90発目
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趣味で怪人とはふざけているのか。
しかし、ガロウは思い出した。
度々協会で話題になる"変人怪人"のことを。
「オメェがそうだったのか」
「でへへ、私も有名になったのか」
照れくさそうにしている名無しさんの姿を見て、ガロウは驚く。
こんな奴があの怪人?
いや、しかし、先ほどの強さは本物だ。
……こんなふざけた奴が?
「まぁということで、私は先輩だから何でも聞いてね!」
エッヘン! と、無い胸を張る名無しさん。
ガロウは驚いた目で見ているだけだ。
戦ってみたい。ガロウは自然と腰を落とし、戦闘態勢となる。
「ガロウ君?」
「!」
いや、無理だ。無謀だ。今自分はボロボロであるし、まともに戦える状態ではない。
幸い名無しさんはガロウに敵意がない。戦う理由はないのだ。
姿勢を戻す。
今日は戦わず、また今度勝負を挑むことにしよう。
今はやることが……。
「あ!!」
急なガロウの大声に、名無しさんはビクリと肩を跳ね上げてしまった。
ガロウは思い出したのだ。今、自分が何をしなければならないことを。
そうだ、自分は怪人協会に行かなければ。
身体が痛い。充分に戦えない。しかし、行かなければ。怪人協会を滅ぼさなければ。
名無しさんを見る。
名無しさんの強さがどれほどか分からないが、少しは戦えるようだ。
なら、戦力は多い方がいい。
普段はそんなことを考えるガロウではないが、今は急を要する。
「おい」
「はい」
「怪人協会って知ってるか」
「勧誘されて断りました」
「……そうか」
ガロウは深呼吸をする。
人に頼み事をするのは初めてであるし、プライドが揺れてしまうから。
名無しさんを真っ直ぐ見て、口を開いた。
「一緒に行かねーか。ぶっ壊しに」
「え! 行く!」
ズルリ、とガロウは滑りそうになってしまった。
まさかそんな簡単に了承を得られると思わなかったから。
名無しさんとしては、元々怪人協会は滅ぼすつもりであったし断る理由もない。
ガロウも一緒なら、先輩として色々教えてあげられるし!
そんな気持ちもあって、名無しさんは快くOKを出したのだ。
「じゃ、行くか」
ジャリ、と砂を踏み潰す。
「あ!」
「うぉっ!?」
今度は名無しさんが大声を上げて、ガロウが驚く番だった。
名無しさんは気まずそうな顔をしている。
思い出したのだ。自分はこれからサイタマの家に行かなければならない。
気軽にOKを出したものの、先に鍋を食べたい。
悩んだ末、出した結論がこうであった。
「……ガロウ君、先に行ってて」
「は?」
「私は先にやらなければならないことがある」
「……」
名無しさんの真面目な顔つきに、ガロウは頷いた。
その顔は本当に大事な用なことが伺える。
お互いに背を向け、ガロウは走った。
目的地の場所は分かっている。そこを真っ直ぐ目指すだけ。
名無しさんは公園に散らばった豆腐を眺める。
白かった半固体は砂まみれでとても食べれそうにない。
「うぅ……手ぶらでもいいかな……」
名無しさんは泣く泣く手ぶらでサイタマ宅へ向かった。
鍋を急いで食べて、ガロウ君を追いかけよう。
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