わんわんお(^ω^)にゃんにゃんお(^ω^)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いつも通りの帰り道
青木が彼女と別れた、というので生暖かい笑顔で励ましてあげた
まぁまぁ今度飯でも奢ってやるから
本当にショックだったらしくいつも通りの帰りが少し暗くなってしまった
どうやら原因は彼女の浮気だったらしい
もったいないなー。青木はいい男なのに
友人からみた俺でも青木は条件揃ってると思う
顔だってそこそこいいし、頭いいし、要領いいし
「もう俺将来名無しさんと結婚する・・・」
「落ち着け。血迷うな」
それでもまだ「幸せにする」とか言ってる青木も殴ってから青木と別れた
一人で歩く木々に囲まれた道
急に一人になったものだから寂しさを感じた
友人と別れた後のこの寂しさってなんだか切ないよな
気を紛らわせようとバックから小型の音楽プレイヤーを出す
絡まったイヤホンのコードをほどき耳へセットした
電源を入れようとしたところで足元からかわいらしい鳴き声が
「ミャア・・・」
「ん?」
鳴き声のするほうへ視線を下げたらダンボール箱に入った白い毛並みの猫
白い毛は所々ドロで汚れている
ミャアと鳴いた声は弱々しく下手したら聞き逃してしまうところであった
誰がどう見ても捨て猫
まったく・・・いくら裕福になった現代でもこんなことをするとは
残念な人間がいることにため息を吐いた
もう一度猫を見るとアーモンド型の淡い灰色のかかった目が俺を見つめてくる
しばらくそのかわいさに見惚れてしまっていたがイカンイカンと首を振る
命は無責任に助けてはいけないのだ
俺のマンションはペット禁止であるし、実家へ連れて行ったとしてもあんな殺伐とした場所でこんなかわいい猫が育つとも思えなかった
こういうときは非情だが見捨てるしかないのだ
俺じゃなく他の人が拾ってくれることを願うしか俺にはできることがないのだ
申し訳ない気持ちになりながら歩き出す
「・・・ミャー。ミャー」
ピタリ、と足が止まってしまう
いやいやいや、駄目だ駄目だ
中途半端に育ててしまうほうが猫にとってかわいそうだろう
しかし
「ミャアァ」
希望をみつけ、力を振り絞ったような鳴き声なんて聞いたら放っておけるわけが無かった
完全に俺の負け
猫のところへ戻り、しゃがむ
ミャアミャア鳴く猫は心なしか嬉しそうな表情にみえた
ソッと頭を撫でてみる
毛はゴワゴワで触り心地はよくないが、猫は気持ちよさそうだ
そんな猫に口筋が緩む
顎も撫でてあげるともっと気持ち良さそうな顔をした
あぁやっぱり猫ってかわいいな
「お前捨てられちゃったのか」
「ミャア」
偶然返事をするように鳴いたのだろうが、俺には会話をしているように感じた
もちろん猫がこちらの言うことを理解するわけもないし、俺も猫の言ったことが理解できるわけがない
でもそれでも「うん」と言っていると思ったのだ
そういえば、と猫から手を離しバックの中へ手を突っ込む
ガサゴソと探し、目的のものが見つかったので出す
小魚が詰められた袋・・・そう、煮干だ
よく行くスーパーで仲良くなったおばちゃんがくれたものだ
ありがたかったが、煮干なんて出汁をとる以外使い道がわからなかったためおやつ代わりとして持ち歩いていた
青木に「おばちゃんみたい」と言われたなぁと思い出しちょっと殺意が沸いた
袋を止めていたゴムをはずし掌に煮干を少量乗せ猫の口元へ差し出す
すると猫はがっついて煮干を食べ始めた
急に胃にたくさん物を入れるのは悪いかな、と少量乗せた煮干はすぐになくなった
ペロペロと掌を舐めてくるのでくすぐったい
もう一度煮干をあたえる
「そうかぁ・・・でも俺飼えないしなぁ」
「ミャーオ」
さっきの弱々しい鳴き声は少しだけ良くなった
クリクリとした目でまたしても俺を見つめてくる
このままここに放っておくわけにもいかない
・・・仕方ない。協会に連れていこうか
協会ならヒーローやらスタッフさんが飼える人がいるかもしれない
やせ細ってしまった猫を抱き、T市協会へ向かった
少し歩くが仕方ない
広いフロアにある受付のところへ行く
女の人がなにやら作業しているところへ申し訳ない気持ちがありながらも話しかける
「すみません」
「あら、軍人貴公子さん。どうかしましたか?」
作業を中断されたことに対してどうも思ってないようだ
スタッフさんは俺の胸元に視線をやった
そう、猫だ
「やだかわいい!どうされたんですか?その猫」
これまでの事情を話すとスタッフさんは成る程とうなずいた
しかし困った顔をして首をかしげながら手を頬にあてる
「うーん・・・飼ってあげたいのは山々なのですが・・・」
聞けばこのスタッフさんは実家暮らしらしい
親は昔から動物を飼うのは許してくれない、と
まぁそれは仕方ない
スタッフさんはごめんなさいと言いながら身を乗り出し猫を撫でた
撫で終わりスタッフさんが自分の元いた位置へ戻ったところで頭を下げてその場を離れた
やっぱり生き物を飼うって難しいことなのか
トボトボと廊下を歩く
すると視界に猫は別の白い物体が入った
モフモフしている
見間違いない目立ったそんな格好するのは俺の中では一人しかいない
でもどうしてここにいるのだろうか
「番犬マンさん」
「名無しさん」
名前を呼ぶと振り向いてくれた
怪人を倒した後だろうか
わずかに手に血がついている
番犬マンさんはかわいい見た目に反して戦い方が豪快だからなぁ
これが世の人が喜ぶギャップというものだろうか
番犬マンさんの人気が高いのはそれもあるかもしれない
まぁその話は置いとくとしよう
「どうして番犬マンさんがT市の協会に?」
「本当はT市に現れたはずの怪人がその場にいたヒーローじゃ倒せなくてQ市まできちゃったんだよ。だから倒した報告をT市にも連絡しなくちゃいけなかったわけ」
「なるほど」
「T市は君の庭なんだからしっかりしてよね」
「す、すみません」
別に俺の庭というわけではないのだが
そんな反論は静かに飲み込んだ
俺に連絡が来てなかったのは遠かったからだろう
話を聞くと発生した場所はT市の端っこのほうらしい
「で、僕が質問する番なんだけど」
「はい?」
「どうしたの、それ」
番犬マンさんの丸い手が指差すその先はもちろん抱いている猫
いつものけだるそうな顔はわずかに眉が寄っている
猫を拾ってしまった話を一からすると番犬マンさんは黙って聞いててくれた
ただ眉はひそめたまんまだ
「本当にお人よしだね君は」
フーッと息を吐いて首を振る番犬マンさん
その通りなので何も言い返せない
だって猫かわいかったんだもん
ニャア、と胸元で鳴く猫を撫でてあげる
猫は相変わらず撫でてあげると首を伸ばし目を瞑って気持ち良さそうにしている
そんな可愛い表情されたらこちらも笑顔になってしまうだろう
笑顔というよりは周りからみたらニヤけるなのだろうけど
視線は猫にむいていたがチラッと番犬マンさんへ向けると眉の皺が先ほどより少しだけ深くなっていた
「あの・・・番犬マンさんって猫嫌いなんですか?」
「別に嫌いではないけど」
しかしその顔はどう見ても・・・
まぁ本人がそう言うのならばそうなのだろう
嫌いではないけど、得意ではないという感じか
まぁ猫と犬。相対する生き物だし得意でなくても納得だ
別に番犬マンさんは犬ではなく人間なのだが
「可愛いですよ、ほら」
猫を番犬マンさんへ近づけてみる
番犬マンさんは少し後ずさりしたが、止まって猫と視線を合わせた
そのまま数秒猫と見詰め合っている
先に行動にでたのは番犬マンさんだった
モコモコした腕を持ち上げ猫のほうへ伸びる
きっと撫でようとしてくれるのだろう
猫の頭に触れるあと少し
「フシャーっ!」
バリッと嫌な音が俺達しかいない廊下に響いた
俺は言葉もでず硬直してしまう
段々と振るえが起きてきた
足の先から除々にきて、全身へ回る
今起きたことを説明すると、撫でようとしてくれた番犬マンさんを猫が引っかいたのだ
しかも顔を
番犬マンさんの顔には縦に綺麗に血の線が
番犬マンさんの表情は変わり、何が起きたのかわからないという顔をしていた
レアな表情だ
しかしそれもすぐになくなり、いつものけだるそうな顔に戻る
そのまま動かない
心配になり声をかけてみる
「ば・・・番犬マンさん?」
「・・・」
「だ、大丈夫ですか?」
「・・・」
返事はなかった
猫のほうを見てみると、毛を逆立てて番犬マンさんを威嚇しているようだった
得意でないのは猫も同じようだった
猫と番犬マンさんは見つめあう・・・ではなく、睨み合っている
そしてまたしても折れたのは番犬マンさんのほうだった
先に視線を逸らしたからだ
拗ねたように猫から離れると、ぶすくれて言う
「だから猫という生物は・・・」
俺達に背を向けブツブツと言っていた
正直番犬マンさんがこんなに態度を表に出す姿は始めてみた
ここまで番犬マンさんを打ち負かす猫ってすごいなぁ
しかしまた修羅場にならないようにすぐにこの場を離れるとしよう
背を向けている番犬マンさんに軽くおじぎをして踵を返した
すると歩いて一メートルのところでスタッフさんと会えたので猫のことを話した
返事は途中から予想できた「ごめんなさい」だ
だって顔がもう無理ですっていう顔だったもん
じゃあごめんなさいね、と言って行ってしまうスタッフさん
はたして猫の飼い主は見つかるのだろうか
幸先が良くないのでため息がでてしまう
背筋も丸まってしまうのもしょうがないだろう
少しの間しょぼくれてたら背中に衝撃だ
「グフッ!?」
その正体は顔を確認しなくてもわかる
「な、何するんですか!!」
「・・・」
考え込んだような顔をしていた番犬マンさんだったが、やがて口を開く
「しょうがないから僕も飼い主探し手伝ってあげるよ」
「え?」
予想もしてなかった言葉に目を丸くする
番犬マンさんは聞えなかったの?とでも言いたそうな顔だ
「名無しさんだけじゃ押しが足りないから永遠に飼い主見つからないよ。それに・・・」
ズイッと猫に近づき視線を合わせる
お互いまたしても睨み合った
どちらも一歩も引かず、といった感じだ
「君に仕返ししたいからね」
と言って猫から猫から離れた
トコトコと歩いていく
仕返し・・・って何てことを言うんだこの人は
番犬マンさんのことだからきっとエグい感じの仕返しをしそうだ
猫は本能的に危険を感じ取ったのか、俺のほうを向いて弱々しくミャアと鳴いた
大丈夫だぞ、俺が君を守るからね・・・!!
と思いながら強く抱きしめてあげた
猫は安心したかのように鳴き、俺の頬に自分の頬をこすりつけてくる
汚れてしまっているため、本来柔らかいはずであろう体毛はゴワゴワであった
「・・・早く来なよ」
「あ、すみません」
小走りで番犬マンさんを追いかける
それにしてもどうしたら飼い主が見つかるのだろうか
もしこのまま見つからなかったら猫は元の場所へ戻さなければならない
またしても自分の勝手な判断のせいでこんなことになってしまったことを反省しなければならない
しかし見捨てるわけにもいかなかっただろう
飼い主が早く見つかりますように
「そうだな・・・」
と、番犬マンさんは呟いた
呟いたと言っても隣で歩いている俺にも聞えるように
「まずスタッフから聞きまわってみようか。でも上層部の人間は駄目だね。あいつらは協会のことしか考えてない奴が多いし。だから下っ端の奴等に声かけてみようか。それも最近入ったばっかりの新人。きっと慣れない仕事でストレスたまって癒しを必要としてると思うから」
言葉の高低が少なく、淡々と言う番犬マンさん
名探偵並の推理力(とはちょっと違うが)には感心した
ひょっとして番犬マンさんって頭がいいのだろうか・・・?
少し言葉に毒があったのは気になったがそこは気にしないで、俺の心の中にとどめておこう
「でもその前に」
クルッと猫のほうをみる
「その汚い格好どうにかしようか。人様にもらわれるんだから」
青木が彼女と別れた、というので生暖かい笑顔で励ましてあげた
まぁまぁ今度飯でも奢ってやるから
本当にショックだったらしくいつも通りの帰りが少し暗くなってしまった
どうやら原因は彼女の浮気だったらしい
もったいないなー。青木はいい男なのに
友人からみた俺でも青木は条件揃ってると思う
顔だってそこそこいいし、頭いいし、要領いいし
「もう俺将来名無しさんと結婚する・・・」
「落ち着け。血迷うな」
それでもまだ「幸せにする」とか言ってる青木も殴ってから青木と別れた
一人で歩く木々に囲まれた道
急に一人になったものだから寂しさを感じた
友人と別れた後のこの寂しさってなんだか切ないよな
気を紛らわせようとバックから小型の音楽プレイヤーを出す
絡まったイヤホンのコードをほどき耳へセットした
電源を入れようとしたところで足元からかわいらしい鳴き声が
「ミャア・・・」
「ん?」
鳴き声のするほうへ視線を下げたらダンボール箱に入った白い毛並みの猫
白い毛は所々ドロで汚れている
ミャアと鳴いた声は弱々しく下手したら聞き逃してしまうところであった
誰がどう見ても捨て猫
まったく・・・いくら裕福になった現代でもこんなことをするとは
残念な人間がいることにため息を吐いた
もう一度猫を見るとアーモンド型の淡い灰色のかかった目が俺を見つめてくる
しばらくそのかわいさに見惚れてしまっていたがイカンイカンと首を振る
命は無責任に助けてはいけないのだ
俺のマンションはペット禁止であるし、実家へ連れて行ったとしてもあんな殺伐とした場所でこんなかわいい猫が育つとも思えなかった
こういうときは非情だが見捨てるしかないのだ
俺じゃなく他の人が拾ってくれることを願うしか俺にはできることがないのだ
申し訳ない気持ちになりながら歩き出す
「・・・ミャー。ミャー」
ピタリ、と足が止まってしまう
いやいやいや、駄目だ駄目だ
中途半端に育ててしまうほうが猫にとってかわいそうだろう
しかし
「ミャアァ」
希望をみつけ、力を振り絞ったような鳴き声なんて聞いたら放っておけるわけが無かった
完全に俺の負け
猫のところへ戻り、しゃがむ
ミャアミャア鳴く猫は心なしか嬉しそうな表情にみえた
ソッと頭を撫でてみる
毛はゴワゴワで触り心地はよくないが、猫は気持ちよさそうだ
そんな猫に口筋が緩む
顎も撫でてあげるともっと気持ち良さそうな顔をした
あぁやっぱり猫ってかわいいな
「お前捨てられちゃったのか」
「ミャア」
偶然返事をするように鳴いたのだろうが、俺には会話をしているように感じた
もちろん猫がこちらの言うことを理解するわけもないし、俺も猫の言ったことが理解できるわけがない
でもそれでも「うん」と言っていると思ったのだ
そういえば、と猫から手を離しバックの中へ手を突っ込む
ガサゴソと探し、目的のものが見つかったので出す
小魚が詰められた袋・・・そう、煮干だ
よく行くスーパーで仲良くなったおばちゃんがくれたものだ
ありがたかったが、煮干なんて出汁をとる以外使い道がわからなかったためおやつ代わりとして持ち歩いていた
青木に「おばちゃんみたい」と言われたなぁと思い出しちょっと殺意が沸いた
袋を止めていたゴムをはずし掌に煮干を少量乗せ猫の口元へ差し出す
すると猫はがっついて煮干を食べ始めた
急に胃にたくさん物を入れるのは悪いかな、と少量乗せた煮干はすぐになくなった
ペロペロと掌を舐めてくるのでくすぐったい
もう一度煮干をあたえる
「そうかぁ・・・でも俺飼えないしなぁ」
「ミャーオ」
さっきの弱々しい鳴き声は少しだけ良くなった
クリクリとした目でまたしても俺を見つめてくる
このままここに放っておくわけにもいかない
・・・仕方ない。協会に連れていこうか
協会ならヒーローやらスタッフさんが飼える人がいるかもしれない
やせ細ってしまった猫を抱き、T市協会へ向かった
少し歩くが仕方ない
広いフロアにある受付のところへ行く
女の人がなにやら作業しているところへ申し訳ない気持ちがありながらも話しかける
「すみません」
「あら、軍人貴公子さん。どうかしましたか?」
作業を中断されたことに対してどうも思ってないようだ
スタッフさんは俺の胸元に視線をやった
そう、猫だ
「やだかわいい!どうされたんですか?その猫」
これまでの事情を話すとスタッフさんは成る程とうなずいた
しかし困った顔をして首をかしげながら手を頬にあてる
「うーん・・・飼ってあげたいのは山々なのですが・・・」
聞けばこのスタッフさんは実家暮らしらしい
親は昔から動物を飼うのは許してくれない、と
まぁそれは仕方ない
スタッフさんはごめんなさいと言いながら身を乗り出し猫を撫でた
撫で終わりスタッフさんが自分の元いた位置へ戻ったところで頭を下げてその場を離れた
やっぱり生き物を飼うって難しいことなのか
トボトボと廊下を歩く
すると視界に猫は別の白い物体が入った
モフモフしている
見間違いない目立ったそんな格好するのは俺の中では一人しかいない
でもどうしてここにいるのだろうか
「番犬マンさん」
「名無しさん」
名前を呼ぶと振り向いてくれた
怪人を倒した後だろうか
わずかに手に血がついている
番犬マンさんはかわいい見た目に反して戦い方が豪快だからなぁ
これが世の人が喜ぶギャップというものだろうか
番犬マンさんの人気が高いのはそれもあるかもしれない
まぁその話は置いとくとしよう
「どうして番犬マンさんがT市の協会に?」
「本当はT市に現れたはずの怪人がその場にいたヒーローじゃ倒せなくてQ市まできちゃったんだよ。だから倒した報告をT市にも連絡しなくちゃいけなかったわけ」
「なるほど」
「T市は君の庭なんだからしっかりしてよね」
「す、すみません」
別に俺の庭というわけではないのだが
そんな反論は静かに飲み込んだ
俺に連絡が来てなかったのは遠かったからだろう
話を聞くと発生した場所はT市の端っこのほうらしい
「で、僕が質問する番なんだけど」
「はい?」
「どうしたの、それ」
番犬マンさんの丸い手が指差すその先はもちろん抱いている猫
いつものけだるそうな顔はわずかに眉が寄っている
猫を拾ってしまった話を一からすると番犬マンさんは黙って聞いててくれた
ただ眉はひそめたまんまだ
「本当にお人よしだね君は」
フーッと息を吐いて首を振る番犬マンさん
その通りなので何も言い返せない
だって猫かわいかったんだもん
ニャア、と胸元で鳴く猫を撫でてあげる
猫は相変わらず撫でてあげると首を伸ばし目を瞑って気持ち良さそうにしている
そんな可愛い表情されたらこちらも笑顔になってしまうだろう
笑顔というよりは周りからみたらニヤけるなのだろうけど
視線は猫にむいていたがチラッと番犬マンさんへ向けると眉の皺が先ほどより少しだけ深くなっていた
「あの・・・番犬マンさんって猫嫌いなんですか?」
「別に嫌いではないけど」
しかしその顔はどう見ても・・・
まぁ本人がそう言うのならばそうなのだろう
嫌いではないけど、得意ではないという感じか
まぁ猫と犬。相対する生き物だし得意でなくても納得だ
別に番犬マンさんは犬ではなく人間なのだが
「可愛いですよ、ほら」
猫を番犬マンさんへ近づけてみる
番犬マンさんは少し後ずさりしたが、止まって猫と視線を合わせた
そのまま数秒猫と見詰め合っている
先に行動にでたのは番犬マンさんだった
モコモコした腕を持ち上げ猫のほうへ伸びる
きっと撫でようとしてくれるのだろう
猫の頭に触れるあと少し
「フシャーっ!」
バリッと嫌な音が俺達しかいない廊下に響いた
俺は言葉もでず硬直してしまう
段々と振るえが起きてきた
足の先から除々にきて、全身へ回る
今起きたことを説明すると、撫でようとしてくれた番犬マンさんを猫が引っかいたのだ
しかも顔を
番犬マンさんの顔には縦に綺麗に血の線が
番犬マンさんの表情は変わり、何が起きたのかわからないという顔をしていた
レアな表情だ
しかしそれもすぐになくなり、いつものけだるそうな顔に戻る
そのまま動かない
心配になり声をかけてみる
「ば・・・番犬マンさん?」
「・・・」
「だ、大丈夫ですか?」
「・・・」
返事はなかった
猫のほうを見てみると、毛を逆立てて番犬マンさんを威嚇しているようだった
得意でないのは猫も同じようだった
猫と番犬マンさんは見つめあう・・・ではなく、睨み合っている
そしてまたしても折れたのは番犬マンさんのほうだった
先に視線を逸らしたからだ
拗ねたように猫から離れると、ぶすくれて言う
「だから猫という生物は・・・」
俺達に背を向けブツブツと言っていた
正直番犬マンさんがこんなに態度を表に出す姿は始めてみた
ここまで番犬マンさんを打ち負かす猫ってすごいなぁ
しかしまた修羅場にならないようにすぐにこの場を離れるとしよう
背を向けている番犬マンさんに軽くおじぎをして踵を返した
すると歩いて一メートルのところでスタッフさんと会えたので猫のことを話した
返事は途中から予想できた「ごめんなさい」だ
だって顔がもう無理ですっていう顔だったもん
じゃあごめんなさいね、と言って行ってしまうスタッフさん
はたして猫の飼い主は見つかるのだろうか
幸先が良くないのでため息がでてしまう
背筋も丸まってしまうのもしょうがないだろう
少しの間しょぼくれてたら背中に衝撃だ
「グフッ!?」
その正体は顔を確認しなくてもわかる
「な、何するんですか!!」
「・・・」
考え込んだような顔をしていた番犬マンさんだったが、やがて口を開く
「しょうがないから僕も飼い主探し手伝ってあげるよ」
「え?」
予想もしてなかった言葉に目を丸くする
番犬マンさんは聞えなかったの?とでも言いたそうな顔だ
「名無しさんだけじゃ押しが足りないから永遠に飼い主見つからないよ。それに・・・」
ズイッと猫に近づき視線を合わせる
お互いまたしても睨み合った
どちらも一歩も引かず、といった感じだ
「君に仕返ししたいからね」
と言って猫から猫から離れた
トコトコと歩いていく
仕返し・・・って何てことを言うんだこの人は
番犬マンさんのことだからきっとエグい感じの仕返しをしそうだ
猫は本能的に危険を感じ取ったのか、俺のほうを向いて弱々しくミャアと鳴いた
大丈夫だぞ、俺が君を守るからね・・・!!
と思いながら強く抱きしめてあげた
猫は安心したかのように鳴き、俺の頬に自分の頬をこすりつけてくる
汚れてしまっているため、本来柔らかいはずであろう体毛はゴワゴワであった
「・・・早く来なよ」
「あ、すみません」
小走りで番犬マンさんを追いかける
それにしてもどうしたら飼い主が見つかるのだろうか
もしこのまま見つからなかったら猫は元の場所へ戻さなければならない
またしても自分の勝手な判断のせいでこんなことになってしまったことを反省しなければならない
しかし見捨てるわけにもいかなかっただろう
飼い主が早く見つかりますように
「そうだな・・・」
と、番犬マンさんは呟いた
呟いたと言っても隣で歩いている俺にも聞えるように
「まずスタッフから聞きまわってみようか。でも上層部の人間は駄目だね。あいつらは協会のことしか考えてない奴が多いし。だから下っ端の奴等に声かけてみようか。それも最近入ったばっかりの新人。きっと慣れない仕事でストレスたまって癒しを必要としてると思うから」
言葉の高低が少なく、淡々と言う番犬マンさん
名探偵並の推理力(とはちょっと違うが)には感心した
ひょっとして番犬マンさんって頭がいいのだろうか・・・?
少し言葉に毒があったのは気になったがそこは気にしないで、俺の心の中にとどめておこう
「でもその前に」
クルッと猫のほうをみる
「その汚い格好どうにかしようか。人様にもらわれるんだから」
1/3ページ