転寿司に感動していると、イアイアンが耳打ちをしてきた。
「格安の回転寿司ですまない」
「ブフッ」
名無しさんが肩を震わして笑っている。
イアイアンがまさかこんな事を言うなんて思っていなかったから。
まぁ流石に野郎4人もいるのなら回らないお寿司など、信じられない金額になってしまう。
回転寿司なのも仕方ない。
「何か文句があるのか?」
「あ! いえ……おや、あれはサーモンかな? いただきます!!」
レーンにオレンジ色の寿司が流れてくる。
しかしレーンからサーモンは消えてしまった。
「あ、サーモン取られた」
「あれがマヨコーンってやつかしら。食べてみよ~」
またしても狙った寿司がレーンから消えた。
気にせず食べ続けているのは名無しさんだ。目の前にある寿司を選り好みせず食べている。
寿司が流れている、という楽しさに夢中なのだ。
「師匠、大トロが流れてきますが」
「大トロ確保だ」
「承知し、あ」
我慢できなかったのか、それとも自分が狙っていたものを取られたのが気に食わないのか。
アトミック侍はガタッと音を立てながら立ち上がる。
そんな師匠を窘めるのはイアイアンだ。
窘めてくれたからアトミック侍が落ち着いたわけではない。寿司を取られた人物を見て驚いたから。
不思議に思った名無しさんモイアイアンもオカマイタチもブシドリルもアトミック侍の視線を追いかける。
確かに、その人物に驚いた。
アトミック侍は"彼"に近づく。
「まさかこんな所にいたとはな……"地球最強さん"よ」
「ん?」
キングが、そこにいた。
名無しさんがイアイアンに耳打ちする。
「そういえば、キングさん探してるって言ってたっけ」
イアイアンが頷く。
アトミック侍とキングが緊迫した空気のなか話している。
そのうちドッドッドッドという音が店内に響いた。
つまり、戦闘態勢だ。
「だったら表に出ろ。それともここで一戦交えるか?」
キングエンジンにひるまずアトミック侍も圧をかける。
「ちょま……んぐッ……ふんッ(やば……動揺して喉に詰まった……)」
「!」
3人の弟子はキングの態勢に驚いた。
キングは割りばしを構えていたのだ。
「割りばしで十分だってのか?」
「(ちがうんだよなぁ)」
名無しさんは2人を黙ってみていた。
名無しさんはこの状況を少し楽しんでいた。
自分もキングが戦っている姿は見たことない。戦っている姿を見ることができると思うとワクワクしてししまう。
しかも戦う相手はアトミック侍。どんな勝負になるのか想像できない!
「もう一度言う。表に出ろ」
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