第17話 もうどうだっていいや。世の中学力だけじゃないよ
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ぐしゃり、と名無しさんは手に持っている紙を握りしめる。
机に突っ伏し降りかかる絶望を浴びていた。
生徒の名前を呼ぶ先生の声など聞こえていない。
「おま……26点……」
「うるせぇ」
学校の友人、ミヤギがドン引きした声で名無しさんに話しかけた。
チラリ、とミヤギを見ると自慢をするかのように96点と書かれた紙を見せびらかす。
嫌なものを見てしまった、と思いまた視界を暗くした。
暗い中、今回は小テストだから……。と必死に言い聞かせていた。
軍人貴公子はヒーローとしてだけではなく、学校でも人気だ。
まさにアイドルのような存在。
見目麗しく、ヒーローとして強く、運動もできて、勉強もできる。
人気になる要素を詰め込み、神が何個もの才能を与えても嫉妬しない。
神にも天使にも愛された完璧な人間。
と、いうのが学校での名無しさんのイメージだ。
実際の名無しさんは心配になるほど勉強ができない。
それはヒーロー業が忙しくて勉強する暇がない、なんて理由ではない。
本当に、単純に、頭が悪いのだ。
それに気づいているのは親友のミヤギだけ。
先生からは「忙しいだろうから」「周りに合わせて手を抜かなくていいんだぞ」と言われる始末。
いつも全力なのだが、という言葉は空気に溶けてしまった。
「俺デートあるから今回名無しさんに勉強教えられないわ。じゃあな」
「ミヤギの裏切りものぉぉぉぉぉ!!」
名無しさんが補習を受けずに済んでいるのはミヤギが勉強を教えてくれるからである。
それは毎回のテストでもそうだ。もっと言うならば、高校に入ってからずっと。
おかげで名無しさんは補習を受けることがなかった。
名無しさんは顔を上げる。
自分は馬鹿だった。なんでも人頼りにしていたことが恥ずかしい。
そうだ! 俺は時期国家元首!! ならばこれくらい1人でやらなければ!
そう心の中で言いながら、名無しさんは立ち上がり図書館へ向かった。
それからの名無しさんはノートにかじりつく。
教科書を1ページ目から読み、問題を解く。
場所を問わずに英語の単語帳をつぶやく。
名無しさんの頭の中は、英語と数字で埋められていた。
だが、忘れていない。
自分はヒーローだということを。
『ぶはははは! 我はエスエヌゥン!!』
「ちっ……こんな時に」
名無しさんの前に怪人が立ちふさがっている。
持っていたノートを鞄にしまい、代わりに銃を持つ。
たまたま名無しさんが帰っている途中怪人と遭遇したのだ。
怪人は現れたばかりのようで、サイレンや協会からの連絡はない。
それは好都合。
もし怪人発生が協会に知られてしまえば、報告書を提出しなければならない。
協会に行く時間が惜しい。
そして不運なことに、名無しさんは協会で厄介な人物に会うことも多いのだ。
協会にバレる前にさっさと倒して家に帰る!
目標を達成するために発砲した。
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