第99話 スカウトにはなびきません
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「おーいフォルテ」
言われた病室に行けば、フォルテはどこかへ行ったとの事。
アイツッ……呼び出しておいて……!!
フルーツカゴを持つ手に力が入る。
もう歩けないぐらいの大怪我と言っていたのに。
看護婦にどこへ行ったか聞けば、104号室に行ったとの事。
サイタマの部屋になんの用事があるのか。
考えていても仕方ない。
このフルーツはエアーへとあげる事にした。
外へ出て駐車場へと行く。
するととある人物に声をかけられた。
「初めまして、元ヒーロー協会のA級ヒーロー、軍人貴公子さん」
「誰だ?」
「我々はネオヒーローズと申す者です」
立ち話も何だから、とB市のカフェへ行こうと言う。
話だけでも聞いてほしいと粘り強くお願いされたため、渋々と名無しさんは承諾した。
スカウトマンはタクシーで、名無しさんはバイクで指示されたカフェへ辿り着く。
座って注文をして、スカウトマンは話し始めた。
スカウトマンが言うには、一部ヒーローによる戦闘時の過剰破壊行為や連携が取れず敗北を重ねるプロヒーロー達の姿を見て民衆からの信用は失堕。
などなど、30分ほど説明を続けた。
今のまま変わらなければヒーロー協会は潰れるかもしれない、と。
名無しさんは机に置かれたミルクティーを飲む。
スカウトマンも長く喋ったことによる渇きをアイスコーヒーで潤す。
ちらり、と名無しさんを見るとその顔は真面目なものだった。
いける! あともう一押しだ!!
スカウトマンは続けた。
「実はあのS級ヒーロー、童帝、金属バット、クロビカリもネオヒーローズに移籍します」
「……」
「ネオヒーローズはヒーロー協会の人員も移籍します。だからご安心ください」
名無しさんの視線がスカウトマンに移る。
初めて目が合った。
スカウトマンはひくり、と方眉が動いてしまった。
まるで輝く宝石を見たように、アフロディーテを見てしまったかのような気持ちになったから。
美しい。一言で表せばそうだ。
「話は分かった。確かに合理的だ」
「! では」
「でもごめんなさい。俺はヒーロー協会を裏切れない」
持っていたアイスコーヒーを机に置く。
そして改めてスカウトマンの目を見た。
「俺は、師匠の傍にいたいから!」
「?」
「俺がヒーロー協会に入った理由は勿論家の事もあるが……でも、何よりも師匠がヒーロー協会にいたからなんだよな。俺がS級目指していたのも師匠に少しでも近づきたくて……今は協会を辞めているが師匠が協会にいる限りは、」
「ま、待ってください!」
名無しさんが喋る口を止める。
「そ、そんなくだらない理由で……?」
「くだらない理由?」
名無しさんが立ち上がる。
全身には殺気が巡っており、店内にいた客は全員震えてしまう。
「師匠の事馬鹿にしたな? 表出ろ……」
「ヒ、ヒェッ」
名無しさんがスカウトマンの胸倉を掴み、店の出入り口に行く。
スカウトマンは驚く。
まさかこんな小柄な奴に持ち上げられるとは。
名無しさんの目を見る。
それは怒りに満ちて目の前しか見ていないような顔であった。
ウィン、と自動ドアが開く。
すると名無しさんはスカウトマンを離した。
おかげでスカウトマンはお尻を思いっきり床へとぶつけてしまう。名無しさん
痛みに悶えていたせいで、名無しさんの目の前にいる人物に気づかなかった。
そこにいた人物は、
「師匠!」
「ここにいたか」
閃光のフラッシュだ。
「ど、どうして師匠がここに!?」
「そろそろ行こうと思っていてな。一緒に来い」
「は、はい!!」
フラッシュが名無しさんに背を向け歩く。
その背中を追いかけて名無しさんは店から出ていった。
自動ドアの範囲外に行く前に名無しさんは振り返る。
「お代! よろしくな」
そう言って、フラッシュと名無しさんはどこかへと行ってしまった。
誰もが思っただろう。
どうしてここに閃光のフラッシュが、と。
実はフラッシュは名無しさんの携帯にGPS機能をつけていた。
名無しさんがどこにいても携帯を見ればどこにいれば分かるのだ。
こんなストーカーじみた事をしているのは、誰も知らない。
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