第95話 飼ってみたいペットはウサギ
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名無しさんは大きな荷物を抱えて、ヒーロー協会本部へと向かっている。
もうヒーローを辞めた名無しさんは一般人だ。
一般人ならば、新ヒーロー協会本部へ立ち入る事は無いし、許可も難しいだろう。
だがS級と苦労しながらも交流し、A級と良い絆を結んでおいたおかげで難なく入ることができるのだ。
メタルナイトも「好きにしろ」と言うだけ。
「おっとと……」
荷物が崩れそうになったのを立て直す。
重い荷物だが名無しさんの足取りは愉快なものだった。
何故なら久々に皆に会えるかと思ったから。
だが1番の目的はサイタマの家へ行くことだ。
サイタマは怪人協会戦で家が無くなってしまい、A級に上がった事もあり、ヒーロー協会のマンションに引っ越したとの事。
だから名無しさんは引っ越し祝いとして、プレゼントを贈ろうとサイタマ宅に向かっているのだ。
ヒーロー協会本部の入口に立つ。
機械音声が名無しさんの身体をスキャンする。
特に問題は無いため扉が開くのは当然だ。
無事ヒーロー協会マンション入る事ができたので、真っ直ぐにサイタマ宅に向かう。
それにしても、これがヒーロー協会か、と黒い建物を見上げた。
三日月フトマユゲからの連絡を思い出す。
そこにはヒーロー協会本部が富裕層向けにマンションを売っていること、A級ヒーローは家賃タダの代わりにここを守らないといけないこと。
主には、せっかく力を磨きあげて苦労してA級となったのに警備員扱いとなったことの愚痴だったが。
ふつふつと怒りが湧いてくる。
この世界では金持ちと一般人であれば、一般人の方が多数を占めるだろう。
金持ちならば傭兵や頑丈な地下フィルターを購入できる。
だが一般人は?
我々ヒーローは力を持たぬ者を守るためにいるのではないか。
ならばマンションは誰でも入居できるようにすべきだ。
そんな言葉は、今やヒーロー協会のヒーローではない名無しさんは心の中で留めておくことしかできない。
ダンボールを握る手の力が強まる。
そう思っているといつの間にかサイタマの部屋の前にいた。
行儀が悪いと分かりつつ膝で扉をノックした。
「誰だ?」
サイタマが鈍い音に気づき、ドアののぞき穴を見る。
するとダンボールしか見えなかったので思わず扉を開けた。
「ようサイタマ」
「び、びっくりした……名無しさんか」
名無しさんがダンボールを2段持っているので、姿を全て隠れてしまっていたのだ。
サイタマが片手で名無しさんのダンボールを持つ。
「ありがと。そろそろ腕が限界だったんだ」
「おう、上がれよ」
サイタマが部屋の中へ名無しさんを案内する。
おじゃまします、と言って中に入った。
中は綺麗で、流石新築だと思う。
サイタマが座れよ、と言うので名無しさんは遠慮なくフローリングへと座った。
名無しさんから受け取った荷物を部屋の隅に置く。
「茶淹れるか」
「いや、すぐ出てくから大丈夫」
「あ、そう」
サイタマも座る。
どうしてサイタマがここに住むことになったのか、ジェノスはどうしているのか、などの日常会話をしていた。
やがて一通りの会話を終えて、やっと名無しさんの荷物に関する話となった。
サイタマが名無しさんの持っていたダンボールを指さす。
「あれどうした」
「あぁ、サイタマへのプレゼント」
「マジ!?」
サイタマが四つん這いになりながらダンボールへと近づく。
見てみると1箱は未開封なのに気づいた。
ダンボールには有名な家電屋のマークが書かれている。
「電子レンジと炊飯器と適当な服」
「え!?」
「家埋もれちゃって、ほとんど壊れてただろうと思って」
「マジか! 助かるよ名無しさん!」
サイタマが嬉しそうな顔をしながらダンボールを開けている。
その顔を見て名無しさんは買っておいて良かったと思う。
それと、口には出さないがガロウを救ってくれた事に対するお礼だ。
口だけでのお礼は足りない。だからプレゼントだ。
喜んでいるサイタマを見て、名無しさんも微笑んだ。
しかし、サイタマは電子レンジに貼ってある紙を見て顔の血が一気に下がった。
その紙には料金が記載してある。
値段を見てサイタマは思わず腰が抜けてもしまう。
今まで自分が使っていた電子レンジより3倍の値段だからだ。
他の荷物も見てみる。
服は新品なのでタグがついているので見てみる。
Tシャツなのに2万円。ズボンに関しては10万円以上だ。
泡を吹いて倒れそう。こんな高価な物触ったこともない。
更にこの後名無しさんの発言で、更に力が抜けてしまう。
「この後、洗濯機もくるから」
「ヒョエッ」
そうだった。コイツは金持ちだったんだ。
だからこの金額ぐらい何とも思っていなさそうだ。
名無しさんへとお礼を言った声は大変かすれていた。
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