俺たち兄妹がおかしいわけがない!!
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名無しさんには学校がある
これはどうしようもない障碍であり、いくら彼女でも手は出せない
確かに彼女は名無しさんと一緒にいるためなら何でもするが、名無しさんに迷惑がかかることは一切しない
それが彼女の愛情である
その間、彼女はどこにいたかというと
「こんにちは、イアイアンさん!」
「・・・・・・!!?」
行きついた先は、イアイアンが住む町のスーパー
イアイアンは突然の彼女の登場に、トマトを危うく握りつぶしてしまうほどであった
強い怪人と対峙しているときよりも、師匠が怒っているときよりも、アマイマスクといるときよりも、強い恐怖が後ろから襲うよう
彼女は顔面にモロ感情を出しているイアイアンに、遠慮なく近づく
「お買い物ですか?」
「ハ、ハイ・・・・・・」
年下の彼女に敬語になってしまうのは、一言一句を間違った選択肢をすれば死の世界へ連れていかれそうになるからだ
手に入れていた力を抜き、トマトをカゴに入れる
彼女はカゴも持っていないようだし、買い物に来たわけでもなさそうだ
「実はイアイアンさんにお兄ちゃんのことを聞きたくて」
「名無しさんについて?」
そんなの、兄妹である君のほうが詳しいのでは
と言いそうになったが脳が咄嗟に危険信号を送ったので口に出ることはなかった
しかし名無しさんのこと
イアイアンは名無しさんとの思い出を振り返ってみるも、特に名無しさん自身について語れることはない
名無しさん自身が、自分のことを話したがらないからだ
話せることと言えば、思い出ばかりである
それで満足してくれるのだろうか。もしかしたら今日は命日かもしれない
そんなことを思いつつレジを済ませた
彼女はイアイアンが並んでたレジのすぐ傍にいた。イアイアンが逃げないために
心の奥底のほんの少しだけ「逃げられるかな」と思っていたイアイアンは首にリードを付けられた気分になった
そんな気分のまま近くの喫茶店へと入る
イアイアンは終始、嫌な汗が流れていた
もちろん恐怖のプレッシャーもそうだが、少女と二人っきりというのも問題である
変な噂が流れませんように・・・・・・いるのかいないのか、存在が不確かな神に祈っておいた
「それでお兄ちゃんのことについて教えてほしいんですけど」
いちごミルクをかき混ぜながらそう問う彼女の顔は笑顔でありながらもやはり威圧を感じさせる
だが、勝手なイメージであったがコーヒーや紅茶を飲むイメージであったのでいちごミルクという女の子が好きなものであったので子供らしさが垣間見えた気がした
そして、フルーツが盛られたパフェがやってくる
甘いものに甘いものを重ねて頼むとは。名無しさんと同じだ
紅茶を一口飲み、口の中を麗してから話し始める
「名無しさんについては・・・・・・」
名無しさんと戦ったこと
名無しさんとどこかへ出かけたこと
名無しさんと一緒にいたこと
話していることがただの思い出話とだということはイアイアンは気づいていない
夢中で話していたため、彼女のいちごミルクが半分以下になっているのに対しイアイアンの紅茶は三分の一も減っていなかった
「名無しさんは一人で抱え込みすぎるんだ。確かに、あいつは強い。だがもう少し俺たちに頼ってくれても・・・・・・」
と言ったところで、愚痴っぽい発言に気づき慌てて口を塞ぐ
出た言葉は掴めず相手の耳に届いてしまうことは当たり前なのだが
やってしまった。死――
「イアイアンさん」
カチャリ、とカップがテーブルに置かれた音に肩を震わせる
少女に臆することに恥など感じている暇もなかった
「お兄ちゃんのこと大好きすぎませんか・・・・・・本当に友達として見てます・・・・・・?」
カラカラになった口内を潤わせようと、含んでいた紅茶を吹き出してしまった
彼女の目は人間を見るような目をしていない
「ち、違う!!誤解だ!!」
必死で弁解しようにも彼女は聞く耳持たず「やっぱりお兄ちゃんは私が守らなきゃ・・・・・・」とつぶやいていた
オワッタ――。イアイアンは全てを諦め、神に迎えられたような笑顔を作った
彼女に弁解はできずともきっと名無しさんにならできるはずだ。そしてそこからまた彼女に名無しさんから話してもらおう。そうしよう
会計は、いつのまにか、本当にいつのまにか彼女が払っていたのであった
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