何事もすべて神様の言うとおり!
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たくさんの人だかり
ほとんどの人間は携帯を持ってフラッシュをたいていた
中にはテレビ関係の者もいる
彼等を抑えるために警察も集まっていた
そんな注目度の高い被写体はそんなに高くないビルである
ビルの入り口には顔全体を隠すマスクに両手で支えないと持てないほどのでかい銃を抱えて、見張っていた
「人が邪魔ね」
きっとテロリスト達が野次馬を追っ払わないのは見せ付けたいのだ。植え付けたいのだ
自分たちの力を、脅威を、恐怖を
それにマスメディアだけでなく実際の一般人に見せることでさらにリアリティが増すのも狙いだろう
警察がいくら帰れと警告しても人々は後退しようとしなかった
「・・・さて、行くわよ」
「そうですね」
クランクションを激しく鳴らし、道を開けてもらう
警察は一瞬拳銃を構えたが車のマークを見て腕を下ろす
ビルから五十メートルほど離れたところに車を止めて中から出てきた人物は、ロングスカートに頬に丸のペイントの男性と、スーツに立派な口髭を生やしている男性であった
「あ!!ヒーローです!!ついにヒーローが到着いたしました。あれはオカマイタチさんとバネヒゲさんのようです」
カメラのレンズとフラッシュの矛先はビルから二人へと向けられた
たくさんのカメラに写真を撮られオカマイタチは口を尖らせ眉をしかめる
「写真撮られるのは嫌いではないけれど、こういう時に不謹慎じゃないかしらね」
「放っておきなさい。応じたら負けですぞ」
バネヒゲは余裕を持ってオカマイタチにそう言った
オカマイタチは口では「そうね」と言ったが内心はその言葉を素直に受け入れては居なかった
表面だけ受け入れるとして、正面を向き直りビルを見つめた
ビル、というより入り口に立っている二人だ
二対二。見つめ合う
「貴方たち、目的はなんなの?何が望み?」
オカマイタチが言う
マスクの男達はお互い顔を見合わせ、一人が手を耳に当て始めた
何か指令を受けているようであった
「ヒーローが来たところで、我々はどうもしない。みんなの未来を救ってやるのだ!!」
初めてテロリスト達が喋った
注目度は更に高まる
次の言葉を待つが出る気配はなかった
オカマイタチとバネヒゲはいつでも武器を取れる体制である
それは、マスクの男達も同じ
暫し、正義と悪は見つめ合っていることしかできなかった
「・・・効果はあるみたいだな」
ブシドリルが呟いた
今世間の注目もテロリストの注目も、二人のヒーローに向けられているだろう
「さぁて、そろそろ突撃するか」
狭い空間で軽くストレッチを始めたイナズマックスを黄金ボールは迷惑そうに見た
今、五人がいるのはビルの真横とも言える路地裏である
日の光は短くしか入ってこない
これから五人のヒーローが侵入するべきは、二階の窓である
イアイアンはこれから人助けをするというのに納得のいってない顔だ
その顔を隠そうともしない
未だ理解できていないのだ。この計画が。それを承知したみんなが
だが緊急事態である。今するべきことは助けることだ
そう言い聞かせこの場にいる
「イアイアンさん、お願いします」
名無しさんがそう言うと、イアイアンはビルを背にして腰を落とし手を組んで構えた
名無しさんはすみません、と一言だけ言い足をイアイアンに乗せる
そしてイアイアンは思いっきり名無しさんを上に飛ばした
皆はそれを息を呑んで見ていた
名無しさんは器用にわずか二センチほどの溝に指をかけ、
「離れていてください」
下にいる者たちに注意を呼びかける
そして安全な位置に行ったと確認できたら腰に携える刀を抜き、振るった
シャリンシャリン、という雪の降る音が大きくなったかのような音と共に光る物が落ちてきた
その正体はガラスである
ガラスを斬るとこんな音が鳴るとは。初めて聞いた音に四人は目を驚かせた
実際、普通はそんな音はしないだろう
名無しさんの剣さばきが常人を越しているのである
きっと名無しさんの他にこの技術を持つものを探すのは大変なことだろう
内と外を阻むガラスを斬ったところで、名無しさんは軽々しく中へと入る
そしてロープを下へと垂らした
「まずは第一段階クリアだな」
黄金ボールが胸を撫で下ろしたようであった
みんなが侵入する以前に心配になっていたのは当たり前である
だってこんなの、一つ間違えれば大怪我をしてもおかしくはない。失敗だって数で表したら高い数値がでるだろう
それを名無しさんは当たり前のようにやってのける
それでも尚、納得のいっていないイアイアンは最後にロープを掴んだ
「こりゃひでぇ有様だ」
ブシドリルが顎鬚を撫でながら言う
中は水色のカーペットに白い壁という清楚なオフィスであっただろうに、テーブルは破壊され、椅子は四方八方に行き、観葉植物はもはや観葉になっていなかった
だいぶ荒らされている
名無しさんがグルリと中を一旦見回した
テロリストはここにはいないようだ
耳をすませると、怒鳴りあう声が聞こえる。それは外からであった
「・・・外のほうは、あまり長くもたないでしょう。急ぎましょう。黄金ボールさん、あそこ、お願いします」
「おうよ!任せとけ」
黄金ボールがパチンコを構える
そして―打った
打ったのは変形弾であり、途中で短いワイヤーとなる
ワイヤーとなった弾は防犯カメラの壁とカメラを繋げる役目を果たす棒のところへと引っかかった
すると左右を映していた防犯カメラは動きを止める
「ナイスです」
「あったりめぇよ」
この変形弾は名無しさんが先ほど車の中で早急に作った防犯カメラ妨害装置である
一体何故、彼にこのような技術を持っていたのかこの当時は誰も知らなかった
防犯カメラを気にすることなくこの部屋を出る
「人質は最上階、それではお願いします」
作戦はこうであった
ブシドリルとイナズマックスが最上階にいる人質の安全確保
ブシドリルの力技と、イナズマックスの軽いフットワークがあれば救出できると踏んでいる
黄金ボールは同じく防犯カメラの妨害が役目だ。この装置は妨害だけでなく、ハッキング要素も含んでいるだとか
そして名無しさんとイアイアンは、というと
「いたぞ!!あそこだ!!」
「撃て!!」
銃が錯乱してしまったかのように容赦なく撃ってくる
今イアイアンと名無しさんは一階へ降りて裏口へといた
隠れることもせず、堂々と、自分たちの存在を目立たせるように
二人は柱の影へと隠れた
作戦は名無しさんとイアイアンは裏口から侵入させたと思わせるためだ
ここでテロリスト達の注目を集め人質の逃げ道を作るという作戦だ
イアイアンの不満な顔は侵入したときから変わらない
一体こいつは何を考えているのか。どうして堂々と敵の前に姿を現すのか
人間は、理解できないことは不満に思うものである
「おい!!この後どうするんだ!!」
弾の嵐の中イアイアンが叫ぶ
名無しさんは撃ってくる三人を見つつ、一丁の銃を取り出しスライドを引いた
そしてイアイアンの瞳を見つめ首を軽く縦に振るだけであった
あぁまったく!
イアイアンは腰を落とし居合いの体制をとった
名無しさんも構える。そして銃口と銃口が向き合う形となった
三発、撃ち込む
弾はそれぞれ三人の銃へと当たる
「グッ!?」
「な」
「ナニィ!!」
名無しさんが撃ったら即座にイアイアンは敵の前へと出、刀を抜いた
銀色の閃光が消える頃にはテロリスト達は倒れている
名無しさんが考えていたことは成功したらしい
「・・・どうして、お前はこうやって危険なことを」
「信じているからですよ」
「は?」
「あなたの実力を信じています」
イアイアンがその言葉に呆気に取られた
名無しさんへと言葉を返す前に走ってくる足音が聞こえた
床から微かな振動
「次もお願いします、イアイアンさん」
「あ、あぁ」
その言葉は、言えないまま
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