ねぇパパあれ買ってやだやぁーーだ!!あれじゃないとダメなの!!
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ごく普通のスーパー
至って特別なことは何もない
主婦たちが集まり、品を定め献立に悩む
予定通り行われる特売
売上向上のための試食
だが、今日この日だけT市のスーパー”ジャイフーズ”は普通ではないスーパーとなった
「なぁ名無しさんこれとかどうよ」
「いやぁ……若者は喜ばないと思います……」
「なにぃ!?」
乾物コーナーにて親子のような二人
S級ヒーロー4位アトミック侍
A級ヒーロー2位名無しさん
この二人がごく一般のスーパーへ買い物へ来てるなど、ちょっとしたニュースになるのではないだろうか
名無しさんだけならまだしも(そもそも名無しさんはよくここへ買い物に来ている)あのアトミック侍とも一緒だ
何故この二人が一緒に仲良くスーパーへ買い物をしているのかというと、
「よぉ名無しさん」
「ど、どうしたんですかアトミック侍さん!?」
朝方、特に連絡もせずアトミック侍は名無しさんの元へ訪れた
突然のS級訪問に驚き……はしていないが、(普段ジェノスやタツマキが訪れてくるため)これはまた初めての客で不思議に思った
今ではフラッシュが師だが、その前はアトミック侍に稽古をつけてもらっていたのだから実質師のような存在
今でもそういう関係だと名無しさんは思っている
外で話すのも気が引けるので、中へ上げお茶を淹れた
「いやぁ急に悪いな!」
「幸い今日予定がなくてよかったです。それで、何をしにここへ?」
顎に生えたヒゲを触りながらいつもの薄笑いをしていたが、お茶を一啜りすると眉をキッと上げ真面目な表情をした
正直起きたばかりだったので、朝ごはんを食べたかったのだがそんなことは言っていられないようだ
背筋を伸ばし、名無しさんもアトミック侍を見つめる
「実はな、相談というか……頼み事があってだな」
「俺に?」
「おう。名無しさんに」
はて、何だろうか
大抵のことは一人でできるであろうし、何よりアトミック侍には自分なんかに頼らずとも頼りになる弟子達が十分いるはずだ
自分で考えるより、話を聞いたほうが早いと選択したため大人しく耳をアトミック侍に預けた
「実はよ、俺の弟子はすげー頑張ってる。そりゃもう、A級上位に入るレベルだからな」
「そうですね」
「……だからこそ、普段頑張っている弟子達にご褒美っつーか、まぁ、そうだな。そういうことしてやりたいんだが」
「なるほど」
イアイアン達と仲が良く、歳もさほど離れておらず、自分ともそれなりの関係がある
これほど好条件な相手は名無しさんしかいなかった
そういうことならば、是非協力してあげたい
とりあえず一旦朝食を取らせてもらい、食後のお茶を飲みつつ話し合った結果が師匠が自ら料理をふるまってあげるということであった
それが、アトミック侍と名無しさんの二人がスーパーにいる理由だ
話し合った結果、振る舞うのは鍋。
野菜たっぷりで、尚且つ量も作れると提案したのは名無しさんだった
「アトミック侍さんって、普段料理はされるんですか?」
並ぶ白菜達をじっくり見てよりみずみずしいもものを見定めていた
名無しさんがふと聞いてみた
自分から「俺が料理をふるまってやるってのはどうだ?」と言い出したのだから腕に自信があったのだろう
これがいいかな、と一つの白菜を手に取りお尻のほうを見た。よし、新鮮だ
返事がないのでアトミック侍を見る
「……」
「アトミック侍さん?」
「いいか名無しさん、俺に斬れないものはねぇ。野菜だってそりゃもう鮮やかに斬れるし肉や魚だってプロが驚くほどに斬ってやるぜ。だから俺は包丁なんか使えなくてもいいってことだ」
「刀は大事にしてください」
これは駄目だ。買い物だけでなくこの後の料理も付き合ってあげることになりそうだ
何故料理をしないのにこういう提案をしたのか
S級ヒーローは自由である。という謎の理論を頭の中で書き、それに自分自身で納得するしかない
幸先に不安を抱きつつ、次は鮮肉コーナーへ足を運ぼうとしたがアトミック侍が付いてきていない
見回せば彼はあるコーナーに集中していた
一つ、手に取っている
「なぁ名無しさん」
「駄目です」
「最高の料理には最高の酒が必要だろ?」
「駄目です」
「……あいつ等だって呑むぞ?」
「ご予算が決まっているでしょう」
最近、アトミック侍は道場をリフォームしたらしかった
なので、前のように贅沢はせず慎ましく生活していたがやはり目の前に良いお酒があると我慢できないようであった
「買うならそちらの日本酒にしてください!」
「嫌だーー!!こいつが俺を持って帰ってくれって言ってやがる!!買ってあげるしかねぇだろ!?」
「何を子供みたいなこと言ってるんですか!」
赤いラベルが貼られた黒瓶を離そうとしないアトミック侍のマントを名無しさんが引っ張る
約五分にも及ぶ名無しさんの説得で、渋々アトミック侍はお酒を諦めることができた
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