俺が理想していたのはこんなものじゃなかった
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協会から連絡がきたので、足を急ぐ
いきなり「本部へ来てくれ」なんて無茶を言うものだ
A市協会本部へ着き、中へ入る
もう何回も来ているはずだが未だにこの黒く広い空間には慣れるものではなかった
「お待ちしておりました軍人貴公子様。こちらへ」
出迎えてくれたのはオペレーターの人だった
特徴的な制服はこの真っ黒い協会の雰囲気を語ってくれる
実際無駄のない動きや丁寧な口調、これらからオペレーターの方達は協会の大部分を支える役割を果たしていることがわかる
流れるように案内された部屋へ入る
オペレーターの人はおじぎをして自分の仕事へ戻った
部屋の中は会議室ではないので大人数が入れるほどではないが、それでも一つの部屋としては広い
その中央にはテーブルが置かれている
椅子は用意されてあったので二つ置いてあった
もうすでに一つは先客がいたようだが
「お前も呼び出されてたのか」
「まぁね。だいぶ遅かったじゃないか、名無しさん」
「うるせぇ。勉強してたんだっつーの」
「・・・努力しても身にならなかったら諦めたほうが人生効率良いよ?」
「ぶった斬るぞ」
珍しくもう一人呼び出されてたのがアマイマスクであった
協会はアマイが俳優や歌手で忙しいことをわかっているので呼び出したりはしなかった
確かに任務で頻繁にアマイマスクを頼りたいことはあったらしいが、アマイマスクが社会的に人気を出すことによってヒーロー協会も名が売れるのでそこは口を出したりはしない
だが、今回アマイと俺を呼び出すだなんてよっぽどのことがあるのだろう
A級一位と二位が同じ任務をするということは重い責任も同時に請け負うこととなる
心して挑まなければ
「すまない待たせてしまって」
入ってきたのは幹部の人だ
彼はテーブルの前に立つ
照明の角度のせいで彼の顔の影が深くなる
「早速で申し訳ないが、今回君たちにお願いしたいのは潜入だ」
任務の内容に自然と背筋が伸びてしまった
――任務の内容はこうだ
とある協会のスポンサーが武器の裏取引をしているとの噂を聞いたらしい
当然正義の象徴であるヒーローはそれを見過ごすわけにはいかない。例え設立や運営の手助けをしてもらっていても
さっそく他のヒーローを使い噂の尻尾を掴もうとしたが中々できなかった。むしろ尻尾を自ら振り我々を翻弄しているようにも見える、と
決定的な証拠が掴めないため何も言えないらしい
莫大な寄付金、人件を協会は受け取ってしまっているためあまり前面的には公開や他に協力を頼むこともできない
だがチャンスがきたようだ
今度サポンサーの息子が誕生日らしい
そのためパーティーを開くそうだ。もちろん会場はスポンサーの自宅
裏取引の証拠を掴む絶対的なチャンス
そこで君たちに潜入を頼みたい
とのことであった
話が終わったところでアマイが組んでいた腕をといた
その腕は肘はテーブルに、手は顔に置いて頬杖をついた
「どうして僕たちなんだ?潜入ならもっと適役がいるだろう。S級の閃光のフラッシュとか」
「てめぇ師匠のこと呼び捨てにしてんじゃねぇよ斬るぞきちんとさんづけしろお前が呼び捨てにしていい人間じゃなねぇんだよ師匠はもうむしろ様づけ、」
「名無しさん黙ってて」
「ン゛ンーー!!」
頬杖をついていない逆の手で口を塞がれてしまった
中々強い力で塞がれてしまっているためほどくのは難しい
幹部の人にも「静かに」と怒られてしまったので黙ってしょんぼりする
師匠申し訳ありません名を挽回できず・・・!!弟子として師を侮辱されたままなど・・・!!
いつかおぼえとけアマイこの野郎
「残念だがイケメン仮面君。今回S級には頼れないんだよ」
聞けば、S級は結婚式には行くらしい
ただし警護として
スポンサーが直々に「S級に警護を頼みたい」と言ってきたらしい。来ないやつがいるのは知った上で
断るのも不自然であったし、怪しまれてしまうので承諾するしかなかった
S級達本人もサポンサーの願いならば逆らうこともなく承諾していた
彼らは裏取引をしていることを知らない
申し訳ないが今回S級方は言い方悪いが囮というわけだ
S級に警護をつけて置けば絶対的な安心があり油断するだろうと
だがサポンサーは知らないだろう。A級トップの力を。本当の力を
「だから君達にしかできない」
頼んだ、という言葉で序章は終わりだ
これから本番の作戦についてだ
まず結婚式へ入るにはやはり招待状が必要らしい
これは大丈夫だ。S級に配布された招待状を元に偽物を作れる
作ったのはメタルナイトや童帝君などの科学者ヒーローではなく、一般の科学者に依頼したそうだ
一般人だが信頼のおける人物らしい
バレないように細密に作られた招待状を渡される
つづいて幹部が懐から小型端末を取り出した
それをテーブルに置くと光が放ち、テーブル上に地図が広がった
もちろんサポンサーの家の地図だ
「おそらくここに証拠があるはずだ。そのデータをこのメモリに写してきてほしい。おそらく警備は――」
絶対失敗がないように、綿密に話し合う
落とし穴がないように、目が通さない場所がないように
作戦会議は三時間にも渡った
そろそろ終わりの気配を見せる
「・・・もし、あちら側がこちらに気づいて攻撃してきたときには」
「当然、正義を実行をするでしょ?」
「・・・」
アマイの言い方は威圧があり、否定を言わせなかった
幹部も「わかっていたか」という顔をしている
すると武器が必要だ。刀は持ち込めないので銃であろう
アマイは肉弾戦なのでそんなものは必要ない
俺も肉弾戦が不得意というわけではないが、アマイやバングさん、タンクトップベジタリアンなどに比べると劣ってしまう
だったら確実に仕留められる武器を持っていたほうがいい
どこに忍ばせておこうか
結婚式、ということはスーツだろう。そうしたらやはりジャケットの中ポケットか
不備がないように、考えに考える
「あぁ、それと・・・軍人貴公子君はこれを着てもらう」
ふぁさ、と幹部が取り出したのは白い羽織物に胸元の下のリボンの淡い水色のドレスだった
自分の時が止まる
幹部の言っていることが理解できず、細胞が反応してくれない
えー・・・と。今なんとおっしゃったのでしょうか
これを?着る??え??なんで??
「イケメン仮面君は俳優もやっているから別の顔を作ることも演技することも訳ないだろう。しかし君はどうだ?何もしていないただの高校生でヒーローだ。そんな子が変装もしないで潜入なんてないだろう」
「いやあの、そうですけど、あの、」
「男でそんな身長なんて滅多にいないし、知っている顔ぶれもいるだろう。その中で君の演技が百パーセントバレない自信はあるかい?」
「・・・・・・」
いやすいません長いので十文字以内でまとめてもらってもいいですか
待って。え、それを、俺が、着るの?
ドレスを指差し自分を指差す
幹部の人はいたって真面目に頷いた
隣でアマイが笑いを堪えてるのなんて気づくはずがない
「いや!でも、」
「ああ言えばこう言う・・・男らしくないぞ軍人貴公子君」
「ぐ・・・」
確かに自分は演技が得意なほうではないだろう
案外すぐに顔に出てしまう
でもだからってまた女装するのか
俺が目指していたヒーローってなんでしたっけ・・・
渡されたドレスを見つめてそう思った
いきなり「本部へ来てくれ」なんて無茶を言うものだ
A市協会本部へ着き、中へ入る
もう何回も来ているはずだが未だにこの黒く広い空間には慣れるものではなかった
「お待ちしておりました軍人貴公子様。こちらへ」
出迎えてくれたのはオペレーターの人だった
特徴的な制服はこの真っ黒い協会の雰囲気を語ってくれる
実際無駄のない動きや丁寧な口調、これらからオペレーターの方達は協会の大部分を支える役割を果たしていることがわかる
流れるように案内された部屋へ入る
オペレーターの人はおじぎをして自分の仕事へ戻った
部屋の中は会議室ではないので大人数が入れるほどではないが、それでも一つの部屋としては広い
その中央にはテーブルが置かれている
椅子は用意されてあったので二つ置いてあった
もうすでに一つは先客がいたようだが
「お前も呼び出されてたのか」
「まぁね。だいぶ遅かったじゃないか、名無しさん」
「うるせぇ。勉強してたんだっつーの」
「・・・努力しても身にならなかったら諦めたほうが人生効率良いよ?」
「ぶった斬るぞ」
珍しくもう一人呼び出されてたのがアマイマスクであった
協会はアマイが俳優や歌手で忙しいことをわかっているので呼び出したりはしなかった
確かに任務で頻繁にアマイマスクを頼りたいことはあったらしいが、アマイマスクが社会的に人気を出すことによってヒーロー協会も名が売れるのでそこは口を出したりはしない
だが、今回アマイと俺を呼び出すだなんてよっぽどのことがあるのだろう
A級一位と二位が同じ任務をするということは重い責任も同時に請け負うこととなる
心して挑まなければ
「すまない待たせてしまって」
入ってきたのは幹部の人だ
彼はテーブルの前に立つ
照明の角度のせいで彼の顔の影が深くなる
「早速で申し訳ないが、今回君たちにお願いしたいのは潜入だ」
任務の内容に自然と背筋が伸びてしまった
――任務の内容はこうだ
とある協会のスポンサーが武器の裏取引をしているとの噂を聞いたらしい
当然正義の象徴であるヒーローはそれを見過ごすわけにはいかない。例え設立や運営の手助けをしてもらっていても
さっそく他のヒーローを使い噂の尻尾を掴もうとしたが中々できなかった。むしろ尻尾を自ら振り我々を翻弄しているようにも見える、と
決定的な証拠が掴めないため何も言えないらしい
莫大な寄付金、人件を協会は受け取ってしまっているためあまり前面的には公開や他に協力を頼むこともできない
だがチャンスがきたようだ
今度サポンサーの息子が誕生日らしい
そのためパーティーを開くそうだ。もちろん会場はスポンサーの自宅
裏取引の証拠を掴む絶対的なチャンス
そこで君たちに潜入を頼みたい
とのことであった
話が終わったところでアマイが組んでいた腕をといた
その腕は肘はテーブルに、手は顔に置いて頬杖をついた
「どうして僕たちなんだ?潜入ならもっと適役がいるだろう。S級の閃光のフラッシュとか」
「てめぇ師匠のこと呼び捨てにしてんじゃねぇよ斬るぞきちんとさんづけしろお前が呼び捨てにしていい人間じゃなねぇんだよ師匠はもうむしろ様づけ、」
「名無しさん黙ってて」
「ン゛ンーー!!」
頬杖をついていない逆の手で口を塞がれてしまった
中々強い力で塞がれてしまっているためほどくのは難しい
幹部の人にも「静かに」と怒られてしまったので黙ってしょんぼりする
師匠申し訳ありません名を挽回できず・・・!!弟子として師を侮辱されたままなど・・・!!
いつかおぼえとけアマイこの野郎
「残念だがイケメン仮面君。今回S級には頼れないんだよ」
聞けば、S級は結婚式には行くらしい
ただし警護として
スポンサーが直々に「S級に警護を頼みたい」と言ってきたらしい。来ないやつがいるのは知った上で
断るのも不自然であったし、怪しまれてしまうので承諾するしかなかった
S級達本人もサポンサーの願いならば逆らうこともなく承諾していた
彼らは裏取引をしていることを知らない
申し訳ないが今回S級方は言い方悪いが囮というわけだ
S級に警護をつけて置けば絶対的な安心があり油断するだろうと
だがサポンサーは知らないだろう。A級トップの力を。本当の力を
「だから君達にしかできない」
頼んだ、という言葉で序章は終わりだ
これから本番の作戦についてだ
まず結婚式へ入るにはやはり招待状が必要らしい
これは大丈夫だ。S級に配布された招待状を元に偽物を作れる
作ったのはメタルナイトや童帝君などの科学者ヒーローではなく、一般の科学者に依頼したそうだ
一般人だが信頼のおける人物らしい
バレないように細密に作られた招待状を渡される
つづいて幹部が懐から小型端末を取り出した
それをテーブルに置くと光が放ち、テーブル上に地図が広がった
もちろんサポンサーの家の地図だ
「おそらくここに証拠があるはずだ。そのデータをこのメモリに写してきてほしい。おそらく警備は――」
絶対失敗がないように、綿密に話し合う
落とし穴がないように、目が通さない場所がないように
作戦会議は三時間にも渡った
そろそろ終わりの気配を見せる
「・・・もし、あちら側がこちらに気づいて攻撃してきたときには」
「当然、正義を実行をするでしょ?」
「・・・」
アマイの言い方は威圧があり、否定を言わせなかった
幹部も「わかっていたか」という顔をしている
すると武器が必要だ。刀は持ち込めないので銃であろう
アマイは肉弾戦なのでそんなものは必要ない
俺も肉弾戦が不得意というわけではないが、アマイやバングさん、タンクトップベジタリアンなどに比べると劣ってしまう
だったら確実に仕留められる武器を持っていたほうがいい
どこに忍ばせておこうか
結婚式、ということはスーツだろう。そうしたらやはりジャケットの中ポケットか
不備がないように、考えに考える
「あぁ、それと・・・軍人貴公子君はこれを着てもらう」
ふぁさ、と幹部が取り出したのは白い羽織物に胸元の下のリボンの淡い水色のドレスだった
自分の時が止まる
幹部の言っていることが理解できず、細胞が反応してくれない
えー・・・と。今なんとおっしゃったのでしょうか
これを?着る??え??なんで??
「イケメン仮面君は俳優もやっているから別の顔を作ることも演技することも訳ないだろう。しかし君はどうだ?何もしていないただの高校生でヒーローだ。そんな子が変装もしないで潜入なんてないだろう」
「いやあの、そうですけど、あの、」
「男でそんな身長なんて滅多にいないし、知っている顔ぶれもいるだろう。その中で君の演技が百パーセントバレない自信はあるかい?」
「・・・・・・」
いやすいません長いので十文字以内でまとめてもらってもいいですか
待って。え、それを、俺が、着るの?
ドレスを指差し自分を指差す
幹部の人はいたって真面目に頷いた
隣でアマイが笑いを堪えてるのなんて気づくはずがない
「いや!でも、」
「ああ言えばこう言う・・・男らしくないぞ軍人貴公子君」
「ぐ・・・」
確かに自分は演技が得意なほうではないだろう
案外すぐに顔に出てしまう
でもだからってまた女装するのか
俺が目指していたヒーローってなんでしたっけ・・・
渡されたドレスを見つめてそう思った
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