まぁ僕って世界に愛されてる人間だから
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ヒーロー協会待合室
スティンガー、ゲンジ、イナズマックスは横長いテーブルに沿って三人は立っている
誰も何も喋らない
電灯が広いテーブルに光を集めているかのようだった
最初に無言を切ったのはゲンジである
「さて・・・これはどうするべきか」
これ、とはテーブルに置いてある物を指している
黒いテーブルに小さく置かれた瓶
中には綺麗なオレンジ色な液体が入っている
あきらかに普通の飲み物ではないことがわかった
おそらく誰かの忘れ物だろう。確認してみたが開封はされていない
更に瓶を確認してみると瓶の底には「童帝」という綺麗な子供の字で書いてあった
一同は理解する
もし、ここで一人でも心が綺麗な者がいたら持ち主の童帝かスタッフに届けるだろう
しかしこの三人である
三人は顔を合わせた
「これ、面白いものだと思うんだけどゲンジどう思う?」
「いやでももしかしたら危ないものかもしれないな。そこらへんはどう思う、イナズマックス」
「そうだな、誰かに一回試してもらって・・・」
「あー疲れた」
話の続きを遮るように自動ドアから入ってきたのは名無しさんである
元々彼らは遊びに行く約束をしていた
だが名無しさんが怪人が現れたということで出動が要請されてしまったのだ
ということで、協会へと待ち合わせとなったのである
イアイアンは稽古があるため遅れて来るそうだ
三人は顔を合わせ、ヒーローとは思えないような悪い顔で笑う
もちろん名無しさんには見えないように
その後ろで名無しさんは少しのハテナマークを頭に浮かべていた
「名無しさん!疲れてるだろ?」
と、先ほどの悪巧みの笑顔とは違い爽やかな笑顔でイナズマックスが名無しさんに言う
「え?ま、まぁ・・・」
「じゃあこれやるよ!栄養ドリンク」
机の上に置いてあったオレンジ色の液体が入った瓶を渡した
「は?何だこれ。こんな色のドリンクあるのか?」
さすが様々な被害にあっている名無しさんだ。用心深い
「お前知らないのか?ネットで話題になってた栄養ドリンクだぞ。せっかくゲットできたから持ってきたんだ」
「へぇ」
「名無しさんにはいつも世話になってるからな。だから名無しさんにやろうと思って」
と、言うのはゲンジだった
さすがゲンジである。この三人の中では機転が利くほうである
名無しさんは瓶を両手で持ち
「お、お前らありがとう・・・!!」
すぐに信じてしまうところが名無しさんの良い所でもあるが悪い所でもある
今までそれで何度スティンガーやイナズマックスに騙されたことか
でもそんな名無しさんがいるからこそ、一緒にいる時間が楽しいことは三人ともわかっていた
「ささ、グビーッといけよ!」
「いただきます!」
瓶の蓋を開け、勢いよく飲む
疲れて喉が渇いていたところへの水分は大変染みるものだった
「何かすげぇ甘ったる・・・ふぁっ」
「「「!?」」」
名無しさんが倒れた
まさかの事態に三人は身体の反応が遅れ床へと倒れていく名無しさんを見送くってしまう
呆然としていたが、名無しさんの眠っているような顔を見て正気に戻る
「名無しさん大丈夫か!?」
「これ・・・気失ってるぞ」
「おいおい、やばいんじゃないか」
スティンガーは座って、ゲンジは立ったまま、イナズマックスは立てひざで名無しさんを見ていた
名無しさんの綺麗な顔とは違い三人は眉間に溝を作っている
スティンガーなど今にも泣きそうだ
もしかしたら毒だったのかもしれない、とゲンジが言う
二人は否定の言葉を出そうと思ったがその可能性も否めなく歯を食い縛った
S級ヒーローの天才である。そりゃ怪人の倒し方だって色々考えるだろう
そのほとんどが機械によるものだったとしても、毒や薬で倒すときだってあるだろう
もしかしたら・・・それは、これだったかもしれない
「名無しさん!!起きてくれ!!名無しさん!!」
必死に名無しさんの胸倉を掴んで叫ぶのはスティンガーだった
だが聞こえてないように、その声が存在しないかのように名無しさんはいつまでも瞼を閉じたままだ
「とりあえず医務室へ運ぶのが先だ」
ゲンジがそう言ってスティンガーは静かに名無しさんを離した
なんて事をしてしまったんだ俺達は。
三人は心の奥底からそう思っていた
だがやってしまった後ではもうどうしようもない
こんなことが後悔になるなんて思っていなかった
イナズマックスが名無しさんを抱きかかえようと腕を伸ばした
「う、うぅ・・・」
「「「!!」」」
うめき声を上げた
そしてゆっくりと花が開く瞬間のように睫が開かれていく
そして片手は床、もう片手は後頭部をさすって上半身を起こした
「・・・俺、」
「名無しさん!よかった・・・」
安堵の息を下ろす三人
スティンガーは脇を閉め震えたのち腕を広げ名無しさんへ抱きつこうとした
名無しさんは唇に薄く弧を描き―・・・
「だいぶ遅れてしまったな」
小走りするイアイアン
走るたびにかすかな金属音がほぼ無音に等しい協会の廊下へと響いていた
またいつものメンバーでご飯の約束をしていたが門下生の後輩がやらかし遅れてしまったのだ
名無しさんも怪人が出た、と言っていたがおそらくもうここにいるだろう
待合室の扉の前へ立ち、センサーが反応して扉が開いた
「すまない待たせた・・・っ!?」
部屋へ一歩踏み出そうとしたが逆に一歩後ろへ下がってしまった
その部屋では何が行われたのか、何が起きているのか何一つ理解ができない状況であった
もしかしたら夢なのかも、と普段なら思わないことでさえイアイアンの頭に浮かんでしまう
「イアイ」
彼の名前を呼ぶのはその部屋で唯一立っている者、名無しさんだ
凛としたアルトボイスが艶やかに耳へ届く
他のもの達は床へ倒れていた
理解のできていない状況に名無しさんへの返事が遅れた
おそらくこの状況の主犯であろう名無しさんは倒れている者がいるにも関わらず薄ら笑いを浮かべたままだった
その表情にイアイアンは背筋に熱を感じるものがつたうものを感じる
「こ、これは一体何が起きたんだ?名無しさんがやったのか?」
「んー?どうだろうな」
「どうだろうって・・・」
そんなことはどうでもいい、という風な名無しさんにイアイアンは理解が程遠くなる
大切な友人が倒れているのに冷静でいられるわけがない
それは名無しさんも同じはずであるだろうに
革靴の音を立て名無しさんがこちらへ来た
彼の名を呼ぼうとした瞬間、腕を引っ張られまったく力の入ってなかった身体は引っ張られる方向へ
引っ張られた先は椅子であった
背もたれのついていて、クッション性の椅子のおかげでまったく痛くない
「おい名無しさん!」
「イアイ」
ギシ、と椅子が音を立てる
名無しさんはイアイアンの顔の真横に手をついていた
顔が、近い
至近距離で見る名無しさんの顔はとても綺麗でイアイアンは息をする暇もない
いつまでもその顔が見つめることができなくてついに顔を背けた
「名無しさん、やめ」
「何でこっちみてくれねーの?」
「いいからどくんだ」
「こっち向いてくれたらいいよ」
おかしいおかしいおかしい!!
イアイアンは未だ状況が理解できていないがたった一つ頭に浮かぶのは名無しさんがおかしいということだけであった
何がおかしい、と説明はできないが確実にいつもの名無しさんではない
だが一先ず名無しさんにどいてくれることが最優先だと思ったイアイアンは恐る恐る名無しさんの顔を見た
「やーっと俺の顔きちんと見てくれた」
目を細めて笑う名無しさんに心臓が大きく動く
身体の中心にあって、筋肉や骨に囲まれているはずなのに心臓の音が名無しさんにも届いてしまわないかと心配だった
「あの、だから、早くどくん、だ」
「フフ。可愛いなイアイ」
椅子の背もたれに手をついていた名無しさんはその手をイアイの頭へ乗せぽんぽん、と軽く叩いた
「-~~っ!!??」
ついに我慢の限界に達してしまったイアイアンは両手で自分の顔を隠してそのまま停止した
何も考えられずでもとにかく自分の情けないこの顔を見て欲しくなくて
体中が熱くなりどうしようもできなくなった
当の本人の名無しさんは携帯の振動に気づき画面を開いた
「すまんちょっと呼び出されたから行ってくるな。すぐ戻ってくるから」
出て行く名無しさんにイアイアンは何も返事が出来なかった
「俺としたことが童帝きゅんにもらった物を忘れてしまうとは」
囚人服を着ているぷりぷりプリズナーは忘れ物を取りに再び協会へ戻ってきた
先ほどまでいた待合室へと行く
横開きの自動ドアが迎えてくれて中に入ったプリズナーは異様な光景に目を疑った
横たわっているスティンガー、ゲンジ、イナズマックス
椅子に座り両手で顔を隠したまま微動もしないイアイアン
「お、おいイアイちゃん何が起きた?」
そう尋ねるもイアイアンは何も答えない
そしてふっとテーブルの上を見た
「俺の童帝きゅんからもらった”イケメン口落とし”薬がない・・・?」
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