疑心が鬼となる。鬼はやがて自分を殺す
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※ヤンデレ注意
おそらく微グロかもしれない
「最近、どうしたんだい?」
「・・・わかりません」
白い部屋に、白い白衣
鼻を刺す刺激的な匂いにはもう慣れてしまっていた
もうここ三ヶ月で何回病院へと通っているだろうか
差し出す右腕は皮膚がなくなり肉が丸出しである
応急処置をしたものの視線を外れるほどの火傷である。自分でも見たくないぐらいだ
外気に触れ続けている限りジュクジュクとした痛みはひどい
幸いであるのは右腕で済んでいることか
「災難だったねぇ。協会のボイラーが突然爆発するなんて」
そう。今日偶然協会のボイラー室の横を通ったら爆発したのだ
反応が良かったため全身火傷の被害にはあっていない
包帯を巻かれてやっと痛みが緩和された
もう、包帯を巻かれていない部位は右腕だけであったのに
「気をつけてね、貴公子君。たぶん・・・他の人にも相談したほうがいい」
「ありがとうございます」
深くお辞儀をして病院を出た
家へ帰ろうとバス亭まで歩く
暖かな陽が外全体を包んでくれていい気分だ
だが気分というのは所詮雰囲気に似たようなもので、現実を放ってはおかない
「いっ・・・つ・・!」
突然脇腹が突き刺されたように痛んできた
歩くのが困難と判断したためすぐ傍にあった茶色のブロックでできた花壇へと腰をかける
おそらく一昨日に怪我をした痛みが再発してしまったのだろう
冷や汗が内から出てくる感覚に肩を狭めた
髪を掻きあげ、少しでも間際らせようと空を見上げる
清々しいほどの晴天。こんな日は元気に友人達と遊びたかったものだ
・・・最近、怪我が多い
今は頭にも腕にも胸にも腰にも足にも包帯やガーゼがパッチワークのように貼られている
原因は怪人討伐や自然にできたものではない
明らかに故意的につけられたものばかりだ
始まりは三ヶ月前からであった
最初は事故だと思っていたが、あきらかに多発すぎるし仕組まれているとしか思えない
突然鉄骨が落ちてきたり、木が倒れてきたり、腰かけるものが壊されていたり・・・
脇腹はバイクに乗っていたら突然操縦がきかなくなり、人を轢いてしまいそうになったため大きくハンドルを回して回避したときに強打してしまったものである
もちろんバイクは故障
後にバイクには誰かの手によって操縦がきかなく改造されたのだと知った
今まで疑心であったがその知らせを聞いた昨日、確信した
―誰かに命を狙われていると
一体誰が?何の目的で?
普通の一般人がやるとは考えられない。そんなの気配とか素人がやることなんて気づくに決まっている
怪人だなんてこんな影でコソコソでいつまでもやっているわけもないだろう
暗殺者だったとしても姿を現してもいいはず
・・・こんなことは言いたくないが
犯人はヒーローの誰かだと思う
そう思ったのは今日のボイラー室での爆発でまたしても疑心が確信になった
他の事故も合わせ、協会内のことをよく知る人物ではないとできない
高潔な精神ではないといけないのだから疑いたくはなかったが
「あ。・・・あー、次のバスでいいや」
目の前に自宅の近くのバスターミナル行きのバスが行ってしまった
まぁ仕方ない。時刻表を調べると次のバスは二十分後であった
それまでここでゆっくりしていよう
家に着き、やっと安心して座れる
外にいるといつ事故が起きるか分からずいつも周りを気にしてばかりであった
いつ、どこで、何をされるかわからない
自分も弱くなったものだ
コップ一杯より少なめなお茶を飲み終えると、チャイム音
確認してみるとそこには友人達の姿が
「おーい名無しさんー!」
元気に手を振っているのはスティンガーで、それに当たったらしいイナズマックスが喧嘩を始めようとして、ゲンジはただ傍観しているだけだった。その三人を「やめないか」と抑えてくれてるのがイアイであった
いつも通りの四人である
その光景に少しだけ頬が緩んでしまった
ドアを開け、四人を迎える
「久しぶり、だな」
「・・・すまん」
お茶を淹れようとしたらイアイがポットを俺の手から取る
「座ってていい」と言われたのでお言葉に甘えるとしよう
久しぶり。確かにそうだ。
「誰かのせい」と疑心を持った時から、自然と人と会うことを避けていた
もちろん協会に呼び出された時や怪人が出没したときなどは外に出なくてはならなかったが
人と接触をすることが無意識に怖くなっていたのだ
「あれ?名無しさんカーテン替えたな」
「あぁ。結構前にだよ」
イナズマックスがカーテンを指差す
「最近ゲンジ身長伸びたって言うんだけどよー、名無しさんどう思う?」
「絶対伸びたよな、名無しさん信じてるぞ」
「ハハ、何だよそれ」
何気ない会話を振ってくれて、怪我のことには一切触れないで
気を使ってくれているのだろう
だからこそ、俺のことをきちんと見れないのもわかっていた
目の前に差し出された紅茶には頬にはガーゼ、額には包帯、それに表面上だけの、上辺だけの表情が映し出されていた
こんな痛々しい姿見ていられないだろう
あえて触れないで、普段の会話をして励まそうとわざわざ来てくれたのだ
笑わないと。笑わないとな
「みんな、ありがとう」
そう言うとみんなも笑ってくれたのは、俺がきちんと笑えてたからだろう
良かった。きちんと、笑えてた
あまり長居すると悪いから、と四人は一杯の紅茶で帰っていった
わざわざ飲んだものを洗ってもらって申し訳ない
心配して来てくれたのだろう。自分は本当にいい友人を持ったと思う
久しぶりに楽しかった時間であった
楽しかった時間の余韻をそのままに一日を終わらせようとこのままベッドへ倒れてしまおうかと思ったが
ピンポーン
またしても来客が
誰だろうか。またお見舞いに?
画面を見ると
「・・・うわ何でだよ」
アマイマスクであった
手にはなにやら持っている
居留守を使っても良かったがわざわざ来てくれたのだ
仕方なく中へと入れた
「せっかく来てやったのに随分と不服そうだね?」
「ソンナコトナイヨアリガトウ」
「真顔なんだけど」
まるで自分の家に帰ってきたかのように、自然にリビングへ行く姿にツッコミをいれたくなったがツッコンだら負けである
またポットを用意しなくてはいけないのか
戸棚に手をかけると止められた
いらない、ということなのだろう
長居する予定ではないらしい
「これ」
「?。何」
「お見舞い品。開けていいよ」
どれどれ・・・と見てみると中にはパステルな黄色の箱
「あれ、これってもしかして・・・!!」
「君が言ってたお店だろ」
「マジか!!マジか!!ありがとう!!」
結構前に俺が騒いでいた洋菓子店のものであった
もう一度お礼を言う
クソ・・・こいつってこう言う時だけかっこいいことするんだよな・・・
「さて、本題に入るんだけど」
まさかお見舞いだけではないだろうと思っていた
これはおそらく説教だと予想した
それ以外にありえないだろう。アマイがわざわざ来るということは
A級二位ともあろう者がこんな怪我だらけで、人を怖がって、怖いことから逃げて
ヒーローだから、ということではない
人間として、逃げるなんて恥ずかしいことだ
わかってるんだ。自分でも
顔を斜め下気味に向けて視線だけをアマイに向けた
アマイは俺のほうなんて見ず、窓のほうを見ている
「怪我、どうなの」
「んー・・・まぁ痛いけど、しばらくすれば治るよ」
「ふぅん。まぁしばらくは大人しくしていなよ。そんな格好でヒーローなんて頼りない」
「おう」
どうやらお説教ではなかったらしい
言葉こそ遠いが心配してくれていた
アマイは分かりづらいな。俺じゃなかったら凹んでいる
心配してくれてるんだから、笑わないと。笑顔でお礼を言わないと
「アマイ、ありがとう」
「・・・嘘はいいよ」
アマイが俺の顔を見た
「え?」
「その顔、嘘でしょ。それで笑えてると思ってるの?」
アマイに言われた言葉に心臓に突き刺さるように痛んだ
いや、いや、だって、さっきはできてたじゃないか。笑顔でお礼言えてたじゃないか
さっきイアイ達に見せた顔と同じように顔を動かしているはずなのに、何故
「作った顔なんてザラに仕事でやってるからわかるんだけど、全然笑えてないから」
ついにアマイの顔が見れなくなった
それは図星だったから。アマイの言う通りで、心の底から笑っていない
「怖いんだろ、あいつらが。それで疑ってる自分を殺したいと思ってる。違う?」
何も言い返せない。アマイが俺の気持ちをすべて言う。自問自答をしているみたいだ
そうだ。俺は疑っている
A級みんなを。・・・心配して来てくれた友人さえも
こんなことを思っている自分が恨めしいしいっそ、死んでしまえばいいのにと思う
きっかけは、怪我の多発の一ヶ月より少し前ほどだろうか
こんなことがあった
「えぇ、それではそれぞれ順位を一つずつ上にということで・・・」
C級の一人が怪人を倒すために命を落としてしまったらしい
当然それ以下の者たちはランクが上がった
「やったーラッキー!何もしてないのに順位が上がったぜ!!」
「死んでくれた奴に感謝だな」
命を張って、大勢を救ったというのにヒーローはその死を喜んでいた
もしかしたら、とここで疑心の種が植えられてしまったのだ
疑心の種はほっといてしまった。
種は成長を続け、芽を出し今だ成長を続ける
俺が、死んだからみんなは得をする
それが事故死などであれば尚更咎めるものはない
・・・あぁ、自分は最低だ。こんな人間、死んで当然だ
アマイの立ち上がる姿が視界の上のほうに少しだけ見えた
おそらく帰るのだろう
こんな俺に呆れただろうか、失望だってしているかもしれない
下を俯いたままでいると、頭に手を置かれた
そろりと見上げるとアマイが俺の後ろに立っている
「こんなことが続けば誰だって疑心暗鬼になる。そんなに自分を責めて、自分をダメにするな」
「・・・うん」
「何だったら傍にいたらいい。守ってあげるから。僕は君の敵になる理由がないからね、信頼してくれていい」
「・・・ありがとう」
「じゃあね。明日、集まりがあるが・・・無理しなくていい」
「珍しく優しい気持ち悪」
「殴るよ?」
「ごめんなさい」
思わず笑ってしまった
・・・久しぶりではないだろうか。心の底から笑ったのは
アマイが帰るのを見送った
明日は集まりがあったのか。知らなかった
逃げるのは、やめてみようか
そう決意してベットへと入った
おそらく微グロかもしれない
「最近、どうしたんだい?」
「・・・わかりません」
白い部屋に、白い白衣
鼻を刺す刺激的な匂いにはもう慣れてしまっていた
もうここ三ヶ月で何回病院へと通っているだろうか
差し出す右腕は皮膚がなくなり肉が丸出しである
応急処置をしたものの視線を外れるほどの火傷である。自分でも見たくないぐらいだ
外気に触れ続けている限りジュクジュクとした痛みはひどい
幸いであるのは右腕で済んでいることか
「災難だったねぇ。協会のボイラーが突然爆発するなんて」
そう。今日偶然協会のボイラー室の横を通ったら爆発したのだ
反応が良かったため全身火傷の被害にはあっていない
包帯を巻かれてやっと痛みが緩和された
もう、包帯を巻かれていない部位は右腕だけであったのに
「気をつけてね、貴公子君。たぶん・・・他の人にも相談したほうがいい」
「ありがとうございます」
深くお辞儀をして病院を出た
家へ帰ろうとバス亭まで歩く
暖かな陽が外全体を包んでくれていい気分だ
だが気分というのは所詮雰囲気に似たようなもので、現実を放ってはおかない
「いっ・・・つ・・!」
突然脇腹が突き刺されたように痛んできた
歩くのが困難と判断したためすぐ傍にあった茶色のブロックでできた花壇へと腰をかける
おそらく一昨日に怪我をした痛みが再発してしまったのだろう
冷や汗が内から出てくる感覚に肩を狭めた
髪を掻きあげ、少しでも間際らせようと空を見上げる
清々しいほどの晴天。こんな日は元気に友人達と遊びたかったものだ
・・・最近、怪我が多い
今は頭にも腕にも胸にも腰にも足にも包帯やガーゼがパッチワークのように貼られている
原因は怪人討伐や自然にできたものではない
明らかに故意的につけられたものばかりだ
始まりは三ヶ月前からであった
最初は事故だと思っていたが、あきらかに多発すぎるし仕組まれているとしか思えない
突然鉄骨が落ちてきたり、木が倒れてきたり、腰かけるものが壊されていたり・・・
脇腹はバイクに乗っていたら突然操縦がきかなくなり、人を轢いてしまいそうになったため大きくハンドルを回して回避したときに強打してしまったものである
もちろんバイクは故障
後にバイクには誰かの手によって操縦がきかなく改造されたのだと知った
今まで疑心であったがその知らせを聞いた昨日、確信した
―誰かに命を狙われていると
一体誰が?何の目的で?
普通の一般人がやるとは考えられない。そんなの気配とか素人がやることなんて気づくに決まっている
怪人だなんてこんな影でコソコソでいつまでもやっているわけもないだろう
暗殺者だったとしても姿を現してもいいはず
・・・こんなことは言いたくないが
犯人はヒーローの誰かだと思う
そう思ったのは今日のボイラー室での爆発でまたしても疑心が確信になった
他の事故も合わせ、協会内のことをよく知る人物ではないとできない
高潔な精神ではないといけないのだから疑いたくはなかったが
「あ。・・・あー、次のバスでいいや」
目の前に自宅の近くのバスターミナル行きのバスが行ってしまった
まぁ仕方ない。時刻表を調べると次のバスは二十分後であった
それまでここでゆっくりしていよう
家に着き、やっと安心して座れる
外にいるといつ事故が起きるか分からずいつも周りを気にしてばかりであった
いつ、どこで、何をされるかわからない
自分も弱くなったものだ
コップ一杯より少なめなお茶を飲み終えると、チャイム音
確認してみるとそこには友人達の姿が
「おーい名無しさんー!」
元気に手を振っているのはスティンガーで、それに当たったらしいイナズマックスが喧嘩を始めようとして、ゲンジはただ傍観しているだけだった。その三人を「やめないか」と抑えてくれてるのがイアイであった
いつも通りの四人である
その光景に少しだけ頬が緩んでしまった
ドアを開け、四人を迎える
「久しぶり、だな」
「・・・すまん」
お茶を淹れようとしたらイアイがポットを俺の手から取る
「座ってていい」と言われたのでお言葉に甘えるとしよう
久しぶり。確かにそうだ。
「誰かのせい」と疑心を持った時から、自然と人と会うことを避けていた
もちろん協会に呼び出された時や怪人が出没したときなどは外に出なくてはならなかったが
人と接触をすることが無意識に怖くなっていたのだ
「あれ?名無しさんカーテン替えたな」
「あぁ。結構前にだよ」
イナズマックスがカーテンを指差す
「最近ゲンジ身長伸びたって言うんだけどよー、名無しさんどう思う?」
「絶対伸びたよな、名無しさん信じてるぞ」
「ハハ、何だよそれ」
何気ない会話を振ってくれて、怪我のことには一切触れないで
気を使ってくれているのだろう
だからこそ、俺のことをきちんと見れないのもわかっていた
目の前に差し出された紅茶には頬にはガーゼ、額には包帯、それに表面上だけの、上辺だけの表情が映し出されていた
こんな痛々しい姿見ていられないだろう
あえて触れないで、普段の会話をして励まそうとわざわざ来てくれたのだ
笑わないと。笑わないとな
「みんな、ありがとう」
そう言うとみんなも笑ってくれたのは、俺がきちんと笑えてたからだろう
良かった。きちんと、笑えてた
あまり長居すると悪いから、と四人は一杯の紅茶で帰っていった
わざわざ飲んだものを洗ってもらって申し訳ない
心配して来てくれたのだろう。自分は本当にいい友人を持ったと思う
久しぶりに楽しかった時間であった
楽しかった時間の余韻をそのままに一日を終わらせようとこのままベッドへ倒れてしまおうかと思ったが
ピンポーン
またしても来客が
誰だろうか。またお見舞いに?
画面を見ると
「・・・うわ何でだよ」
アマイマスクであった
手にはなにやら持っている
居留守を使っても良かったがわざわざ来てくれたのだ
仕方なく中へと入れた
「せっかく来てやったのに随分と不服そうだね?」
「ソンナコトナイヨアリガトウ」
「真顔なんだけど」
まるで自分の家に帰ってきたかのように、自然にリビングへ行く姿にツッコミをいれたくなったがツッコンだら負けである
またポットを用意しなくてはいけないのか
戸棚に手をかけると止められた
いらない、ということなのだろう
長居する予定ではないらしい
「これ」
「?。何」
「お見舞い品。開けていいよ」
どれどれ・・・と見てみると中にはパステルな黄色の箱
「あれ、これってもしかして・・・!!」
「君が言ってたお店だろ」
「マジか!!マジか!!ありがとう!!」
結構前に俺が騒いでいた洋菓子店のものであった
もう一度お礼を言う
クソ・・・こいつってこう言う時だけかっこいいことするんだよな・・・
「さて、本題に入るんだけど」
まさかお見舞いだけではないだろうと思っていた
これはおそらく説教だと予想した
それ以外にありえないだろう。アマイがわざわざ来るということは
A級二位ともあろう者がこんな怪我だらけで、人を怖がって、怖いことから逃げて
ヒーローだから、ということではない
人間として、逃げるなんて恥ずかしいことだ
わかってるんだ。自分でも
顔を斜め下気味に向けて視線だけをアマイに向けた
アマイは俺のほうなんて見ず、窓のほうを見ている
「怪我、どうなの」
「んー・・・まぁ痛いけど、しばらくすれば治るよ」
「ふぅん。まぁしばらくは大人しくしていなよ。そんな格好でヒーローなんて頼りない」
「おう」
どうやらお説教ではなかったらしい
言葉こそ遠いが心配してくれていた
アマイは分かりづらいな。俺じゃなかったら凹んでいる
心配してくれてるんだから、笑わないと。笑顔でお礼を言わないと
「アマイ、ありがとう」
「・・・嘘はいいよ」
アマイが俺の顔を見た
「え?」
「その顔、嘘でしょ。それで笑えてると思ってるの?」
アマイに言われた言葉に心臓に突き刺さるように痛んだ
いや、いや、だって、さっきはできてたじゃないか。笑顔でお礼言えてたじゃないか
さっきイアイ達に見せた顔と同じように顔を動かしているはずなのに、何故
「作った顔なんてザラに仕事でやってるからわかるんだけど、全然笑えてないから」
ついにアマイの顔が見れなくなった
それは図星だったから。アマイの言う通りで、心の底から笑っていない
「怖いんだろ、あいつらが。それで疑ってる自分を殺したいと思ってる。違う?」
何も言い返せない。アマイが俺の気持ちをすべて言う。自問自答をしているみたいだ
そうだ。俺は疑っている
A級みんなを。・・・心配して来てくれた友人さえも
こんなことを思っている自分が恨めしいしいっそ、死んでしまえばいいのにと思う
きっかけは、怪我の多発の一ヶ月より少し前ほどだろうか
こんなことがあった
「えぇ、それではそれぞれ順位を一つずつ上にということで・・・」
C級の一人が怪人を倒すために命を落としてしまったらしい
当然それ以下の者たちはランクが上がった
「やったーラッキー!何もしてないのに順位が上がったぜ!!」
「死んでくれた奴に感謝だな」
命を張って、大勢を救ったというのにヒーローはその死を喜んでいた
もしかしたら、とここで疑心の種が植えられてしまったのだ
疑心の種はほっといてしまった。
種は成長を続け、芽を出し今だ成長を続ける
俺が、死んだからみんなは得をする
それが事故死などであれば尚更咎めるものはない
・・・あぁ、自分は最低だ。こんな人間、死んで当然だ
アマイの立ち上がる姿が視界の上のほうに少しだけ見えた
おそらく帰るのだろう
こんな俺に呆れただろうか、失望だってしているかもしれない
下を俯いたままでいると、頭に手を置かれた
そろりと見上げるとアマイが俺の後ろに立っている
「こんなことが続けば誰だって疑心暗鬼になる。そんなに自分を責めて、自分をダメにするな」
「・・・うん」
「何だったら傍にいたらいい。守ってあげるから。僕は君の敵になる理由がないからね、信頼してくれていい」
「・・・ありがとう」
「じゃあね。明日、集まりがあるが・・・無理しなくていい」
「珍しく優しい気持ち悪」
「殴るよ?」
「ごめんなさい」
思わず笑ってしまった
・・・久しぶりではないだろうか。心の底から笑ったのは
アマイが帰るのを見送った
明日は集まりがあったのか。知らなかった
逃げるのは、やめてみようか
そう決意してベットへと入った
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