91発目
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『なんじゃこりゃ』
『ひでぇ有様だな。嵐でも通過したのか?』
ギョロギョロに指定された場所に来ると、そこは酷い有様だった。
とても人間がやったとは思えないほど、怪人たちは肉塊となっている。
侵入者は2人。
1人は1時間前に来ていて、シャワーヘッド、超マウス、イッカクが対処している。
もう1人は今こうしてモモンガのような怪人、モンガーとテレビの頭の怪人、ティーリビーが向かったわけだ。
2体はもう少し奥へ進んでみると、そこには人間が1人立っていた。
女の子だ。
どうしてここに? まさか侵入者?
女の子の足元には怪人の死体が転がっていた。
──コイツが?
『お嬢さん、君がやったのかい?』
女の子は振り返る。
その瞬間、全身が震えた。無意識に、反射的に。
「ごめんねぇ、今日の私めっちゃ機嫌が悪くて」
せっかく名前が出た怪人は、すぐに死んでしまった。
「んー、ガロウ君どこだろう?」
鍋が無いと知った名無しさんはすぐに怪人協会へと向かった。
泣きながら、鼻水を垂らしながら、怪人協会へと踏み入れる。
名無しさんの前に立った怪人達は運が悪い。
絶望の底に沈みながら死んだのだから。
ズン…ズズズズ
「!」
大きな音がする。
その方向に行けば、大きな犬がいた。
黒い毛並みに6つの目。
「え、かっわい!」
撫でたい! そう思い名無しさんは育ち過ぎたポチに近づく。
そして気づいた。ポチが誰かを攻撃していることに。
ポチの視線を追いかければ、ガロウがいた。
「あ」
ポチがガロウの脚を掴み、地面や壁にぶつけていた。
まるでおもちゃを振り回して遊んでいるように。
気が済んで地面に置いたかと思えば、口から光線を出そうとしている。
「ひぃ~~~~~」
名無しさんはポチのすぐ右足元まで来ると、眩しさで目を細めてしまう。
目を細めたまま、ポチの右足を引っ張った。
おかげで、光線はガロウに直撃はしないで済んだ。端っこの方に当たったくらいだろう。
それでも、光線の威力はすさまじくガロウを下層の階まで運んだ。
『グルルルル』
ポチが名無しさんを見下ろす。
周囲の空気が歪むほどの殺気を受けても、名無しさんは爛々とした目でポチを見ている。
犬は首元を撫でられるのが好きだったはず!
名無しさんは膝を曲げ、ポチの首元までジャンプをしようとした。
しかし……
『キャンッ!!』
「あ、やべ。ごめん!!」
勢いあまって、頭突きをしてしまった。
ポチはあまりの衝撃に、気を失ってしまう。
名無しさんは倒れたポチを見て、両手で口を覆う。
しまった、という口を隠すように。
飼い主に怒られてしまう。
色々考えた結果、さっさとこの場を去って、ポチが勝手に寝たことにしよう。
そうしよう。
名無しさんは下に行ってしまったガロウを追いかける。
すると、ガロウはオロチと戦っていた。
「おぉ! すご!!」
ガロウの動きはまるで野生の狼のような、それでいて気迫のある武士のような動きだった。
あんなに血だらけで、ボロボロなのに戦っている。
しかしガロウは避けるので精一杯のように見える。
手助けすべきか。悩んだ結果、見守ることにした。
先輩として、何でもかんでも手助けするのは違うと思ったからだ。
ここは後輩の成長を見守ることにしよう。
せめて、戦いやすいようにしてあげる。
名無しさんは、マンションの廊下にいる怪人を倒すことに決めた。
倒す、という割には手も足も使わない。
ただ、名無しさんがそこを走るだけで怪人は勝手に死んでいくのだ。
「おいおい……犬のバケモンの次はミミズの親玉かよ……」
ガロウがそう言うと、オロチは口に熱を集めた。
危険を感じ、避けても周りは火の海となった。
熱線は対象は何でもいいようで、あちこちを溶かした。
それでもガロウは立ち上がる。
恐怖を感じず、ただ目の前の獲物を狩るだけ。
だが、
『望み通り恐怖を与えてやる』
狩られたのはガロウのほうだった。
壁に埋まり意識が吹っ飛ぶ。
ガロウは指一本動かせなかった。
『時間をかけて徹底的に洗脳してやる』
そう言って、ギョロギョロはガロウに近づき──けなかった。
『なっ!?』
名無しさんはガロウの前に立つ。
ギョロギョロが名無しさんを見て、驚くと同時に笑った。
もう1人の侵入者が名無しさんだったとは。
ここは怪人協会。オロチと他の幹部がいれば名無しさんも仲間に入れることができるだろう。
いや、もう引き入れよう。
笑顔で名無しさんに話しかける。
『やぁ名無しさん。怪人協会に入ってくれる気になったのかい?』
「……」
『君の強さは分かっている。だから、今まで殺した怪人達は多めに見よう』
名無しさんはオロチを見た。
驚いた、この間より恰好が違う。その見た目は、まるで──
ゴクリ、と唾を飲み込む。
可食部が多いのでは!?
『さぁ、仲間になるといい。君なら、あっという間に幹部になれるだろう』
ハッと名無しさんは現実に返った。
いやいや、いくらお腹が空いているからといって食べ物の形をしていないものを、美味しそうと思うなんて。
肉のショックがまだ響いているのか。
首を振って、ガロウを壁から取り出す。
ガロウを俵のように担ぎ、名無しさんはギョロギョロに向き直った。
「だぁーから! 私はタダ働きするつもりはないの!」
ギョロギョロが顔をしかめる。
『……まぁいい。だが、どうしてガロウ君を助けるのかな?』
「彼は後輩なんで。それじゃ!」
名無しさんはウィンクをして、オロチ達に背を向けた。
ギョロギョロはため息を吐き、オロチを見た。
『彼女は殺しちゃってください』
オロチは小さな名無しさんの背中に向かってツノを飛ばした。
しかし、そのツノが抉ったのは地面である。
見れば名無しさんは10メートルも横を飛んでいた。
頭にある全てのツノを、名無しさんを殺すために動かした。
だが、どれも肉を突き破った感触は無い。
それどころか、
『!!』
『オロチ様!?』
オロチのツノが、3本床に落ちた。
名無しさんの片足にオロチの血が少しだけ付着している。
『(コイツ、まさか)』
片足でオロチ様のツノを折った?
有り得ない、あんな、いとも簡単に──。
「ま、オロチとやらを倒すのは後輩君だから」
名無しさんはオロチの攻撃を除けながら、どこかへ走っていった。
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