第13話 絶対一人はいるよな。鍋でゲテモノ入れたがる奴
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ピンポーン。
「はーい」
「来たぞー」
イナズマックスの声。
名無しさんはオートロックの扉のボタンを押す。
そして部屋の扉を開けて4人を出迎えた。
「おっじゃましまーす!」
スティンガーが元気よく部屋に入る。
その後にゲンジ、イナズマックスと続き最後尾にイアイアンがいる。
「邪魔する。これ、差し入れだ」
「やったー! ありがとう」
紙袋を受け取り中身を見てみる。
箱を見るに和菓子のようだ。
これも後で、デザートとして出そう。
「まぁ適当に座ってくれ」
名無しさんがそんな事を言わなくとも、皆はその辺に座っていた。
部屋は広く、野郎が4人座ってもまだ余裕だ。
スティンガーは何度も来ているのに、周りをキョロキョロしていた。
そしていつもこう言うのだ。
「いいなぁでかい部屋……」
溜息まじりに言うのだ。
名無しさんの部屋は15畳ほどもある。
1人暮らしでは充分な広さだ。しかもオートロック付き。
その若さで、この部屋の家賃を払えるのが尊敬と嫉妬。2つの感情で名無しさんに言う。
「ま、稼いでるし」
その鋭い言葉の刃はスティンガーだけでなく、イアイアン、ゲンジ、イナズマックスにも刺さった。
稼いでいる、即ち、強いから、と言っているようなものだ。
胸を押さえていると名無しさんがボウルを持ってきた。
続いてタコ。
そう、今日はタコ焼きパーティーだ。
きっかけは名無しさんが「タコ焼き食べたい」と言ってから。
スティンガーも食べたいと言い、イナズマックスがせっかくだから皆で、ゲンジがじゃあパーティーだなと言って開催する運びとなった。
「じゃ、頼んだぜ。俺はネギ切ってくるから」
傷が回復したイナズマックスにお玉を渡す。
イナズマックスは震える手でたこ焼き器に生地を入れた。
「うぅ、俺だって頑張れば住めるもん……」
「やめておけイナズマックス。スニーカー購入できなくなるぞ」
「ゲンジィ……」
いいから手を動かせ、と言われて名無しさんが台所で用事を済ませてきたことに気づいた。
イアイアンがタコを入れている時、スティンガーがニヤニヤしながら自分の持ってきた荷物に手をかけた。
そして袋から出してきたのは、チョコレートとチーズだ。
タコパならば、メジャーな具材ともいえる。
名無しさんとイアイアンは胸を撫でおろした。
またろくでもない具材を持ってくるのかと思ったからだ。
前に鍋パーティーをした時は酷かった。
塩辛やら海苔の佃煮やら……鍋に入れないものばかり持ってきて、食べることが困難な鍋ができたのだ。
今回のタコパは安全のようだ。
「あと、これも入れよう!」
そう言って、ドン!とテーブルの上に置いたのはなめ茸と梅干しだ。
ヒュッ、と顔が青ざめる名無しさん。
まさかたこ焼きに入れるものではないよな?
白米炊こうか?
「ロシアンタコ焼きやろうぜ!」
スティンガーのサムズアップの親指をへし折りたい。
こんな事されたら……
「面白そうじゃん!」
「やるか!」
イナズマックスとゲンジが乗り気である。
こうなったら多数決では負けだ。
「ほらぁ!」
諦めるしかない。
イアイアンが名無しさんの肩に手を乗せる。
それは「頑張ろう」という意味合いがあった。
「でも第一陣は普通に作るからな!」
その気持ちはイアイアンも同じだったようで、たこ焼き器に全てタコを入れていたようだ。
グッジョブ。そのジェスチャーをイアイアンに送る。
ジュウ、ジュウ、という音が響き、美味しそうな匂いが部屋に立ち込める。
早く食べたい気持ちを抑える。
「早く乾杯したいだろうから、ほら」
名無しさんが立ったと思ったら、冷蔵庫から小皿を出してきた。
皿の上には綺麗な色の野菜が乗ってある。
名無しさんの自家製ピクルスだ。
これをつまみながら、たこ焼きを食べようというわけだ。
お酒飲めないのに、酒飲みの気持ちが分かる名無しさんをスティンガーとイナズマックスは崇めた。
「それじゃあ……」
ゲンジがコップを上げる。
「「「「「かんぱーい!」」」」」
コップをぶつけ、中身を飲む。
名無しさんとゲンジはジュース、イアイアンとスティンガーとイナズマックスはお酒だ。
ゲンジは成人しているがお酒が飲めないらしい。
食の好みも、お酒が飲めない者同士でも、こうして集まって一緒にテーブルを囲むのは奇跡であった。
本当は、昔ヒーロー協会に入るのは乗り気ではなかった。
でも、今はヒーロー協会に入って良かったと心の奥底から思う。
こうして友達ができたのは、ヒーローになったから。
「どうした、ニヤニヤして」
イアイアンが名無しさんを見て言う。
「いや、楽しいなって」
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