第5話 犬がトラウマなんです
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犬派か猫派か。
これ永遠に解決することのない議論であろう。
そんな名無しさんは猫派であった。
これは明確な理由がある。
昔は犬も猫も好きな名無しさんであったが、とある人物のせいで犬が苦手になったのだ。
「あ、名無しさん」
ビクリ、と肩を跳ねあがらせた。
ここはC市である。この人がこんな所にいるはずがない。
おそるおそる振り返ると、白い着ぐるみを纏ったヒーローが。
S級ヒーロー12位、番犬マンだ。
「イヤアアアアアやめてくださいッッ!!!」
「相変わらず良い匂いだね」
番犬マンが一目を気にせず、名無しさんを押し倒した。
そのまま馬乗りとなり自身の鼻を名無しさんの首元に近づける。
スンスン、と動かし匂いを嗅いでいたのである。
あぁどうしてこんな目に。
目を瞑り、こうなったキッカケを思い出す。
それはいつ頃前のことかは思い出せないが。Q市に怪人を倒しに行った時のことである。
Q市は番犬マンが守っているのだから、他のヒーローを必要としないはず。
しかし、その怪人はカラスのような見た目をした、数百匹が集まり群れて行動するタイプの怪人であった。
流石の番犬マンも、一人で数百匹を討伐するのには骨が折れる。
そこで呼び出されたのが名無しさんであった。
順調に倒していき、最後の一匹となった所で事件は起きたのだ。
最後の一匹を、2人は追いかけていた。
鉢合わせとなり、バイクで走っていた名無しさんは番犬マンを避けようと飛び降りる。
そして転んだ先が番犬マンの上であった。
わぁ……! 柔らかい……! とすぐに起き上がらなかったのを今でも後悔している。
ハッと起き上がろうとしたら、番犬マンが離さなかった。
「えっ……と」
「君良い匂いするね」
この時、このままにしたのはしょうがないと思った。
転んだのは自分の方だったのだから。
頭皮がひたすらくすぐったかったが、我慢だと思った。
ここで強く拒否をしていれば良かったのに。
その日から番犬マンは名無しさんを見つけるたび、こうして匂いを嗅ぐようになったのであった。
こうして名無しさんは犬が苦手になったのである。
未だ上に乗っている番犬マンをどかそうと思ってもビクともしない。
流石S級と言うべきか。
名無しさんの力では番犬マンに適うはずがないのだ。
肌がブツブツとなっていく。
「あの……そろそろ勘弁してください……」
「だって名無しさんの匂い好きだし。ずっと嗅いでいたい」
どうしてヒーローは人の話を聞かない人ばかりなのか。
それともこちらの声が聞こえていないのか?
これでよくヒーロー協会が成り立っているものだ。
「そうだ、良いこと思いついた」
「それよりもどいてください」
「名無しさんのこと飼えばいいんだ」
「何言ってるんですか!?」
番犬マンの言葉にゾッと全身が冷たくなるのが分かる。
一緒に住むなど、そこは地獄も同然だ。
絶対にお断り。そう口にしているが番犬マンは返答しない。
周りは名無しさんたちを見ているが、誰一人として助けの手を差し伸べる者はいない。
「誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そんな名無しさんの叫びも虚しく空気に吸収されてしまう。
周囲はあの二人を付き合っている認定として見ていたのであった。
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